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占有改定と即時取得事件

こんにちは。

 今日は、占有改定と即時取得が問題となった最判昭和35年2月11日を紹介したいと思います。


1 どんな事件だったのか

 友定はその所有する水車発電機を、山谷俊一に41万円で売却しました。しかし、山谷は10万円を支払ったものの、残りの金額を払わなかったため、その契約は無効となりました。ところが、山谷はこの発電機を三村市次郎に27万円で売却し、所有権は三村に移るが引き続き山谷が使い続けるという占有改定によって引き渡していました。一方で、友定らはその発電機を株式会社光洋に31万円で売却し、光洋が発電機を大阪市内に運搬しました。そのため三村は、光洋に対して、発電機の所有権の確認とその引き渡しを求めて提訴しました。

【民法183条】(占有改定)
代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。

2 最高裁判所の判決

  無権利者から動産の譲渡を受けた場合において、譲受人が民法192条によりその所有権を取得しうるためには、一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき占有を取得することを要し、かかる状態に一般外観上変更を来たさないいわゆる占有改定の方法による取得をもっては足らないものといわなければならない。
 されば原判決が、三村市次郎は本件物件を一審原告山谷俊一より買い受けたが、山谷は当時右物件については全くの無権利者であったこと、当時山谷より物件の引渡を受けはしたが、その引渡はいわゆる占有改定の方法によったものであることを証拠によって確定し、しかも一方において右物件は、判示のような経緯から、友定より株式会社光洋に売却され、代金の完済とともにその所有権を譲渡し、かつその引渡が了されたというのであるから、原判決がこれらの事実関係から三村の所論即時取得による所有権の取得を否定し、これを前提とする本訴請求を排斥したのは正当というべきである。論旨は結局民法192条の解釈適用につき右と反対の立場に立ち、独自の見解を主張し、また原審の適法にした事実認定を非難するに帰するから採るを得ない。
 よって、三村市次郎の上告を棄却する。

3 占有改定と即時取得

 今回のケースで裁判所は、 占有取得の方法が外観上の占有状態に変更を来たさない占有改定にとどまるときは、民法192条の適用はないとしました。
 民法192条は、「取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。」と規定しており、光洋による発電機の占有取得について、善意無過失平穏公然になされたものかどうかについて議論があるところでしょうね。
 では、今日はこの辺で、また。


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