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俺の知らない転校生 6



「はぁ...」



ベッドの中、天井に向かって ため息をつく。


今日は変なやつが急に現れるわ
そのせいでか、友達も家族もおかしくなるわ

トラックには轢かれそうになるわ...
それから足を痛めるわ...


これまでの人生史上、最悪な日だった。


誇張なしで、そう言ってもいいと思う。


なのに......



『どーーん!!』



最悪な日という今日はまだ終わらないらしい。



「いっった...」



体に急にのしかかった重みと、聞き飽きた声。
見ると、あいつが俺の体の上に被さっていた。



「...何しに来たんだよ。」



『えっ!?も〜!あの時に言ったじゃん!』

『美空が手当てしてあげる!って!』



「あぁ...それ。もういいから。」



『だーめ!絶対手当てするの!』

『ほら!まずは美空のことギュッてして?』



「......はぁ?」



バカバカし過ぎて、もう怒る力も抜ける。
いや、それくらい疲れてるんだよな。今日は。

だから、早く寝かせて欲しいのに...



「そっちがしてくれないなら美空からいくよ?」


「よいしょっ...と!ギュ〜ッ!!」



ベッドにモゾモゾゴソゴソと奴が入ってきて
そっぽを向いた俺の背中へと抱きついてきた。



「...あのさ?狭いしあっついんだけど。」



『我慢してよ。手当てしてるんだから!』



「いや、これのどこが手当てなんだっての...」



『っも〜、何度も何度も言ってるでしょ?』

『美空は宇宙人なんだよ?』

『だから、美空が抱きつけば
足の痛みくらい 簡単に消せちゃうの!』



「あぁ...はいはい。そーですか...」

「...で、いつまでこうしてるつもりなわけ?」



『ん〜、じゃあ 明日の朝まで! 』



「はぁ?...勘弁してくれ。」



『え〜?どうして?だって
寝て起きたら治ってるんだからよくない?』



「......よくないわ。」



宇宙人だかなんだか知らんけど

女子にこんな密着されながら寝るなんて
俺には無理。

いろいろと背中に当たっちゃってるし...



「......」



寝たい気持ちはあるものの全く眠れない。
それで目を開けたまま、ボーッとしていたら



『ねぇねぇ。まだ起きてる?』



奴は俺に話しかけてきた。



「...起きてるけど?」



『へへっ、やっぱり。』

『美空が今 聞いたとき、
ちょっとだけ、〇〇の胸 ドキってしたもん。』



「......あっそ。んで...?なに?」



『えっ?んーと...』

『...今日、あの時さ
どうして 美空のこと助けてくれたの?』



「あの時?助けた...?」

「あー...
トラックに轢かれそうになったやつか。」



『うん。そう それ。』



「別に...あれは別に
ただ...体が反射的に動いただけ。」



『ふっ...へへへっ...!そうなんだ?』

『...優しいんだね?〇〇。』



「......なんだよ、急に。」



『へっ?ううん...何でもない!』



『...ねぇねぇ、〇〇?』



「あ...?」



『美空、もう
〇〇のこと洗脳しようとするのやめるね?』

『美空のせいで
今の〇〇が変わっちゃったら嫌だから。』



「...そ。はいはい。」

「てか、やめるもなにも
俺はその洗脳ってやつにかかんないんだろ?」



『うん。』

『...そう思ってたんだけど』




「「好きだよ、美空。宇宙一可愛い。」」




『へへへっ...
意外と もう かけれちゃうみたいなんだよね。』

『美空が宇宙人だってこと
心の中では信じてくれてたんだ。』


『...ねぇ こっち向いて?〇〇。』



「「...?」」



「「んっ...!!」」

『っ...』



『...あのね?
〇〇は美空のこと嫌いかもしれないけど...』


『美空は〇〇のこと だーい好き だよ。』

『あの時は助けてくれて ありがとう。』



「「......」」



『...へへ、ごめんね?〇〇。すぐに解くから。』



『......』



『......でも、一つだけ本心で答えて?』

『どうしたら
〇〇は美空のこと好きになってくれる?』



「「......」」

「「......」」

「「今からはもう無理だと思う。でも...」」

「「もし 俺が君を知らない状態でまた会えたら」」

「「その時は...」」



『...そっか!』

『じゃあ......うん。"また"ね!〇〇。』



「「......」」



「「......」



「......ん、んん...ん?」



暗い、自室のベッドの上
急に目が覚めて、ゆっくりと起き上がる。

と同時に、ぐぅ...と腹が音を立てて鳴った。



「...腹減ったな。」

「まぁ...確かに夜飯、ろくに食わなかったし...」



「って...あれ?俺、なんで...」



「なんで夜飯食わなかったんだっけ...?」



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