おさななじみ。[9→救]
*注
必ず『おさなななじみ。10』を読んでから
こちらの話を読んでください。
もし、あの日
『さくのこと、好きなの?』
なんて言わなければ
もし、違う言葉を言っていたら
さくちゃんと○○はどうなっていたんだろう。
...って、そんなこと
今更、考えたところで意味ないのに。
『......最低だ、私。』
ただの幼馴染のくせに。
この話は
『おさなななじみ。7』から始まります。
賛否両論はあると思いますが
これが最終的な『おさなななじみ。』です。
『よいしょー!』
「はぁ...勝手に人のベッドに飛び込むなよ。」
『ふん、これくらいいい...で...しょ!』
「つか、ベッド俺のだし。そこどけ。」
『...やだ。私がベッド使うし。』
「はぁ?」
「じゃあ、布団は?」
『それは...○○が使えばいいじゃん。』
「はぁ...?まぁ...別にいいけど。」
「んじゃ、電気消すぞ。」
『えっ!もう消すの?』
「いやそりゃ、寝んだから消すでしょ。」
『えー、まだ寝ないで話そうよ。』
「嫌だ。俺、今日の部活で疲れてるし。」
『ちぇっ、つまんないの。』
「言ってろ言ってろ。ほら、消すぞ。」
『ねぇ、○○。まだ起きてる?』
「...はぁ。起きてるよ。」
「っていうか、電気消して5分も経ってないんだから起きてるに決まってんじゃん。」
『...ふふっ、そっか。』
「で、なに?」
『このままでいいからさ。話そうよ。』
『さっきは○○ママとしか話せなかったし。』
「あぁ...はいはい。」
「んで?話すったって何話すの?」
『んー...○○から先に話題決めていいよ?』
「...そっちがふっといて丸投げにすんなし。」
「はぁ......あ、ってかそういや聞いてなかったんだけど、なんで今日うち泊まりにきた?」
『あぁー...今日、お母さんとお父さんの結婚記念日でさ。今年は2人だけで旅行に行ってるから、それで1人で留守番するなら○○の家に泊まらせてもらおうかなって。』
「はーん、そういうこと...。...はっ。
もしかして、1人で留守番できないの?」
『はぁっ?別にそういう訳じゃないし...!』
「ほんとかねー...?」
「...でも、よかったの?俺の家に泊まって。」
『...?どういうこと...?』
「いや、ほら...家に彼氏でも呼べばよかったじゃん。こんな機会ってあんまないだろうし。」
『...』
『......それ、本気で言ってる?』
「......?ん?どういう意味?」
『.........ううん。なんでもない。』
「...?」
『...そういえばさ。明後日のことなんだけど』
『いつも通り6時に来ればいい?』
「明後日?俺、何か約束してたっけ?」
『...夏祭り。毎年一緒に行ってるじゃん。』
「あぁ...」
「ごめん。
俺それ、別の人と一緒に行く約束した。」
『えっ......?』
「いやほら、遥香は彼氏と行くもんだと思ってたから、今年も一緒に行くと思ってなくて。」
『...そっか。そう...なんだ...』
『......』
『...ねぇ......もしかして、さくでしょ?
その約束した人。』
「へっ...?あ、まぁ......うん。」
『...ふふっ。やっぱり。』
『前に2人っきりで買い物行ってたもんね。』
「あぁ...まぁ、そんなこともあったな。」
『......』
「.......?遥香?」
『...あのさ。』
『......』
【○○の好きな人ってさ、どんな人なの?】
「...は?」
「はっ...はぁ...?...んだよ急に。」
『......別に、ただちょっと気になっただけ。』
「......................」
「.......................教えん。」
『...えー......いいじゃん。教えてよ。』
『髪長いとか、背が高めとか、趣味が合うとか
そういうのだけでもいいからさ...』
「.........。」
「...うっさい。......はぁ...ねむ。もう寝る。」
「はい、おやすみ。」
『......ちぇっ、おやすみ。』
...
『おさなななじみ。9→救』
...
「あのさ、今から花火でもやんない?」
『...いいけど、なんで急に?』
夏祭りがあった日の21時。
インターホンから急に呼び出されて。
玄関のドアを開けて外に出てみると
○○が大きい花火セットを持って立っていた。
『っていうか、花火って。
ついさっき、さくと見てきたんじゃないの?』
「あぁー...うん。まぁな?」
「でも、打ち上げと手持ちは全然違うし。」
「それに...遥香に伝えたいことがあるから。」
○○はビリッと袋の下を開けて
細長い棒状の手持ち花火を4本取り出すと
「だから、ん。はい。」
そう言って
取り出した2本のうち、1本を私に渡してきて
「俺の話、聞いてくれ。」
『う、うん...』
持ってきたローソクに火をつけた。
私と○○は手に持った花火の1本を
ローソクに近づけ、先端を火にかざす。
すると、どちらの花火もシューっと音を立てて
先端から勢い良く、火花が散り始める。
『...で?なに?私に伝えたいことって。』
「え...?あぁ......」
○○は花火をじっと見ていたけど
私は○○の言う
"伝えたいこと"の内容が気になって
その場でしゃがんだ後、すぐにそう聞いた。
「俺、さくらに告白された。"好きだ"って。」
そしたら、今日の夏祭りで
さくちゃんに告白されたことを、そして...
「それで、まぁ...」
「断った。俺、他に好きな人がいるから。」
その告白を断ったことを伝えられた。
って...
『えっ...?』
『な、なんで!?』
「ぅあっつ!バカ!こっちに火ぃ向けんなよ!」
『あ、あぁ!ご、ごめん!!』
あまりの驚きで花火を持ってたのを忘れて
○○を見るのと同時に花火を向けてしまった。
でも、確かに今
さくちゃんの告白を断ったって...
「ていうか、なんでって今理由も言ったろ?」
「俺、他に好きな人がいんの。」
『そ、そっか...好きな人...』
「ん。んで、それが...その......」
「遥香なんだよ。」
『......』
『...えっ?い、今なんて......』
「はぁ...だから......」
○○の口から出たその言葉が
私の聞き間違いかと思って聞き返す。
すると、○○は続けて私に言った。
「俺、遥香のことが好きだ。」
聞き間違いじゃなかった。
どうやら 好きらしい。
誰が?誰を?
○○が。私のことを。
○○が、私のことを...?
『......ほ、ほんとに?』
「ん。ほんとに。」
「一昨日さ、うち泊まりに来た時に"俺の好きな人ってどんな人?"って聞いてきたじゃん?」
「それでそん時、一瞬考えてみたら、真っ先に頭に思い浮かんだ好きな人は"遥香"だった。」
「俺、今日の今まで言えなかったけど
ずっと前から、遥香の事が好きだったから。」
『......』
そう...だったんだ......
「...って、ごめん。今更言われても困るよな?
そもそも、遥香にはもう彼氏がいんのに。」
申し訳なさそうに笑いながら
○○は消えた花火を水バケツの中に放り込む。
「...じゃ、俺...帰るわ!
明日からはまた...幼馴染として!よろしく。」
それから、○○は私に向かってそう言った。
『......』
そして、それを聞いた瞬間、私は
その○○の言葉は
今の私への最後の言葉なんだって思った。
私のことを"好きな人"から"好きだった人"へと
そして"ただの幼馴染"へ戻していくための
"好きな人"への、最後の言葉。
多分、このまま何もせず明日を迎えれば
きっと
前みたいな幼馴染に私たちなら戻れるはず。
でも、私は......
『...ちょっ、ちょっと待って!』
帰ろうとする○○を急いで呼び止める。
「ん?どうかした?」
『あ...いや、その......』
『スゥ.........』
『わ、私も........』
『私も○○のことが...好き...!』
戻りたくないんだ、私は。
もう、ただの幼馴染なんかに。
...
...
...
『......はぁ』
朝。ゆっくりと目が覚めて
天井を眺めながら、深く息をはいた。
よく眠ったはずなのに眠れた気がしない。
目の奥がギュッとしててまだ眠い。
そんな時、ドアの向こうから
「ったく、いつまで寝てんだよー?」
「まだ寝てんなら勝手に入って起こすぞー?」
○○の声が聞こえてきた。...って!
『うぇっ!?ちょっ!ちょっと!』
フラつきながらも立ち上がって
部屋に入られないよう扉を全力で抑える。
すると、ドアの向こうから再び○○の声がして
「ははっ!なんだ起きてるんじゃん。」
「じゃあ、俺、下で待ってっから!」
そのあと階段を降りていく足音が聞こえた。
それで少し安心して、一旦ベッドに座り込む。
そして、それから
自分のほっぺたを思いっきりつねってみた。
『いたい......』
ってことはつまり
昨日の夜のアレは絶対に夢じゃないわけで...
『ふふっ...ふへへっ...!へへへっ...!』
嬉しい気持ちが込み上げてきて
自然と口角が上がってニヤニヤしちゃう。
これまでいろいろあったけど......でも.........
やっと...やっと、○○と付き合えたんだ...私。
その時
昨日の○○の言葉を思い出して、ふと思った。
もし、あの日
『○○の好きな人ってさ、どんな人なの?』
って聞かなければ
それかもし、違う言葉を言っていたら
私と○○は今頃どうなっていたんだろう。
って...まぁそんなのどうでもいっか!
だって、今更そんなこと考える必要ないし。
『......よぉーし!』
...
...
...
...
...
...
...
[んーーっ!はぁ...]
たった今読み終えた漫画の最終巻を置いて
背中からベッドへとダイブする。
まさか主人公と主人公の幼馴染のヒロインが
お互いに気持ちを伝えられず
すれ違ったままで終わってしまうなんて。
...ま、何となくそうなる予感はしてたけど。
[......]
子供の頃からずっと一緒にいたから
恋愛的にも好きになった。
子供の頃からずっと一緒にいたから
恋愛的には好きにならなかった。
現実では極たまーにある話。
漫画やアニメの中では、ほんとによくある話。
こと恋愛において"幼馴染"って関係ほど
綺麗に2つに分けられる存在はないと思う。
「和ー?ご飯出来たよー?」
でも、パパとママの場合
パパもママは2人とも珍しく前者だったらしい。
[はいはい。今いくー]
おさなななじみ。→おさななじみ。
[9→救]END。
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