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俺の知らない転校生 1


〈おはよー!美空!!〉




『おっはよー!』




朝、教室に向かうと
知らない女子が俺の隣の席に座っていた。

転校生...なんだろうか。



〈みくー!昨日のあのドラマみた!?〉



『うん!見た見たー!続き気になるよねぇ!?』



でも、そうだとしたら少し不自然なくらい
彼女はもう既にクラスに馴染んでいるようで。

俺はそれを不思議に思いながらも
自分の席につくと、机にカバンを下ろした。



『おはよう?〇〇くん!』



「!?」



突如、隣から飛んできた聞き慣れない声。

それに反応して、その声の方を見てみると
ちょうど、その転校生(?)と目が合った。



「お、おはよう。」



驚きつつも、反射的に挨拶を返す。
すると、彼女は口角を上げ、目を細めて笑う。



『〇〇くんは昨日やってたドラマ見た?』



そして、当たり前のように
自然な感じで急に話を振ってきた。



「いや...見てないけど。」



『えー?ほんと?』

『面白いから、家に帰ったら絶対見てみてよ!』



「あぁ...?まぁ、うん。わかった。」



初対面のくせにやたらと距離が近いな。

そう思ったけど
指摘するほどのことでもないからほっといた。

イヤフォンを耳につけて
音楽を頭の中に流しながら自分の世界に入る。


そしたら、5分後くらいに担任が教室にきて
いつも通り、HRをし始めた。



...が



[んじゃ、次の数学の授業の準備しろ〜。]



「は...?」



まさかまさかの、転校生(?)について
ノータッチのまま担任はHRを終わらせた。

もしかして紹介し忘れてるんだろうか。

...いや、さすがにそれはありえない。



『はぁ〜あ〜、次の数学嫌だよね〜?』



〈それなそれな!〉



だって
転校初日(?)でこんなに存在感があんだから。

とはいえ、ノータッチだったのは事実で...



『...?どうかしたの?〇〇くん。』



「えっ...あ、や...なんも。」



そういえば
名前を教えた記憶がないにも関わらず

彼女は、さもそれが当たり前かのように
俺を"〇〇くん"って下の名前で呼ぶ。

俺は彼女の苗字すら知らないってのに。



「なぁ...俺の隣の席のあの女子なに?」



だから、数学の授業が始まる前に
トイレに行くついでに仲のいい友達に聞いた。



「っていうか...誰?なんであの女子あんなクラスに馴染んでんの?転校生?なのにさ。」



そしたら、
その友達からは驚きの言葉が返ってきた。



〈は?お前、なに寝ぼけてんの?〉


〈美空ちゃんだろ?一ノ瀬 美空!○○、お前...
去年も同じクラスだったじゃねぇか!〉



「はぁ!?」



そんなわけがない。

一ノ瀬 美空なんて女子
去年、俺がいたクラスにはいなかった。

記憶力はいい方だから、それは間違いない。

でも、そんなデタラメな嘘を俺につく理由が
こいつにあるとは思えなかった。


おかしい。何かがおかしい。

そう思いつつ、首をかしげながら教室に戻ると
もうすぐ授業が始まるところだった。

席についてから、慌てて数学の教科書を出す。


すると...



〈おい、小川。
お前なんで数学のもの出してんだ?〉

〈周り見てみろ、今からやんのは現文だぞ?〉



「へっ?」



そう、数学の先生に言われて辺りを見回す。

すると、確かにみんな
机の上には現文の教科書とノートを置いていて

数学のものを出していたのは俺だけだった。


知らない間に授業変更があったんだろうか?

...いや、ふと見てみると
さっきトイレで話した友達は現文を用意してる


ってか、そもそもあの先生って
去年からいつも数学を教えてる先生だよな?

なのに、これから現文の授業をするだなんて。


やっぱり、今日は何かがおかしい。

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