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告白罰ゲームから始まる、少し変わった恋。02





「うぉい!今日の主役が来たぞ!」

「はーい、こっち来てお話しましょうね〜?」



次の日の朝、登校するや否や
いきなり肩を組まれて椅子へと座らされた。

話というのはきっと昨日のことだろう。



「で、昨日あの後どうなったんだよ!
なんか2人で手ぇ繋いでどっか行ったろ?」

「告白成功したのか?罰ゲームなのによ!」

「まさか先に童貞卒業してねぇだろうな!?」



次から次へと浴びせられる質問に対し



○○ : はぁ...



俺はため息を1つ返す。
それから、覚悟を決めてその場に伝えた。



○○ : 昨日の告白、あれ成功して...まぁ......

○○ : あの子と付き合うことになった。



「......」

「......」



「......うぉぉぉぉぉ!!!!!!」

「マジで!?マジでか!?やば!!!」

「くそ羨ましすぎだろ!失せろクソが!」



数秒の静寂後、一気に沸き立つクラス。

"彼女が出来た"
それでこれほどクラス全体が盛り上がれるのは
やっぱり、うちが男子校だからだろう。



○○ : ...



...しかし、彼らは知らない。


昨日あの後、俺にあった出来事を。

俺が付き合った"咲月"が
いったいどういう家の子だったかってことを。



...


...


...



咲月 : あれ?どしたの?入んないの?



その場に立ち尽くしてしまっている俺に
振り返って、そう言ってきた彼女。

その奥には【御籤會  菅原】の表札が見える。

絶対、確実にヤク○の家の...それ。



○○ : ......んっ、んぅ...



俺、本当にここに入っていいのだろうか...?
入ったらヤバいことになるんじゃ...

てか、送ってくって話だったから
別に無理して入らずに帰ってもいいんじゃ...

そんな感じで
入るか入らないか、もたついているうちに...



[おっ!咲月ちゃん、おかえりなさい。]

[今日も学校 楽しかったかい?]



咲月 : あ!うん!楽しかったよ〜!

咲月 : あ、今パパ家にいる?



[いや。総會長なら出かけてるよ。]

[私ら夜まで家にいるよう頼まれてるから
きっと帰りは遅いんじゃないかな。]



咲月 : ん。オケーイ!



強面の男2人がこっちに来てしまった。

すると...



[あぁ?おい!さっきから何見てんだよ!
お前みたいのがこの家になんか用あんのか?]



○○ : っ......



2人のうち1人が俺に気づいて声を浴びせる。

同じ人間なのになんという迫力なんだろう。
怖すぎて、正直 今にも腰が抜けそうだ。



咲月 : あー!ちょっとちょっと!

咲月 : 私の彼ピ いきなり脅さないでくれる?



[は?っと...咲月ちゃん、今なんて?]

[か、か、か、か、彼ぴ...?]



咲月 : そっ!こちら私の初彼氏でーす!ねっ?

咲月 : いぇい!



そんな俺の様子を見てか
咲月は俺の方に戻ってきて腕を絡ませ言った。

そして、その勢いで
一緒に家の敷地内の方へ進んでいく流れに...



[お前、マジに咲月ちゃんの彼氏なんか?]



○○ : は...はい...一応......



[な、なんだと...]



咲月 : もー!いいから!ほら 行こ?



腕を絡まれているせいで
歩みと共に強制的に奥へ奥へと進んでいく。

そうして、気がつけば
いつの間にか家に上がり込んじゃっていて

畳の大広間の座布団の上に座っていた。



咲月 : あ!なんか飲み物でも飲む?



○○ : え、あ...う、うん。



咲月 : ん!じゃあ持ってくるから待ってて?



○○ : え......


○○ : あ、ならやっぱいらな......

○○ : い......



こんなとこで1人になるくらいだったら
飲み物なんて別に要らん要らん。

その事に気づいて彼女に声をかけようとしたが
時はもう既に遅し。

彼女は飲み物を取りに
台所かどこかへ小走りでいってしまっていた。


で、そうなると......



[おい、お前 名前と通ってる学校言えや。]

[なに咲月ちゃんに手ぇ出してんだガキ。]

[お前 今日ただで家に帰れると思うなよ。]



こうなっちゃうわけで....。

右に左に真ん前。

彼女がいなくなったら急に
門前とは別の強面3人に囲まれてしまった。



[なんか言えや。耳 聞こえてねぇのか?]



○○ : っ...



いや、ばっちり聞こえてます。
聞こえてますけども...どうすればいいんだよ。

何か反応しなきゃヤバいのはわかってる。
でも、半端に反応したらヤバいのもわかる。

だから俺に今 出来ることと言えば
彼女が早く戻ってくるのを願うことだけで...



[おい 若いの3人。お前らそこで何してる?]



急に一段と低く重い声がして、その方を見る。

そこには門前の2人やこの3人と
明らかに雰囲気か何かが違う男が立っていた。



[っあ!中西のアニキ!お疲れ様です!]

[お疲れ様です!]

[お疲れ様です!]



中西 : ん。で、何してんだ?



[い、いやぁ〜!この男、咲月ちゃんが彼氏だって連れてきたもんで話しかけてたんすよ!]



中西 : 咲月ちゃんの彼氏...だと?その男が?



[はい!らしいです!]



中西 : ほう......



その男はゆっくりとこちらに歩いてくる。

すると、強面3人はその男に場所を譲るように
俺のところから少し退いた。

そして、男は俺の目の前にしゃがみこみ...



中西 : お前...名前は?



俺に名前を聞いてきた。



○○ : っ......っお、小川○○です...



すぐに答えなきゃ何かヤバい感じがして
強面3人の時とは違い、すぐ問いに答える。



中西 : ...そうか。○○か。で

中西 : 咲月ちゃんの彼氏だって話は本当か?



○○ : は、はい...



中西 : ...お前、家族は?



○○ : ...ち、父と母と...あと妹が1人います......



中西 : 親は何の仕事してる?



○○ : ...っと...父も母も海外のデザイナーです...



中西 : ...?父親も母親も海外のデザイナー?

中西 : じゃあ今、海外で仕事してるのか?



○○ : ...は、はい......



中西 : ってなると、お前は今 お前とお前の妹の2人で家に暮らしてるってことでいいんだな?



○○ : っそ、そうです...



中西 : そうか......



どうやら、問いかけが終わったようで
男はゆっくりと立ち上がる。



中西 : はぁ...



それから
ため息をつくと俺に向かって言った。



中西 : 悪いがお前、咲月ちゃんとは別れろ。



○○ : えっ......



思いもよらない一言に言葉を失う。
そんな俺を見ながらも、男は言葉を続ける。



中西 : うちは見ての通り、筋金入りの○クザでな。でもって 咲月ちゃんはこのヤク○の頭である総會長の一人娘なんだ。

中西 : それ対して、お前はカタギの人間。
考えればわかるだろ?住む世界が違うのさ。



○○ : ......



中西 : それにこれは お前の為でもある。

中西 : ヤ○ザの娘...特に総會長の娘と付き合っているとなれば、お前自身や家族...妹に他の組の汚ぇやつらが何をするかわからねぇ。

中西 : 見たところ、お前は腕っぷしにそこまで自信があるわけでもないんだろう?

中西 : だから 別れな。互いのために。



○○ : ......



何も言い返せない。言い返せることもない。
その男の言葉はまさに正論だった。

加えて、それは俺自身も思ってたことだった。

この家に来る前と今とでは、俺と咲月の
住む世界の違いってやつをかなり実感してる。


咲月と付き合うことで、少しでもこの世界に
ヤク○の世界に足を踏み入れてしまうのなら

そして、そのせいで家族を...
妹を危険にさらしてしまう可能性があるのなら


俺は...



中西 : その顔は...理解ってくれたみたいだな。



○○ : ......



中西 : ならもう帰れ。家には二度と来るな。

中西 : あの子には俺から伝えとくからよ。



咲月と付き合わない方がいい。別れるべきだ。



○○ : ......



○○ : ......



○○ : ......っ



でも...本当にそれでいいのか?


俺は本当に咲月と別れるべきなのか?

こんな あまりにも一方的に?


そう思ったら 自分でも言い表せない感情が
腹の奥から せり上がってきて



○○ : ...あ、あの......!



中西 : ん?なんだ。



話を終え、どこかへ行こうとしたその男を
俺は何故か呼び止めていた。



○○ : ......スゥ...ふぅぅ.........



そして、ゆっくり深呼吸してから
俺は その男に対して言ってしまったのだ。



○○ : ...や、やっぱり!

○○ : 俺、まだ別れたくないです。咲月と。



中西 : ......



[あぁ!?てめぇ何言ってんだガキが!]

[別れるって話だっただろうが!]

[中西のアニキの話聞いてなかったのか!?]



強面の3人からは激昂した声があがる。

しかし、男は手の動きで3人の声を黙らせると
俺の胸元をグッと掴み、顔を寄せて言った。



中西 : なら お前、今から妹捨ててこい。んで、これからの人生も全て捨てて うちの會に入れ。

中西 : それなら、俺は億歩譲って お前と咲月が付き合うのを応援してやってもいい。

中西 : 逆に言えば話はそれからだ。



○○ : っ......



そんなこと 出来るわけがない。

妹を捨てるなんてことも、
これからの人生全てを捨てるなんてことも。


しかし、"そんなこと出来るわけがない"
...ってことをわかっているからこそ

わざわざ そう俺に言ってきているんだろう
ある種の脅しみたいに...



○○ : ...ざけんなよ.........



中西 : ...?お前、今なんて...



○○ : ふざけんなよっつったんだよ!


○○ : 初めての強面ヤ○ザとその家にビビって大人しくしてりゃあ こっちの事なめやがって!

○○ : 妹も、これからの俺の人生も、んな簡単に捨てれるわけねぇだろうが!

○○ : それで捨てれないなら咲月と別れろだ?何様だ!ふざけんじゃねぇ!

○○ : そもそも 高校生の恋沙汰にそういう親の事情だの何だのを含めて話してくんな!


○○ : 咲月が総なんとかの娘なんて関係ねぇ!


○○ : 外野は黙って大人しく見守ってろ!



○○ : っはぁ..はぁ...はぁ.....はぁ......



○○ : あ......



言いたい事を言い終えてから
今、自分が何を言ったか気づいてハッとする。

しかし、強面3人と男は面を食らったらしく
ポカンとした様子で呆気にとられていた。


そして、そんな状況になってしまってから
ようやく俺の願いは通じたのか...



咲月 : おまたせー!


咲月 : やーもう、ちょーどジュース切らしちゃっててさぁ!麦茶になっちゃった!


咲月 : って、あれ?

咲月 : なんでアルパパと3人がここに?



両手に麦茶の入ったグラスを持った彼女が
この部屋に戻ってきたのだった。


彼女の声を聞いてか
強面3人と男は急に正気に戻ったようになる。

ただ、さすがに
彼女の前ではさっきまでの態度を取れないのか



中西 : なに、咲月ちゃんが男を連れてくるなんて初めてだから 彼と少し話していたんだよ。



[そ、そうだよ!咲月ちゃん!な?]

[お、おう!]

[だよな!]



急に猫を被ったような感じで話をし始めた。



咲月 : ...ふーん?

咲月 : じゃあ私 今からちょっと○○と2人になりたいので、他の部屋 行ってもらえません?



中西 : ...それはいいが 咲月ちゃん、こんな時間まで彼を付き合わせていいのかい?

中西 : もうとっくに18時を過ぎてるよ。

中西 : そろそろ総會長が戻るはずだ。


咲月 : ...!

咲月 : じ、じゃあ!ほんとちょっとだけ!

咲月 : ほんとにちょっとだけ...いい?○○?



○○ : え、あ、あ...うん。



咲月 : ってことなので!



中西 : ......ふぅ。おい、若いの3人。行くぞ。



[[[は、はい!]]]



男と強面3人はあっさりと部屋を出ていく。
そうして、大広間は俺と彼女の2人になった。



咲月 : はい、お茶。



彼女から 麦茶のグラスを渡される。



○○ : んっ..!



さっきのこともあって妙に喉が乾いていた俺は
渡された麦茶をそのまま一気に飲み干す。

冷たいからか めちゃくちゃ味が薄く感じた。



咲月 : ..っははは!

咲月 : ごめんごめん!まさかそんなに喉乾いてるなんて思ってなかったから!



○○ : あ...あぁ〜.....あぁ...ちょっとね...

○○ : ごめん、ありがと...ごちそうさま。



咲月 : ふふっ、どういたしまして。


咲月 : ......


咲月 : ...私の家 来てさ びっくりしなかった?



○○ : へ?あぁ...めちゃくちゃびっくりした



咲月 : はははっ!だよね〜......!

咲月 : 私の家 特殊?っていうかなんていうか...

咲月 : "普通"じゃないじゃん?


咲月 : ...だから 後悔してない?
今日 私なんかに告白して付き合ったこと。



○○ : え...?



今までの笑顔から一変して、急に真面目な顔で
そんなことを言ってくる彼女に戸惑う。けど...



○○ : 後悔なんてしてないよ。



その言葉は自分でも驚くほど早く口から出た。



○○ : まぁそりゃあ...家のことは少し...いや、だいぶ結構かなりめちゃくちゃ驚いたけど...

○○ : でも それも告白して咲月と付き合えなきゃ知ることなんてできなかっただろうし?

○○ : そう考えたら 告白して付き合えたことで咲月のことをもっと知れたってことだから。



○○ : だから、後悔なんてしてない。全く。



っていっても 正直 その言葉は嘘に近い。

だって めちゃくちゃ怖かったし
ヤク○となんて本来関わりたくないんだから。

でも、今の彼女の顔を見て
"後悔してる"なんて俺には言えなかった。



咲月 : ...ほんとに?



○○ : うん。ほんとに。



きっと この家のことで
彼女自身 苦しい思いをしてきたんだと思う。

だから

俺の一言で苦しめてしまう可能性があるのなら
俺の一言で少しでもその苦しさを無くせるなら

俺は後悔なんてしてなかったことにしよう。
って、そう思った。



咲月 : ...そっか。なら...よかった!


咲月 : あ!めっちゃ話変わるんだけどさ、明日 よかったら一緒に学校行かない?

咲月 : 私と○○ せっかく学校近いんだし。



○○ : あ、ぁ...それはごめん。俺、妹いてさ。朝は途中まで妹と行くことになってるから。

○○ : それに意外とここ 俺の家から遠いし...



咲月 : そ、そうなんだ...なら 仕方ないか〜...

咲月 : ん〜 じゃあ、帰りは一緒に帰ろ?家遠いなら、途中まででもいいし。



○○ : うん。じゃあ帰りは一緒にってことで。



咲月 : うん!



そうして、明日一緒に帰る約束をして
俺は彼女の家から無事帰宅したのであった。



...



...



...



[おい?○○?おーい?]



○○ : ......んぇ?あ?ん、ん?



[なに賢者タイムみたいにボーッとしてんだ?
今、放送なって職員室にお前呼ばれてたぞ。]



○○ : へ?え?ま、マジ?なんで?



[いや、それは知らねぇよ。
でも、なんか親が来てるだとかなんとか?]



○○ : 親?んなわけないんだけど...



だって 俺の親...どっちも海外にいるんだし。
帰ってくるって連絡は来てない。



○○ : 聞き間違いじゃないの?



[いや、マジで呼ばれてたって。んな?]

[あぁ。いいから職員室行っとけよ。
これで俺らの聞き間違いならパン奢っから。]



○○ : ...そこまで言うなら 行ってくるよ。



教室を出て、職員室へと向かう。

そしたら本当に呼び出しを食らってたらしく
先生に応接室へと案内された。


でも、その応接室の中いたのは親じゃなくて...



[おう...やっと来たか。]



中西 : ○○。



昨日、咲月の家で会った男だった。




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