生きていて。

私は佐々木良子。13歳中学1年。毎日、死にたい。

ただいざ死のうと思えるほどのエネルギーが無い。

学校には居場所がない。友達ができない。それは私が暗いからだとよくわかってる。もう仕方がない。もう諦めているから。

家でも両親は不仲。これももうどうしようもない。

今日は体調が特に悪い。

そういえば、この前近所のおばさんが、

「困った時は話してね」

って言ってくれたな。話に行ってみよう。


ある団地のドアの前に立つ。ノックするか、もう10分迷ってる。

もう暗くなる。

思い切って叩いてみた。

「はい。」おばさんが出てきた。

「あ、こんにちは。」私はすごく緊張した。

「あ、こんにちは。どうしたの。」そっけない。

「この前、話してねって言ってくれたから。」勇気を出して言ってみた。

「あ、そうね。で?」冷たい。冷たい。冷たい。。。。

「具合が悪くて、どうしたらいいか分からなくて。でも、もういいです。お忙しいところ、ごめんなさい。さようなら。」

私は逃げるようにドアを飛び出した。おばさんの言葉を頼ったことを深く後悔した。


1週間後、お母さんに叱られた。近所の集会で沢山恥をかかされたらしい。

あのおばさんは近所の人達に、私が夕方の忙しい時間に急に訪問したことを言いふらしているようだった。体調悪いなんて親に言えばいいじゃない、とも言っていたようだった。


一人部屋で思う。なぜこんな事になったのかと。

まあ、そうでしょう。そうなのでしょう。理解しようとしてみる。

でもやはり出来ない。

親に相談、学校に相談、と言われても。

私は今、自然なことを自然に出来ない異常事態に陥っているんだ。

駄目だ。もう駄目だ。今日こそ死のう。部活の帰りに川へ行こう。

そう思った。



死ぬ前に、公園に行こう。少し楽しかった事も思い出そう。お母さんに遊んでもらった公園。


暗くなった公園に着くと、電灯が点っている。

砂場にも電灯が点っている。

その電灯の下で3歳くらいの男の子が一人で遊んでいる。裸足で。しかも下はおむつしか履いていない。私は近づいて話しかけた。

「お母さんは?お家はどこ?」

「あっちー。」

指の指す方の部屋の電気は付いていない。真っ暗。

私はどうしても涙が止まらなくなった。

「お姉ちゃん泣いてる。」

そう。今私は泣いてる。この子は自分の大変さにも気付けていない。そして、私はこの子を救えない。何でわたしはまだ13歳なんだ。もし大人だったら良かったのに。


しばらくこの子お母さんを待ってみた。21時くらいまで待った。私は家に帰ったら怒られる。こんな時間になって。でもまあ、しょうがない。

それにしても、来ない。この子のお母さん、帰ってこない。

持っていたお金で買ったお菓子も、食べ切ってしまった。


一緒に行こうか?と言おうかずっと迷ってだけど、無理そうだ。

私は一人で帰る事にした。

男の子がニコニコしながら手を振ってる。

罪悪感、絶望感、無力感が束になって襲ってくる。

私はとにかく、死んでいる場合ではない、と思った。


それから夕方学校や部活から帰る時はこの公園を通るようにした。

でも、それからあの子と一度も会えていない。

あの時、もっと勇気を出して誰かのところにあの子を連れて連れて行けば良かった。助けてあげてって、もっと誰かに言えば良かった。

後悔が拭えない。


あれからもう25年以上経っている。

でもまだ全然忘れられない。

願うことはただこれだけ。

生きていて。


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「生きていて。」に関して私の思う事↓







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