絵本日記DAY17 うみのおまつりどどんとせ
おはようございます。
まいにちまいにちこんなに暑くて、きのうはほんとうに立秋だったのかしら、とカレンダーを思わず二度見してしまった朝です。
さて、今日は、「この暑さと夏休み中盤の気怠さをスカッと吹き飛ばしてもらおうと、特別ゲストをお呼びしています!」と大声で言いたくなるような絵本をご紹介します。
その方とは、ばばばあちゃん、です。
今回のばばばあちゃんのミッションは、小鳥が運んできたてがみに書いてあった、
「かいがんに おおくじらがねていて こまっています。くじらを おこす いい ほうほうを おしえてください」。
この世界では、小鳥も、いったいだれに困りごとを話せばいいか、ちゃーんとわかっているんですね。
「くじらをおこす いいちえだね。 それじゃあ みんなで、おもいっきり やかましい げんきを もっていこうか」
やかましい、げんき。
潔いです。
ばあちゃんの脳内には、たとえば子どもに、やかましいなんて言ったら悪いな、という発想はないだろうと思います。
この鬱蒼たる俗世では、やかましい元気こそがだれかを救うことを、ちゃあんと知っているのです。
よしきた、待ってましたと言わんばかりに、ものの数秒で解決法を編み出すばばばあちゃん。
こういうところがカッコイイ、のです。
「ばあちゃん、たいへんだ、どうしよう」をあっと驚くやりかたで、しかもあり得ないほど楽しく解決してしまう、というのがこのシリーズの常套手段であり、大好きなところです。
どんなに庭が大雨であふれかえろうと、すいかのタネが怒り狂って部屋のなかまでつるを伸ばそうと、ベッドでぼんがぼんがと飛び跳ねて遊んで壊してしまっても、
ばあちゃんはへいっちゃらなのです。
さすが、人生の大先輩は、ちがうのです。
毎回毎回ばあちゃんが誰より楽しんでいるので、むしろみんなの困りごとを待っているんじゃないか、と思ってしまうほどで、きっと作者のさとうわきこさんも、ワクワクの天才なんだろうな、と想像せずにはいられません。
ちなみに、さとうわきこさんのお写真は、もう生きるばばばあちゃんそのもので、長野にある小さな絵本美術館にはいつかぜったいに行く。
ばばばあちゃん、じゃなくって、さとうわきこさんにぜったいにお会いする。そう心に決めています。
さて、ばあちゃんのミッションのつづき。
「とっときの げんきのもとも つみこんで、さあ、おまつりの かたまりが しゅっぱつだ」
みんなでお祭り騒ぎをして、くじらを起こそうってわけです。
こんなにねじりはちまきが似合うばあちゃん、私はばばばあちゃん以外に、一人もみたことがありません。
ばばばあちゃんて、チャキチャキの江戸っ子なのかしら?
「はやく おきなよ まつりだよ」
こんな、気持ちよく寝ているところにピーヒャラドンドンされたらたまったもんじゃあありませんが、ばあちゃんは真剣な顔つきで、みごとなバチ捌きを船上で披露しています。この絵面、最高です。
北風と太陽的な、やや力ずくではありますが、これが、ばばばあちゃんのでっかいでっかい愛なのです。
それでもサッパリ起きないくじらに、
「いよいよ これの でばんだね」
とばあちゃんの右手には”とっときの もの”が。
ちょっと、ばあちゃん、あたしにはダイナマイトに見えるよその打ち上げ花火が・・・。
そして、ようやく目を覚ましたくじら。
朝日の中すいすい泳ぐ彼らに、ばあちゃんはこう話しかけるのです。
「くじらさん、これから わたしと泳ごうね」
なぜかって?
まわりはみーんな一匹のこらず、お祭り疲れでぐうぐうすやすや、ねむっているからです。
ばあちゃんの体力とあそびへの貪欲さには、恐れ入りました。
ばばばあちゃんあっぱれ、です。
ばあちゃん、くじらと思う存分泳いだら、わたしのところまでもちょいと寄ってくださいな。
暑くて暑くて、もうへたってしまっています。
たぶん、「あんた若いのにだらしがないねぇ!シャキッとしなさいシャキッと!」と言いながらも、
トンデモなくたのしい夏休み、いっしょにすごしてくれそうだなぁ。
追伸:作者のさとうわきこさん、ご出身は東京とのこと。ふーむ。やっぱりな。
うみのおまつりどどんとせ ばばばあちゃんのおはなし さとうわきこ さく•え/こどものとも 605号/福音館書店