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住友不動産vsセンチュリータワー事件

こんにちは。

 退職金を使って、「アパート経営をしながら安定した老後生活を送るぞ」と考えている人が多いのも事実ですが、その際に家賃収入を保証してくれると信じ
て、サブリース契約を締結したことでトラブルに発展することがあります。

 いったいどのようなことが問題となるのかを考える上で、「住友不動産vsセンチュリータワー事件」(最判平成15年10月21日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 住友不動産株式会社は、センチュリー タワー株式会社が建築したビルについて、年間賃料23億1072万円で全室を一括で借り上げ、そのビルに入居する人を探して賃料を得るというビジネスをしていました。このようなサブリース契約の中には、3年ごとに自動で賃料を10%増額する特約や中途解約禁止などの特約が存在していました。ところが、転貸料収入が思うほど得られなかったことから、住友不動産は賃料の減額をしてほしいとセンチュリータワーに申し入れたところ、センチュリータワーは賃料自動増額特約があることを理由に、未払となっている約52億6899万円の支払を求めて提訴しました。

2 センチュリータワーの主張

 契約で、賃料が自動的に増額すると定められているので、その増額した賃料を払って欲しい。サブリース契約というのは、借地借家法32条が予定する建物賃貸借の実態を備えていないので、住友不動産による賃料減額請求は認められないはずだ。仮に賃料減額請求が認められたとしても、住友不動産は契約時に賃料が減額される可能性があることを説明していなかったので、その分の損害賠償を求めることができるはずだ。

3 住友不動産の主張

 私どもは、借地借家法32条1項の規定に基づいて、賃料の減額を求めます。確かに賃料自動増額特約が存在しますが、借地借家法は強行法規なので、特約よりも優先することになるはずです。だから、賃料減額請求権の行使が妨げられるものではありません。

4 最高裁判所の判決

 今回問題となった契約は、センチュリータワーが住友不動産に対して建物を使用収益させ、住友不動産がセンチュリータワーに対してその対価として賃料を支払うというものであり、建物の賃貸借契約であることが明らかであるから、問題となった契約には、借地借家法が適用され、同法32条の規定も適用される。借地借家法32条1項の規定は、強行法規であって、賃料自動増額特約によってもその適用を排除することができないものであるから、賃料自動増額特約が存するとしても、賃料増減額請求権の行使が妨げられるものではない。
 よって、住友不動産は賃料減額を請求できる。

5 サブリース契約と賃料増減請求

 今回のケースで裁判所は、サブリース契約において賃料自動増額特約があったとしても、その法的性質が賃貸借なので、借地借家法32条1項が適用されると判断しました。
 サブリース契約では、不動産会社がビルの所有者からビルを一括して借り上げ、それを転貸するという形が取られ、ビルの所有者はビルの管理をすることなく安定的に家賃収入を得ることができるというメリットがありますが、その反面で、不動産価格の下落に伴い、賃料が減額されるリスクもありますので、この点をしっかりと認識しておく必要があるでしょうね。
 では、今日はこの辺で、また。
 


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