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夏、余り、嘘、ほんと.3





「ごめん、飛鳥。」


「.........俺たちさ、別れよう。」



『......私の事、嫌いになったんだ。』



「それは違う。」



『っ...じゃあ!なんでそんな嘘つくわけ?』



「だから、嘘じゃ...」



『嘘じゃん!だって目の前にいるあんたが?
余命半年?そんなわけないでしょ!』


『そんな変な嘘ついてまで私と別れたいなら、はっきり言えばいいじゃん!』


『私のことが嫌いになったって!』


『もう好きじゃなくなったって!』



「.......っ....あ...飛鳥。」



『......なに』



「俺、飛鳥にだけは━━━━━━




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『おまたせっ!待った?』



「うん。10分くら...」



『ちょっと!そこは...
"全然、待ってないよ"って言うでしょ普通。』



「いや、俺は言わないけど?」



『はぁぁ...
これだから○○はモテないんじゃない?』



「は〜?い〜?聞き捨てならんなぁ?」


「たとえモテててたとしても、生まれてこの方未だに彼氏が出来たことないやつに言われたくないんですけど〜?」



『っ...それは...!』



「それは...?」



『別に、私の勝手でしょ!』


『...ほら!早く行くよ!』



「わっ、ちょっ!
急に袖引っ張って歩き出すなっ!」




...



...



...




『すいませーん!イカ焼き2つくださーい!』



〈あいよ!600円ね!〉



『はい!○○、お金!』



「いや俺が出すんかい。まぁ、いいけど。」



〈まいど!熱いから気ぃつけろな!〉



「ほい、美月。っと...ここんとこ持ちな。」



『うん。...へへっ、ありがと。』



「これ食い終わったら次何買い行く?」


「焼きそば?たこ焼き?ポテト?」



『うーん...!迷うから全部買いに行こ?』



「はぁ?いや、全部って...」


「そんないっぱい買ってたら、花火座って見る場所無くなくなるかもだけどいいの?」



『うん!最悪立って見れば大丈夫でしょ!』



「...あっそ。」


「つか、買う金出すのまさか全部俺じゃないよな?財布、ちゃんと持ってるよな?」



『......てへ?』



「あぁ......」



...


...


...




『あちゃー、やっぱ座れるとこないね。』



「...まぁ、当然っちゃ当然だな。」


「花火あがるまで....もうあと1分もないし。」



『え...ほんとに!?もうそんな時間!?』



「ほんとだよ。今そんな変な嘘つかんわ。」


「ほら、せーの、3...2...1......」




『...』





「...」





『...』





「...」





『...』





「...」





『......』






「......んだよ、急に手なんか握ってきて。」






『...いいじゃん。そういう雰囲気でしょ。』






「......そういう雰囲気ってなんだよ。」




「...花火見んのに集中しとけ。」






『...もう少しこのままでいさせてくれたらね。』






「.......はいはい。」






『......』






「......」







『......』







「......」







『......』







「......」







『...ねぇ、○○。』




「...ん?」





『向こうに行っちゃってもさ。
お祭りの日は...こっち帰ってきてよ。』




『...私、前もって連絡するから。』




「......それは...まぁ...」




「その時、帰ることができたら...な。」






「.........絶対、帰れないんだけど。」


「...ごめん、美月。」





『ん?今ちっちゃい声で悪口か何か言った?』



『ちょうど花火の音で全然聞こえなかったんですけど。』





「......」



「ははは...なんも言ってねーよ。」

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