拓殖大学空手愛好会事件
こんにちは。
力道山が使っていた空手チョップなのですが、空手の試合ではあんまり使われていないということは、モンゴリアンチョップもモンゴルでは使われていないと気づいた松下です。
さて今日は、空手の強豪校で起きた「拓殖大学空手愛好会事件」(東京地判昭和48年8月29日判例タイムズ300号264頁)を紹介したいと思います。
1 どんな事件だったのか
拓殖大学経済学部1年生の安生良作さんは、空手愛好会に入会していたのですが、上級生からひどい暴力を受けていたので、退会を決意して母校だった鹿沼高校の先生に相談しました。高校の先生から大学学生課長に、電話で空手愛好会の練習が暴力的で、退会によってさらに暴行を受ける恐れがあると伝えたところ、課長は「決してそんなことはない。全責任をもって解決するから」と答えていましたが、実際は何らの措置も取っていませんでした。すると、安生さんが退会届けを持参したときに、会員15名から体育館で集団暴行を受けて死亡するという事件が起きてしまいました。そこで、遺族は大学側に対して使用者責任を理由に約1082万円の損害賠償を求めました。
2 遺族の主張
良作は、在学のまま退会しようとすれば生命の危険さえ予想されると不安を訴え、危険回避のために退学まで決意していたのに、「安心して学校に来い」と言うなど、誤った助言をしただけでなく、その後に何の対処もすることなく死亡事故を起こしています。これは学生課長に過失があり、不法行為責任があり、学校側も使用者責任を負うというべきである。
3 拓殖大学側の主張
部活とサークルに関しては大学で管理しているが、その他の同好会と愛好会に関しては予算の配分を行っておらず、ときどき校庭の一部や大学本館の屋上で空手の練習をしているのを職員が見かけることがあったにすぎない。一般に教職員が生徒に接する場合、その暴力的傾向を発見することははなはだ困難である。私は、活動実体の不明な空手愛好会の責任者と連絡をつけようとしたが、結局連絡がつかなかったのだ。
4 東京地方裁判所の判決
課長は、空手愛好会の会員が暴力団風であること、退会しようとすれば集団で暴行される危険性があることを聴取し、その実態について相当程度の認識を持っていた。そうすると、課長は空手愛好会の責任者と連絡をとり、すみやかに、かつ、円満に良作の退会を認めるように指示、指導をなすべき作為義務があったが、これを怠っていた。よって、大学側は遺族に対して約780万円を支払え。
5 空手の事故について顧問が責任を負うことも
今回のケースでは、部活やサークルを管理する大学側の責任が問題となりましたが、部活の顧問も責任を問われることがあります。例えば、学生がいつもふざけていて、空手の練習中に他の学生にケガをさせてしまった場合、顧問の注意の仕方が適切ではなければ過失として損害賠償責任を負うことになるのです。
日頃から、事故発生を予防・回避するためにしっかりと措置を取っておくことが重要でしょうね。
では、今日はこの辺で、また。
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