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5期マネの俺はわからない。



彩 : あっ!〇〇さん!



〇〇 : お!小川 レッスン終わり?



彩 : はい、も〜覚えなきゃいけないこといっぱいで 今日もヘトヘトです...!...あっ!

彩 : あの...このあと ちょっとだけ〇〇さんに相談したいことがあるんですけど いいですか?



〇〇 : え...あ、あぁ......うん!いいよ?



今も尚ときめく日本のアイドル。乃木坂46。


そのメンバーになるのと同じぐらい
とんでもないくらい高い倍率を見事通過し

そして、
その5期生のマネージャーの1人になった俺は


仕事の合間をぬって、3階のレッスン室の前で
菅原が出てくるのを待っていたら

メンバーの一人である小川が話しかけられた。



〇〇 : じゃあ 早く着替えてきな?汗冷えて体も冷えたら 体調崩しやすくなるしさ?



彩 : はい!

彩 : じゃあ 着替えたらすぐに行くので 〇〇さんは下の休憩場所で待っててください!



〇〇 : ん。疲れてるだろうし、そんなに急がなくてもいいから。ゆっくり着替えといで?



菅原から話を聞くため
せっかく仕事を早めに終わらせて来たのに...


...とはいえ、メンバーからの相談を
そんな個人的な理由で断る訳にはいかず

それで仕方なく、レッスン室の前から離れ
事務所2階にある休憩スペースへと向かった。



「えっ!?あや!どうして2階で降りるの!?
今日 美空と一緒に帰るって約束してたよね?」



「してないでしょ。」

「も〜 降りるから離してよ〜」



「んもぅ!しょうがないなぁ...」

「でも 美空わかってるんだからね?
彩がほんとは美空と帰りたかったってこと。」



「はぁ...別にそんなことないし。じゃあね 美空」



「うんっ!バイバイ!あやっ!」







彩 : お疲れ様です〜



〇〇 : お、お疲れ様。小川。

〇〇 : ...相変わらず凄いんだね、一ノ瀬。



エレベーターの声が休憩室にまで届いてたし。



彩 : はい...もう最近はほんとにしつこくて。

彩 : この前なんて ご飯食べてる途中に抱きついてきたんですよ?ありえなくないですか?



〇〇 : はははっ それは確かに。

〇〇 : じゃあ 小川が俺に相談したいっていうのは その"一ノ瀬がしつこい"ってこと?



彩 : あっ、いえ、違います。まぁ...そのことも 相談したいっちゃしたいんですけど

彩 : でも、今日〇〇さんに相談したいのはそのことじゃなくてですね...?その......


彩 : ...どうすれば もっと大人っぽく見られるようになると思いますか?



〇〇 : ...んっ?んーと...

〇〇 : 小川は大人っぽく見られたいの?



彩 : はい。



〇〇 : どうして?



彩 : それは...いつも赤ちゃん扱いされるからです。美空とか、アルノとか、咲月とかに。

彩 : 梅澤さんとか、珠美さんとかにそういう扱いをされるのは嬉しいんですけど...

彩 : 同じ5期生にやられるのは嫌で。



〇〇 : ...ははっ、なるほど。そっかそっか。

〇〇 : ま、確かに。先輩に可愛がられるならまだしも、同期であの感じは嫌になるかもな〜



彩 : はい...



〇〇 : うん。それで大人っぽく見られたいと...

〇〇 : なるほどね〜...なるほど なるほど。


〇〇 : 大人っぽく見られたい、か......



"大人っぽく見られたい"

メンバー最年少の小川から出る悩みとしては
正直、分からなくもない悩み。


実際、かなり
「赤ちゃん扱い」されているところを見かけるし

それをそこそこ嫌がってそうな節もあった。

...小川が言ってた通り
5期のメンバーにやられている時は特に。


だから、本当に小川が悩んでるんだったら
どうにか解決してあげたいけど...


あげたいんだけど...

..."大人っぽく"って どうすればなれるんだろ。



〇〇 : んーと...さ、小川がイメージする"大人っぽい人"って?メンバーで例えると誰なの?



彩 : えーっ?大人っぽい人...

彩 : あやてぃーさんとか?ですかね...?



〇〇 : あぁー、吉田さんね...



ほんの数回しか話したことないけど、確かに。
確かに、あの人は大人っぽい。

ていうか、"ぽい"とかじゃなくて大人だし。



〇〇 : じゃあ...行動とか 話し方とか、まずは吉田さんのマネをしてみたらどう?

〇〇 : そしたら、大人っぽくなれるかもよ?



彩 : ...そう...ですか?



〇〇 : ......



...いや、今のはアドバイスは完全にミスった。
自分で言ったものの、何となくわかる。


大人っぽくなんて
そんな簡単なことでなれるわけないだろうし

小川もそれがわかってるのか微妙な反応だし。


不甲斐ない...

きっと こんな時、橋本さんなら
もっといい感じのこと言えたんだろうな。



〇〇 : っ...と...もう遅いし、今日は帰ろうか?

〇〇 : ほら小川  明日 学校でしょ?



彩 : え、あ、はい......



〇〇 : ......


〇〇 : ...



〇〇 : んー...とさ......

〇〇 : 小川?



彩 : は、はい...?



〇〇 : 俺、マネージャー研修の時に 小川のお見立て会の映像も見せてもらったんだけど

〇〇 : あの時と比べたら、小川はもうほんと別人かってくらい大人っぽくなれてるから。

〇〇 : だから、このまま今までみたいに頑張り続けてれば、いつの間にか 誰にも赤ちゃん扱いなんてされなくなってるんじゃないかな?


〇〇 : って...俺は思うよ。


〇〇 : ごめんね?疲れてるだろうレッスン後に、せっかく相談してくれたのに、良いアドバイスとかしてあげられなくて。



彩 : あっ!や!そんな 謝らないでくださいよ。

彩 : ...でも、わかりました。


彩 : 〇〇さんから見て ほんとにあやがそんなに大人っぽく見えるようになってるなら


彩 : あや、もっともっとお仕事頑張ります!



〇〇 : うん!

〇〇 : 俺も、大人っぽくなってく小川をしっかり見て支えられるよう頑張るよ。



彩 : はい!えへへっ...!



小川の笑顔を見て
さっきまでの不甲斐ない気持ちが少し緩む。

と同時に、俺も頑張らなきゃなって思った。


とりあえず
"大人っぽく見られる方法"については
この後でも、橋本さんに電話で聞いてみるか。

他の5期にも聞かれるかもだし
これから6期の募集かけてくって話もあるし。

何事も忘れないうちに。



〇〇 : じゃ お疲れ様。おやすみ、小川。



彩 : あやすみです。〇〇さん。



夜遅くなってしまったので
小川のことを小川の家の近くまで送り届ける。

それから、さっきのことを思い出して
橋本さんに電話をかけた。けど...



〇〇 : 出るわけないか...そういえば。



橋本さんは基本
業務時間外の仕事の電話には絶対に出ない。

業界が業界なだけに
結構 曖昧になりがちなプライベートと仕事

なのに
そこら辺をきちっと分けてる人だから。


まぁ...電話に出ないんだったら仕方がない。
また明日にでも、話せる時に聞きにいこう。

あぁ〜...あと菅原にも話を聞かなきゃ...



〇〇 : はぁ...



気づいたら仕事以外のやることが増えすぎ。
...とはいえ、どれも重要度が高いから困る。

そう、ため息をつきながら車を出そうとすると



〇〇 : んぁ?......あ!?



橋本さんから折り返しの電話がかかってきた。



〇〇 : お、お疲れ様です!橋本さん。



「...ん、お疲れ。」

「で?夜にこんなに電話かけてきて何の用?」



〇〇 : あ、あぁ...!その...ですね?



「和とのことでも相談したいとか?」



〇〇 : へっ?...へ?



「ん?違うの?」

「告白の答え、待たせてるんでしょ?」



〇〇 : い、いや...!な、な、なんで...!



なんでそのこと知ってんの!?この人!



〇〇 : あっ...



やば、焦って間違えて電話切っちゃった。


それで改めて電話をかけ直そうとすると
仕事用のLINEに通知が入る。



橋本
「明日の夜なら空いてるよ」


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