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夏、余り、嘘、ほんと.4





〈おはよう!みんな久しぶりー。〉



〈ちょっと早いけど、
集会あるから先にホームルームやるよー?〉




〈じゃ、夏休み明け最初の出席とりまーす。〉




〈岩瀬 祐希さん・・・




「はい。」




・・・



・・・



・・・




・・・与田 いまり君〉




「はーい。」




〈よし!さっすが!私のクラス!〉


〈夏休み明け初日全員無遅刻無欠席!〉




「え?」



「ちょっと麻衣先生!」




〈ん!?どうしたの、菅原くん?〉




「○○のやつ、まだ来てないんですけど?」



「そうですよ!あいつ初日から遅刻してます!」





〈あ、あぁ!ううん!それは違うの。〉





「えっ?違うって、せんせーなにが?」





〈あーっと、このことは集会が終わってから、みんなに伝えようと思ってたんだけど...〉



〈賀喜くんは夏休み中、ご家庭の事情でアメリカの学校へ転校しました。〉



〈ごめんね、みんな。
先生は夏休み前から知ってたんだけど、〉



〈賀喜くんに、みんなに伝えないで欲しいって言われてたから、伝えてあげられなかった。〉




「は!?先生それマジ!?」




「あれ?でも、遥香ちゃん今日来てなかった?」




〈うん。転校したのは賀喜くんだけだから。〉




「はぁ!?んだよそれ!」




「あいつー!
俺らにサヨナラぐらい言ってけよなぁ....」




〈ははは...そうだよね!〉


〈でも、きっと賀喜くんは寂しかったんだよ。
みんなにお別れを言うのが。〉





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『よっ、少年。元気してる?』




「先生.....って、元気にしてたら、
そもそも入院なんかしてないですよ。」




『はははっ、それもそっか。』




「で、何しに来たんですか?」




『何しにって、担当医として
君の様子を見に来たに決まってるでしょ。』


『ご飯、最近よく残してるって聞いたけど?』




「......あぁ。...まぁ、その...はい。」


「なんか...食欲なくて。あと、不味いし...。」




『そっかそっか。食欲と味か...ふふふっ、確かにここの病院食あんま美味しくないもんね。』




「はい...」




『でも、ちゃんと食べないと痛み止めとかの薬の効きが薄くなっちゃうからさ。』


『今後はなるべく残さず食べるようにね。』


『何なら、私が食べさせに来てあげようか?』




「いやそれは......さすがに遠慮しときます。」


「ていうか、先生にそんな時間ないでしょ?」




『ん?別に?そんなことないけど。』


『どうしてそう思うの?』




「だって、看護師さんが言ってましたよ。」


"橋本先生は天才。"

"あんなすごい女医になってみたかった。"


「って。先生って、凄い先生なんですよね?」


「だから、俺みたいな子供一人に
そんな構う時間なんてないだろうなーって。」




『...はははは。全然、そんなことないよ。』


『むしろその逆。この病院に来てから、
時間なんてあまりにあまってるくらいだし。』



『...だから
遠慮せずに何でも言いな?○○君。』


『医者として、君を診てる1人の人間として
私にできる最大限の努力をするから。』




「...ははっ、はい。わかりました。」


「ありがとうございます。橋本先生。」




『......』


『...じゃ、私はそろそろ行くね。』


『何かあったら、ナースコール押してくれれば私か看護師がすぐに向かうから。』




「はい。わかりました。」




『あ。あと、そういえば.........』


『...はい。この手紙、○○君にだって。』




「手紙...?誰からですか?」




『んとー...ほら、長い黒髪の...顔の小さい....
確か、木乃高の飛鳥って女の子から。』




「......そう...ですか。」


「でも、なんでこれを橋本先生が...?」




『それはほら、君、
ご家族以外の面会は基本断ってるでしょ?』


『だからその子、それを君に渡しに来た時に受付のとこで断られちゃってもめててさ。』


『でも、この手紙だけは渡すよう頼み込んできたとかで、私のとこに回ってきたの。』




「......なるほど。」


「ありがとうございます。
わざわざ預かって、俺に届けてもらって。」




『ううん。これくらい全然。』


『...で?
その子と○○君はどういう関係なの?』




「えっ...?」




『...?あぁほら、もし親しい関係の子なら
次から面会通してあげた方がいいと思って。』




「あ、あぁ......そういうことですか...」




『それで、どうなの?』




「飛鳥は......」



「......少し仲が良かった、ただの友達です。」


「なので、通さなくて大丈夫です。」




『...そ。わかった。
じゃあ、受付の人にそう伝えておくね。』




「...あ、あと、それで1つ...いいですか?」




『うん?』




「来週、外出許可っていうか...あ、病院の中庭でもいいので、外に出ることできますか?」




『んー...外出許可なら検査の結果次第だけど...
病院の中庭は一応いつでも出れるよ。』


『まぁ、私や看護師とか、君を見れる人が必ず1人以上一緒についてないとダメだけど。』


『来週、なにか予定でもあるの?』




「はい。あるっていうか...今、出来ました。」




『...?今できた...?』




「...この手紙の上のとこに書いてあったんです。」



「来週の日曜15時に会って話がしたいって。」


「少し仲の良かった、ただの友達から。」

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