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あたしは築30年ワンルーム六畳のアパートに住んでいる

社会人になって四年目。毎年引っ越しをしている。引っ越しおばさんとは私のことである。

社会人一年目、実家を出ていくことを決意。
早朝から働く仕事に就いたからだ。夜型遅起きだった私は、朝型生活に完全シフトした。

めちゃくちゃ辛い思いをした。
私は自己分析あまあま女だったため、早朝5時入り、中抜け休憩、21時退社の仕事は全く肌に合わなかった。一年半ほど勤めて退社した。

社会人二年目、暑い夏の日に引っ越した。
汗だくの引っ越しの兄ちゃんに申し訳なくなり、飲み物を差し出した。母はしっかりチップを渡していた(ありがとう)。

都内に住むという夢がかなった。駅近の鉄筋コンク、オートロック付き。まあまあ立派なお家だった。ロフトもついていて、使わない服を置く物置にしていた。浴室乾燥もついていた。電気代がめちゃめちゃ高かった。

しかし、自己分析あまあま女の私。
勤務体系が異なる、同じ職種についたのだが、そもそも職種自体が肌に合っていなかった。めちゃくちゃに病む。その家に住んでから、不吉なことが畳みかけるように起こり、お祓いに行き、札をもらい、引っ越しをした。

社会人三年目、無職になる。
実家に戻ろうとしたが、大人5人で住むには狭すぎるおうちだったため、戻るに戻れず。
仕事や環境の変化、不吉な現況に精神が疲弊している私を心配し、親はお金を出すので、近くにアパートを借りようと提案してくれた。

家の近くに荷物を置くだけのアパートを借りた。それが今の家だ。
さすがに自立した大人なのでお金はちゃんと自分で支払うと話した。無職でも払える額の家賃の、最低限の家。

物を置くだけと思っていたおうち。
ワンルーム6畳。手の届く範囲にトイレ、お風呂、洗濯機、キッチン。すべてある。

神社が近くにあって、鳥のさえずりがよく聞こえた。二面採光の窓を開けると、私は外で昼寝をしているような感覚になった。

なんだか心地よかった。
なにもない私にとって、なんでも最低限ある家は心地よい。

物を置くだけと思っていたが、住むことにした。
そこに住むようになって、「ない」ことではなくて「ある」ことに物事をフォーカスするようになっていた。

無職で前職以外のスキルもない。大切な人も失う。夢もない。そんなことばかり考えて気が滅入っていたけど、私には次の仕事に関係しなくても前職の経験があるし、失ってしまっては悲しくなる大切な人がいる。

なにもないことを武器に、就活を始めた。
知らないことを知ろうと話を聞きに行き、自分に活かせるスキルは何かと模索し、面接を受けるようになった。
「私にはなんもないです」と大泣きし自分の気持ちを吐露できたところに、お情けで入社した。

今は少しだけやる気が出てきて、こうしてnoteを書くようになったし、ボクシングも始めたし、仕事も順調だ。大切な人たちを大切にできている。

小さくて狭い私だけのワンルーム。
引越ししまくり、処分した中でとびきりのお気に入りだけが残っている。少しばかりのエッセイや参考書。地元で購入したウクレレ。友人と会う前に寄ったお店で見つけたマルチクロス。おきにいりのステッカーだらけの冷蔵庫。

たくさん、今の部屋には好きなものがあった。
ない、なんてことないな。

今はこの狭くて古いアパートを気に入っている。何もない私をなんとかしてくれた、なんでもある小さいアパート。

契約終了までよろしくたのむよ。

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