歪み愛 1
『なんで美空のこと好きになってくれないの?美空はこんなに〇〇が好きなのに!』
『美空以外の女と話さないでよ!
連絡もしないで!美空の事しか考えないで!』
『もうさぁ...!いい加減さぁ...!!』
『美空のものになってよ!!!!!』
...
...
...
〇〇 : んん...
眠りから覚めて、ゆらゆら霞む視界。
美空 : おはよう。
そんな中、今日、初めて俺の目に映ったものは
そう言いながら
満面の笑みを浮かべている美空の姿だった。
〇〇 : ...ぁあ、おは......
〇〇 : ...?
...あれ?
起き上がろうとしたら、起き上がれない。
見ると、両手足に金属製の錠がはめられていて
ベッドに拘束されている。
〇〇 : えっと...なにこれ?
〇〇 : ...もしかして、これ美空がやったの?
美空 : うん!
〇〇 : なんでこんなこと...ってか外してよ。俺、大学あるし一度自分の家に帰んなきゃ...
美空 : ううん。外さないよ?それに大学になんて絶対に行かせないし!
美空 : 〇〇は今日から美空の家でずっと過ごすってもう決まってるんだから!
〇〇 : は......?
〇〇 : そんな...なんで......?
美空 : え?だって、昨日言ってくれたよね?
"美空のものになるから"って
〇〇 : っ...そんなこと...!
その時、記憶が少しずつ戻ってきた。
昨日、美空に誘われて
夜、美空の家でサシ飲みすることになった俺。
その飲みの途中で、美空は後輩の小川にいつもやってるような重めな絡みを急に俺にしだして
それで理性がふっ飛びそうになった俺は
その絡みを全力で拒否った。けど、そしたら...
『ねぇ...なんで美空のこと好きになってくれないの?美空はこんなに〇〇が好きなのに!』
『美空以外の女と話さないで!
連絡もしないで!美空の事しか考えないで!』
『...もうさぁ!いい加減さぁ...!!』
『美空のものになってよ!!!!!』
急に泣きつかれながら、大声で言われた。
「わかった、わかったから...!」
「美空のものになるから...一旦、落ちついて」
美空とは何度かサシ飲みしたことがあったけど
こんなふうになったのは初めてで
どうすればいいのかわからなかった俺は
泣いている美空を落ち着かせるためだけに
何も考えず、咄嗟にそう答えた。
すると、その言葉を聞いてか、
美空は泣いていたのが嘘みたいに笑顔になって
サシ飲みは何事もなかったように再開...
って思ってたんだけど、
次、美空が持ってきてくれた酒を飲んでから
俺は、その後の記憶が一切ない。
〇〇 : ...言った。言ったよ?確かに言ったけどさ?でも、あれは...その...なんていうか......
美空 : なに?まさか...
美空 : 美空に嘘ついたの?
〇〇 : へっ...?
美空 : そんなわけないよね?だって、美空の好きな〇〇が美空に嘘つくはずないもん。
美空 : ね?嘘じゃないよね?
美空 : あの時の言葉は本当だよね?
そう聞きながら、
顔を近づけてくる美空の目は笑っていない。
〇〇 : ......ん、う...ん...
手足を拘束されていて
今の美空に何をされるかわからない以上
俺は、その言葉に頷くしかなかった。
美空 : ...はぁ、よかったぁ〜!
美空 : もう!心配させないでよ!
すると、美空はいつもみたいな笑顔に戻る。
美空 : あ、朝ごはん!お腹空いてるよね?
美空 : 美空が作って食べさせてあげる!
〇〇 : いや、ちょっ...ちょっと待って!
そう言って、
部屋を去ろうとした美空を俺は呼び止めた。
美空 : ん?なーに?
〇〇 : お願いだから、手と足のやつ外してよ。
美空 : んー、今はだーめ。
〇〇 : な、なんで...
美空 : えー?だって起き上がる必要ないじゃん!
〇〇 : っで、でも!このままじゃ俺、なにも...
美空 : 何もできなくていいんだよ?
美空 : だって、〇〇はもう美空のなんだもん。
美空 : だから、〇〇のことはこれから美空がぜーんぶやってあげるから心配しないで?ねっ?
言い切った美空は嬉しそうにキッチンに行く。
〇〇 : そんな......
俺は自分に起きたことが受け入れられないまま
ゆっくりと絶望の中へ堕ちていった。
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