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告白罰ゲームから始まる、少し変わった恋。03





中西 : おう...やっと来たか、○○。



○○ : なっ...!



応接室の中いたのは親じゃなくて
昨日、咲月の家で会ったあの男だった。



○○ : っ!



すぐに踵を返し
廊下にいる誰かしらを呼ぼうとする。しかし...



中西 : まぁ待て。まずは座れ。

中西 : 別に危害を加えに来たわけじゃない。



男は俺を呼び止め
応接室のソファに座るよう促したのだった。


"別に危害を加えに来たわけじゃない"

その言葉が本当かはわからないが ここは学校。

だからさすがに派手な事はしないだろうと思い
ゆっくりと、それでも警戒しながら座る。



中西 : 親の名前を使って呼んで悪かったな。

中西 : だが 家に直接来られるよりはマシだろう?俺みたいな人間に。



そして、男は話をし始めたのだった。



○○ : っ...そ、それで

○○ : ...なにしにきたんですか?



中西 : ん?ああ、それは...

中西 : ただ お前の意思を確認をしに来たんだ。



○○ : ......意思...?確認...?



中西 : ああ。

中西 : 昨日 家で馬鹿みたいに大声あげて何やらかやら啖呵を切っていたが

中西 : 結局、お前は咲月ちゃんと別れる気はないってことでいいんだな?



○○ : っ...それは......



昨日 彼女と話した時の彼女の顔が頭に浮かぶ。
答えは決まってるようなものだった。



○○ : はい。

○○ : 俺は咲月と別れる気はないです。



中西 : ......そうか。わかった。

中西 : 本当にそれでいいなら それでいい。


中西 : ただ 覚悟はしておくんだな。


中西 : 昨日も言ったが 彼女と付き合うってことは俺達の世界に片足を突っ込むことでもある。

中西 : お前自身にだけでなく 周りの人間にも迷惑をかける可能性があるのを努努忘れるなよ。



○○ : っ...は、はい...!



中西 : ......


中西 : ...じゃあ 俺は帰る。

中西 : 重ねて言うが 悪かったな、急に来て。



そう言うと男はゆっくりと立ち上がり
扉の方へと向かった。

が、応接室から出ようと扉に手をかける前に
男は振り返って、再び俺の方を見て言う。



中西 : あぁ...そういや大切なことをお前に言い忘れていた。ちょっとこっちきて耳 貸せ。



○○ : ......?



この距離で
なぜ男の近くに行く必要があるのか

よくわからないが
とりあえず近くに行き、男の顔に耳を寄せる。

すると...



ドンッ!



○○ : っぐっ...!ぁっ......っ...



鈍い音と男の拳が 俺の腹へと めり込んだ。



中西 : これは俺の優しさを無下にした礼だ。

中西 : それと咲月ちゃんの父親...総會長には気をつけろ。下手したら 全て終わるからな。



○○ : っ......



ズキズキと痛む腹の痛みと男の言葉の重み
どちらも体に深くのしかかる。



中西 : じゃあな、小川○○。

中西 : あと 少しぐらい体鍛えて強くなれよ。



そうして
今度こそ 男は応接室を出ていったのだった。



...


...


...



[それでは皆さん?ごきげんよう]



[[[ごきげんよう]]]



咲月 : っあ〜!

咲月 : やっと今日も学校終わった〜!



放課後、今日の授業から解放された勢いで
座ったまま ググググッ〜って背伸びをする。

そしたら、脇腹のところを
チョン!って 誰かにつつかれた。



咲月 : くぅっ!

咲月 : ちょっと!てれぱん?



瑛紗 : へへへ。さっちゃんおつかれ〜。



咲月 : おつかれ!あれ?みーきゅんは?



瑛紗 : ん?あぁ〜!お花摘み行ってくる〜って言って さっき教室出てっちゃった。

瑛紗 : もう少ししたら戻ってくるんじゃない?



咲月 : そっかぁ。あ〜...じゃあ てれぱん、みーきゅんきゅんに伝えといてくれない?

咲月 : 私 今日予定あるから もう帰るって!



瑛紗 : うん。おっけ〜。

瑛紗 : じゃあ ばいばい。また明日〜。



咲月 : うん!また明日〜!



カバンを持って教室を出たら
小走りと早歩きの真ん中ぐらいで移動して。



咲月 : あ!



校門を出たら
横断歩道のすぐ向こう側に彼の姿が見えた。



咲月 : よしっ...!



私の姿が見えないよう どうにか隠れながら
ゆ〜っくり 静か〜に近づく。

そしたら 意外と全然 気づかれずに
すぐ後ろまで たどり着くことができて...



咲月 : わっ!!!



○○ : ひっ!!??



そのままの勢いで驚かすように声をかけると

"ひっ!?"
って 彼は まるで女の子みたいな声を出した。



咲月 : っははははっ!はははっ!

咲月 : ごめん ごめん! びっくりした?



○○ : っ...!そ、そりゃあ!誰だって急に後ろからああ来られたらびっくりするでしょ!

○○ : でも よかった...俺はてっきり...



咲月 : ん?てっきり?てっきり なに?



○○ : あ... や ?べ、別に?な、何でもない!



咲月 : ......



彼とは 昨日 出会ったばかりだけど
何となく、なんとなーく 私にはわかっちゃう。

この"何でもない"は多分...多分だけど、嘘。



咲月 : ...ま、いいや!じゃあ ほら 帰ろ!



○○ : う、うん!帰ろう。



咲月 : あっ!そういえばさ 駅の近くの前コンビニだったとこ知ってる?



でも、"何でもない"って言ってるのに
しつこく聞くのもアレかな〜って思っちゃって

だから、私の方から別の話に変えてあげた。



咲月 : 今日友達が言ってたんだけど、そこに すごい美味しいドーナツ屋 出来るんだって!



○○ : へぇ〜 ドーナツ屋?なんか珍し。

○○ : っと...ドーナツでなんの味が1番好き?



咲月 : え〜?なんだろ?チョコ系かな?

咲月 : あ〜、でも1番か!1番だと...ん〜〜〜

咲月 : 逆に!○○は何味が1番好きとかある?



○○ : え〜1番でしょ?1番好きな味...迷うな。

○○ : いや2択には絞れてるんだけどさぁ...



なんて 話をしながら歩く。

そしたら
あっという間に駅の前に着いちゃってて

あっという間に今日のお別れの時間が来てた。



○○ : あ、 俺 反対側の電車だから。



咲月 : へっ?そうなの?



"俺の家から遠い"って 確かに昨日言ってたけど
まさかの家が完全に逆方向だなんて。

...こりゃ
彼の家に遊びに行けるのは少し先になりそ。



咲月 : ...うん!じゃあ ばいばい!○○!



○○ : うん!また明日......って、あ。

○○ : そういや 明日も一緒に帰る?



咲月 : え?あぁ...明日は私 学校で委員会の仕事あるから 多分一緒に帰るの無理だと思う。

咲月 : まぁ...○○が待っててくれたら帰れるけど、委員会 長引いて待たせちゃったら悪いし。


咲月 : ...っていうか!

咲月 : 今 話してて気づいたんだけどさ まだ連絡先交換してなくない?私たち。

咲月 : よし!今すぐ交換しよ?



○○ : あ、あぁ うん。



咲月 : じゃあぁ〜あ はい、これ私の。



彼は私のスマホからすぐに読み取って
私の連絡先を追加する。

すると、すぐに私のスマホにも通知が来て
私も彼の連絡先を追加した。



咲月 : やたっ!これでいつでも連絡するね?



○○ : う、うん!いつでも連絡してきて?


○○ : ...連絡先も交換したし、他に何か話すことあったら続きはこっちで話すことにしない?

○○ : そろそろ 咲月が乗る方の電車来るし。



咲月 : え?あっ、ほんとだ!

咲月 : じゃっ そうしよ!



○○ : うん...じゃ、今度こそじゃあね。咲月。



咲月 : うん!ばいばい!

咲月 : あ、絶対またあとで連絡するから!



彼にそう言ってから
階段を少し急ぎ足で降りてホームに向かう。

そして、ちょうど来た電車に私は飛び乗ったら



咲月 : ただいまー!



いつもみたいに家へと帰ってきた。



[おかえりなさい。咲月ちゃん。]

[今日も元気だねぇ。]



咲月 : へへっ、そう?



中西 : おかえりなさい。咲月ちゃん。



咲月 : あ、アルノパパ!

咲月 : 珍しい、家に2日連続で来てるなんて。



中西 : ふっ...そうかな?

中西 : ...それより、ちょうど咲月ちゃんにちょっと聞きたいことがあったんだがいいかい?



咲月 : うん?うん。



中西 : 昨日 咲月ちゃんが連れてきた彼。咲月ちゃんは彼のどこが好きで付き合ったの?



咲月 : えっ?あぁ、それは......ええっと.........



どうして急にアルノのパパが
そんなことを聞いてきたのかはわからないけど



咲月 : ……う〜んと...



正直、なーんも 答えられない。

だって私 ○○のこと まだ好きじゃないもん。
そもそも 昨日初めて会ったくらいだし。


告白されて、付き合ってみたのも
ちょっとなんか面白そうだな〜って思ったのと
"彼氏"って存在自体が気になってたからで...


誰でもよかったんだ。うん。誰でもよかった。


昨日、告白してきた人が○○じゃなくたって
多分、私はその人と付き合ってたと思う。


でも...


"咲月が総なんとかの娘なんて関係ねぇ!"


麦茶を持ってきた時に部屋から聞こえた声に


"後悔なんてしてないよ"

あの時、まっすぐに言ってくれた言葉。

あれがなかったらきっと......



咲月 : ......ふふっ



今日の私はこんなに笑えてなかったかもな。



咲月 : 私にも よくわかんないや!

咲月 : でも、なんかピン!って来たんだよね。

咲月 : この人なら 好きになれそうって。


咲月 : それが理由じゃダメ?



中西 : ......いいや?そんなことはないさ。

中西 : 答えてくれてありがとう。

中西 : じゃあ これで私は失礼するよ。



私の答えに納得したっぽいアルノのパパと
そのまま すれ違う。

と、その時、急にアルノのパパは私に言った。



中西 : ...そういえば、咲月ちゃん。
総會長に彼のことは紹介してあげたのかい?

中西 : まだしてないなら 早く紹介してあげた方がいい。できることなら 自分の口で。ね?



咲月 : ......



心臓を言葉でギュッと掴まれた感じがした。




告白罰ゲームから始まる、少し変わった恋。
プロローグ END

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