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歪み愛 2






美空 : 〇〇ー?ご飯の時間だよー?


美空 : ちょっと痛いかもだけど...我慢してね?




美空はそう言って、
俺の口を閉じていたガムテープをはがす。


監禁されてから、今日で多分3日目。


さすがにあの日から
ずっとベッドの上のまま...という訳ではなくて

起きてる時はベッドの足に
トイレやシャワーの時は美空や手すりに

錠を繋がれ、俺は監禁されていた。


持ってたはずの携帯は手元からなくなっていて
誰とも連絡をとることができない。


そのため、外に助けを求めようと声を出したら
口をガムテープで固く塞がれ

そして、反抗できないようにするためか

いつの間にか、強い電気が流れる別の足錠を
片足に付け加えられた。




美空 : はいっ!あーーーんっ!




〇〇 : んっ...ん...




美空 : んー!偉いねぇー?ちゃんと食べれて!


美空 : どう?美味しい?美味しいよね?




〇〇 : ん......ぅん...




美空 : よかったぁー!まだまだいっっぱいあるから、ぜーんぶ美空が食べさせてあげるね!




〇〇 : ......




正直、ご飯の味なんて全くしない。

だから、美味しいかなんてわからない。


けど、それを今の美空に言ったらどうなるのか

試すほどの気力と余裕はなかった。




美空 : んー!いっぱい食べたねぇ?偉いねぇ?


美空 : それじゃあ〇〇?




〇〇 : ん...?




美空 : おやすみー♡




〇〇 : ......ん...




ご飯を食べ終わった途端。
視界が揺れて、ボーッとしてくる。


監禁されてから、これまで何度もあった感覚
次第にまぶたがズンと重たくなっていって...




...


...


...




〈りんご食べてるあやもかわいい!〉



〈もー、しつこい!〉




〇〇 : ん......




隣からの騒がしい声のおかげで目が覚める。


暗い部屋。
口は当然のようにガムテープで塞がれていた。


...いや、今はそんなことどうでもよくて。




〈そんなことより、
みくは〇〇君のこと心配じゃないの?〉




扉1枚挟んで隣の部屋から微かに聞こえる声。

この声は...小川の声だ。


小川は俺や美空と同じサークルの後輩。


少し話を聞いていると

どうやら、俺が大学に来ていないのが心配で
美空のところに相談しにきたらしい。


...その美空のところに
何なら、すぐ隣の部屋に俺は今いるのに。




ドンッ!




けど、これはチャンスだと思った。


つま先を器用に使って、軽く壁を蹴る。


ここで今、
どうにかして小川に俺の存在を知らせれば

あとは小川が
美空をどうにかしてくれるかもしれない。


小川は年下だけど、しっかりした子だし。

それに美空は小川を溺愛していて
小川の言う事は、ほぼ何でも聞くはずだから。




ドンッ!!




〇〇 : んんん!んんんー!んーんん!




だから、小川に気づいてもらえるように
今出せる精一杯の力で壁を蹴って声を出した。




〈今、隣の部屋からなんか聞こえなかった?〉




〈えっ!そう?あやの空耳じゃない?〉




〈ううん。絶対聞こえたよ?ドンッて。〉


〈隣の部屋に誰かいるんじゃない?〉


〈泥棒とか、みくのストーカーとか...〉




〈えー!?そんな怖いこといわないでよー!〉




〈でも、ほら......また聞こえた。〉


〈彩、気になるからちょっと見てくるね。〉




〈えっ!?い、いいよ!美空が見てくる!〉


〈だってもしこの音が幽霊の仕業だったら、
彩が幽霊にとられちゃうかもしれないし!〉




〈なに言ってるの?そんなわけないじゃん。〉


〈あーもう!
いちいちくっつかなくていいってばー!〉




そんな会話のやりとりがあってから扉が開く。

部屋に入ってきたのは...




美空 : ......




美空だった。




美空 : おはよう?もう起きちゃったんだね。


美空 : 薬の効き目が悪かったのかなぁ?




〇〇 : !ん!んん!!




ドッ...




〇〇 : ん""ん"っ......




壁を蹴った途端、ガツンと足から流れる電流。
足がピクピク痙攣して動かせなくなる。




美空 : んもー、暴れちゃだーめ♡


美空 : 彩にバレたらどうするの?




〇〇 : ......




どうするの?なんていわれたって、
こっちとしてはそんなの知ったことじゃない。

むしろ、バレたいが為にやってるんだから。


なんて、そんな美空への反抗心がありながらも
電気のせいで美空への恐怖心もあって


それで俺はとうとう
自分の感情がよくわからなくなってしまった。


すると、心の奥底にある何かが壊れたのか
急に目から不思議と涙が溢れ始め




美空 : あぁー!ごめんね?痛かったよね?ごめんごめん。


美空 : よしよし。大丈夫、大丈夫だから。




それを見た美空は優しく、俺の頭を撫でながら
ギュッと俺の体を抱きしめてきたのだった。




美空 : 痛くしてごめんね?でも、彩にこの事バレちゃったら...美空、彩に嫌われちゃうんだもん。


美空 : だから、彩が帰るまで大人しくできる?大人しくしてたら、美空も痛くしないから。




〇〇 : ......




俺はその言葉に頷くしかなかった。




美空 : んっ!よしよし、いい子だねぇ!


美空 : じゃあ、大人しく待ってて?




〇〇 : .....




美空 : 〇〇?




〇〇 : ...?




美空 : だーいすき♡




〇〇 : ......




美空は耳元で言い放つ。




〈なにしてたの?音鳴らなくなってからも、随分帰ってこなかったけど〉




〈んー、ちょっとした幽霊退治!〉


〈美空が怖い幽霊からあやのこと守ってあげたんだよ?ほめて!ほら、ギューしよ?ギュー!〉




〈やだ!〉


〈あぁもう、ねぇー!しつこいってば!〉




それから、また小川がいる部屋へ
何事もなかったように美空は戻っていった。


俺はこれからどうすればいいのだろうか。


少なくとも
今は何も考えることが出来なかった。

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