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おさなななじみ。終





子供の頃からずっと一緒にいたからこそ
恋愛的に好きになった。


子供の頃からずっと一緒にいたからこそ
恋愛的には好きにならなかった。



漫画やアニメの話の中にもあるように


恋愛において、"幼馴染"って関係ほど

ここまで分かれてしまう存在はないと思う。




「だから!教えねぇっての!」




そして、私達の場合

私は前者で、〇〇は後者だった。




放課後、職員室に呼び出されてたある日。


先生との話が終わって、自分の教室に戻る途中
隣の教室から聞き慣れた声が聞こえて。


その声がした教室の扉の窓を覗いてみると

〇〇と〇〇の部活友達の2人。
3人が教室の真ん中に集まって話していた。




[なー!なんでだよー!
俺らの好きな人も教えるからさぁ?なぁ?]




[いるにはいるんだろ?教えてくれよ〜?]




「無理。絶対に教えん。
てか、お前らの好きな人はもう知ってるし。」




[え〜〜〜〜〜〜〜]




どうやら
"〇〇の好きな人"を聞き出そうとしてる2人。


でも、その時、私は"〇〇に好きな人がいる"
ってことを初めて知って、ドキッとした。


っていうのも、〇〇とは今まで
1度もそういう話をしたことがなかったから。



...もちろん。

偶然してこなかったわけじゃなくて意図的に。



だって、もし〇〇とそういう話をしたら

"好き"ってことが〇〇にバレるかもしれないし


そして、もしバレてしまったら
今の関係じゃいられなくなるって思って。



"幼馴染"は"彼女"じゃないけど

"彼女みたい"なことはできる。



学校が休みの日に一緒にどこか遊びにいったり

夏祭りとか、クリスマスとか
年末年始とかの行事ごとを一緒に過ごしたり。


私はそれで十分満足できてた。


だから、もし私の気持ちがバレて
今の関係が壊れてしまう可能性があるんなら


ずっと幼馴染のままでもいい...って思ってた。




...でも、〇〇に好きな人がいるなら話は別。




〇〇のことは誰にも取られたくない。

けど、〇〇のことを応援したい気持ちもあって


"〇〇の好きな人って誰なんだろう"


...って、とりあえずその場で少し考えてみた。




『......?』




まゆたんにせーらに史緒里ちゃんに...

〇〇のクラスには可愛い子がいっぱいいる。

でも、その可愛い子達と〇〇が話してるとこを
見たことがあるかと言われれば...ない。


強いて言うなら、
見たことあるのはさくちゃんぐらいで...



...ってことは、さくちゃんが〇〇の好きな人?



それでも正直、あんまりピンと来ない...




『......!』




それとも、もしかして...もしかしたら......




[あーー!!わかった!]


[賀喜だ!お前賀喜のこと好きなんだろ!?
そういやお前、よく賀喜と話してんじゃん!]




[おぁー!言われてみれば確かに。
違うクラスなのに話してるイメージあるわ!]




[んな!つか、もうそれしか考えられん。
そうじゃん。賀喜じゃん!絶対賀喜じゃん!]




『!!!!』




〇〇の友達2人のその言葉で
心臓の音が大きく早くなっていくのがわかる。

自然と口角が上がってニヤケちゃう。



自惚れかもしれないけど、ない話じゃない。



...ううん。



ない話じゃないって思いたい。



〇〇が私のことを好きだってことが


〇〇と両想いだってことが.........






でも






「は、はぁ!?バカ、なに言ってんだよ!」



「遥香はただの幼馴染だっての!
それ以上でもそれ以下でもないわ!」




[はい嘘つけ〜!お前!]




「嘘じゃねぇっての!」




[本当かぁ?じゃあ、もし賀喜がお前のこと好きで賀喜が告白してきたらどうすんの?]




「そ、そりゃ......」


「普通に断るに決まってんだろ!」




『.........』






言葉という透明な鈍器に
頭を思いっきり殴られたみたいだった。





いくら息を吸っても、胸が苦しくて

胸の内側がだんだん冷たくなってって

いつの間にか、目からぬるい涙が溢れ出てて



〇〇にとっての私は"ただの幼馴染"。


それ以上になることはない
それ以上になれることがない、"幼馴染"。


それを思い知らされた気がした。



さっきまで何か期待してた自分がバカみたい。



そう思った私はその場から逃げるように
教室の自分の荷物を取って、家に帰ろうとした



その途中。



昇降口の下駄箱を勢いよく開けると

中から、
ひらひらと1枚のメモ紙が舞いながら落ちて。


それを拾って見てみたら




[賀喜さんへ。
来週水曜日の放課後、屋上前に来てください。
2-3 佐藤‪✕‬‪✕‬。]




...


...


...




[1年生の時から、賀喜さんが好きでした。]


[僕と付き合ってください。]




『...うん。よろしく。』




[え!?ほんとに?よっしゃぁ!!!]




...そうして、迎えた来週の水曜日。
✕‬‪✕君に告白されて、私は‪✕‬‪✕君と付き合った。


彼氏が出来ることで
そして、〇〇から自然に距離を置くことで

○○への気持ちを
忘れられるんじゃないかって思ったから。



だから、私は✕‬‪✕君と付き合うことにした。



でも、○○と距離を置いたら置いたで



いつの間にか
○○とさくちゃんが仲良く話すようになってて



それを見て、私はさくちゃんに嫉妬した。


と同時に




[は、遥香!おはよ!]




『...ふふふっ。おはよ、✕‬‪✕君。』




○○のことを忘れるために✕‬‪✕君を利用してる。
なのに、○○のことを忘れられる気がしない。

そんな自分のことが嫌になった。


『...あのさ、ちょっといい?』



だから、
✕‬‪✕君には申し訳なくなって、別れた。



でも、それからすぐ私に追い打ちをかけるように
さくちゃんから直接

『○○のことが好き。』って言われた。


『付き合えるように手伝ってほしい。』とも。


さくちゃんが○○のことを好きなのは
何となく分かってた。


それは、まだ✕‬‪✕君と付き合っていた時。

○○とさくちゃんが
2人で買い物に来てるのを偶然見かけて

その時、さくちゃんに

『もしかして、○○のこと好きなの?』

って小声で聞いたら、
顔が赤くなりながら、コクコクと頷いてたから。



さくちゃんは高校で初めて出来た新しい親友。

だから、断われなかった。


たとえ、どれだけさくちゃんに嫉妬してても。



そして、この時から私は
自分の気持ちと行動が真逆のことばっかりで



もうどうしたらいいのか、わからなくなった。



わからないのに中途半端に答えを出してきた。




その結果が



「さくらと付き合うことにした。」



...これだ。



"幼馴染"という関係。


今まで甘えてきたその関係のせいで
こうなってしまうなんて夢にも思わなかった。




...


...


...




『......はぁ』




朝。ゆっくりと目が覚めて
天井を眺めながら、ため息をつく。


よく眠ったはずなのに眠れた気がしない。
頭がグランと揺れるように痛い。



そんな時、
昨日の○○の言葉を思い出して、ふと思った。


もし、あの日


『さくのこと、好きなの?』


なんて言わなければ



それか、もし違う言葉を言っていたら



さくちゃんと○○はどうなっていたんだろう。




...って、そんなこと
今更、考えたところで意味ないのに。





『......最低だ、私。』





ただの幼馴染のくせに。




end

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