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おさなななじみ。4



「ん......あっっつ......」




目が覚めたら、すぐにエアコンをつける。

すると、冷風が出てきて
8畳ほどの部屋はすぐに涼しくなった。


時計を見ると時刻は既に10時過ぎ。

しかし、学校に遅刻する...と焦る必要はない。


なぜなら、うちの高校は先週から

"夏休み"に入ったからだ。


...とはいえ、
夏休みだからって何があるわけでもない。


特に今年は

『いつまで寝てんの?遊びにきたんだけど?』

そう言って、いきなり起こして
部屋に居座ろうとする幼馴染がいないから

部活周りの事以外で何かする事はないだろう。



天井を眺めながら、そう思っていた矢先。



スマホから着信音がなった。


何を期待しているわけでもないが
震えているスマホをすぐとって、確認する。




画面上には【さくら】と表示されていた。




...


...


...




「ごめん。待った?」




『ううん...!さくもさっき来たとこ...!』




電話で誘われ、電車に揺られ
目的地である図書館の前で待ち合わせ。

どうやら、ここは最近出来た図書館らしく
1人で行くのが心細かったんだとか。


待ち合わせの5分前に着いたはずなんだけど
既にさくらは待っていて

そして、さくらは何故か
わざわざ、暑い外の方で俺の事を待っていた。

待ってるなら中で待ってればよかったのに。




『じ、じゃあ...入ろ?』




自動ドアが開いて、さくらと中に入る。


館内は冷房が効いていて、ひんやりと涼しく
人がかなりいるはずなのに、驚くほど静か。

暑くて騒がしい、今の季節とは真逆。

まるで、オアシスみたいな場所で
さくらの誘いにのって来てよかったと思った。


一方、そのさくらはというと

3階までズラリと綺麗に並ぶ本棚を見回して
子供のように目をキラキラと輝かせていた。




「...ははっ。」


「俺、2人分の席とっとくからさ。
さくらは先に読みたい本探してきていいよ?」




『えっ...!い、いいよ...!悪いし...』


『それに...』




「それに?」




『せ、せっかく2人で来たから、2人で少し見て周りたいなぁ...って......』




「あぁ...」




そういや、1人で行けないからって理由で
俺のことを誘ってくれたんだったっけ。




「じゃあ、一緒に席取りにいこ。」




『うん...!』




入り口近くにあった館内案内図を見てから
2人で読書・自習スペースを探す。


夏休みだからか、ほとんど席は埋まってたけど

運良く、端っこの
向かい合う席を確保することができた。


それから、さくらと館内をぐるぐる回って


さくらは自分が読みたい本を手に取り

普段あまり本を読まない俺は、
さくらがおすすめしてくれた本を手に取った。


そして、お互いに席につき、読み始める。




「......?」




本を読んでいる途中、ふと視線を感じて
目線を本から少し上げてみると




『...//』




一瞬、さくらと目が合った。

けど、目が合った瞬間
さくらは読んでた本を上にあげて目をそらす。


何か気になることでもあったのか

こっそりとスマホを使って
「どうかした?」って聞いてみたら、すぐに

『おすすめした本、面白いって思ってもらえるかどうか不安だったから気になっちゃって』

って、返ってきた。


心配性なさくららしい。
もっと自信持ったらいいのに。


「面白いよ」「おすすめしてくれてありがと」

さっきの言葉にそう返すと
『うん!』と一言だけ、さくらから返ってきて
そして、さくらは目を細めて笑顔を見せた。


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