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不法占拠者と登記事件

こんにちは。

 土地や建物を買ったときに、法務局で登録免許税などを払って登記をしなければ第三者に権利を主張することができなくなることをご存じでしょうか。せっかく、マイホームを買ったのに自分のものだと言えなくなるのは困りますよね。しかし、登記がなくても自分の土地・建物だと言える場合があります。

 今日はこのことを考える上で「不法占拠者と登記事件」(最判昭和25年12月19日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 五十川団一は建物を購入しましたが、まだ建物の所有権移転登記をしていませんでした。この建物にはすでに山本滋が賃貸して住んでいましたが、五十川との話し合いで賃貸借を終了することなりました。ところがその後も山本が建物から退去しなかったので、五十川は建物の明渡しを求めて裁判所に提訴しました。

2 五十川の主張

 あなたは、賃貸借契約が終了したにもかかわらず、この建物を不法に占拠している。私はこの建物の所有者であり、この所有権に基づいて妨害排除を求めることができるのだ。だから即刻、荷物をまとめて家から出ていってほしい。

3 山本の主張

 たしかに、あなたはこの建物の所有者かもしれない。しかし、民法177条によれば、その所有権を第三者に対抗するためには、登記が必要だと書いてある。しかし、あなたはこの建物について登記を取得していないじゃないか。だから、妨害排除請求は認められないはずだ。

4 最高裁判所の判決

 山本は結局何等の権原なくして五十川所有の本件家屋を占有する不法占有者だということになる。不法占有者は民法177条にいう「第三者」に該当せず、これに対しては登記がなくても所有権の取得を対抗し得るものであること大審院の不変の判例で、当裁判所も肯定する処である。
 されば、原審が登記の点について判断する処なくして五十川の請求を是認したのは結局正当で、論旨は上告理由にならない。
 よって、山本の上告を棄却する。

5 不法占拠者と不動産登記

 今回のケースで裁判所は、不動産の不法占有者は民法177条にいう「第三者」にはあたらず、登記がなくても対抗できるとしました。
 不法占拠者に対しては登記がなくても、所有者は妨害排除請求をできますが、自身の建物の所有権を守るためにも登記を取得しておくことが重要でしょうね。
 では、今日はこの辺で、また。


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