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アメフトシンボルマーク事件

こんにちは。

 アメリカンフットボールは、10ヤードと言われたときに、距離感覚に悩みますが、4th&ギャンブルという名称はしっかりと理解できましたね。

 さて今日は、アメリカンフットボールチームのマークを無断使用した商品が問題となった「アメフトシンボルマーク事件」(最判昭和59年5月29日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。


1 どんな事件だったのか

 NFLPは、アメリカのプロフットボールチームに所属するチームの名称とシンボルマークの商業的利用を管理していました。ソニーはNFLPと契約し、アメフトチームのシンボルマークを日本で唯一使用できる権限を取得しました。丸竹商事は、アメフトの7チームのマークを千鳥状に配列したビニールで覆われた丸竹ロッカーを販売していました。ソニーらがその販売中止の警告書を送ると、丸竹商事がすぐさま意匠出願を行ない、意匠登録を受けてしまいました。そこで、ソニーらは、その販売の差止めと損害賠償を求めて提訴しました。

2 ソニーらの主張

 我が社が日本で唯一、アメフトのシンボルを商品に付けて商品化する権利を有している。丸竹商事は、アメフトのヘルメットに描かれたシンボルマークと類似したものをロッカーに描いて販売しているので、不正競争防止法に違反するのではないか。また丸竹商事が我々の警告を無視して意匠登録を受けていたので、それは権利の濫用にあたるはずだ。

3 丸竹商事の主張

 アメリカのフットボールチームも日本の会社も、1チームで1種類のシンボルマークを使用しているにすぎず、7種類のシンボルマークを同時並列状に使用しているわけではないので、類似しているとは言えないのではないか。また、たとえ不正競争品であると警告を受けたとしても、一個人の警告、しかも未だ裁判所の判決によって確定されたものではないのだから、これによって意匠登録を受ける権利が制限されるのはおかしい。

4 最高裁判所の判決

 30種ある各マー クは、それぞれ図柄及びチームの名称を異にするものであるが、いずれもアメリカンフツトボールのヘルメツトをかたどつた共通の図形からなるものであるため、取引者又は需要者が、丸竹ロツカーの表示を全体的にみて、その表示はアメフトチームの個々のマークと外観及び観念において同一又は類似のものを多数個使用するものと感得するであろうことが明らかであるから、丸竹ロツカーの表示の使用は、アメフトチームの表示と同一又は類似のものを使用するものといわなければならない。
 ソニーらは、昭和50年11月末頃、丸竹商事に対し、丸竹ロッカーの販売を取り止めるよう要求した。丸竹商事は、その警告及び要求を無視するとともに、当然予想されるソニーらの差止請求等を免れるため、その対抗措置として、昭和51年4月1日に丸竹ロッカーに係る意匠について意匠登録出願をし、昭和53年9月に意匠登録を受けた、というのである。その事実関係によれば、丸竹商事の丸竹ロッカーの販売行為は、形式的には登録意匠の実施にあたるとしても、権利の濫用にあたる。
 ソニーらは、周知表示であるマークの表示の商品化事業に携わる周知表示の使用許諾者及び使用権者であるところ、丸竹商事の不正競争行為により、再使用権者に対する管理統制、マークの表示による商品の出所識別機能、品質保証機能及び顧客吸引力を害されるおそれがある者であるというのであるから、不正競争防止法に基づいて差止請求及び損害賠償請求をすることのできる地位にあるものといわなければならない。
 よって、丸竹商事の上告を棄却する。

5 営業上の利益を害する

 今回のケースで裁判所は、ソニーが権利を有するアメフトチームのシンボルマークと類似するロッカーを販売する行為が、商品の出所識別機能、品質保証機能及び顧客吸引力を害する恐れがあるとして、その販売の差止めと損害賠償を認めました。
 他社が権利を有するシンボルマークを自社の商品に使用する際には、その権利関係を十分に調査しておくことは重要でしょうね。
 では、今日はこの辺で、また。


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