おさなななじみ。1
子供の頃からずっと一緒にいたからこそ
恋愛的に好きになった。
子供の頃からずっと一緒にいたからこそ
恋愛的には好きにならなかった。
こと恋愛において、"幼馴染"というものほど
こうも二極化されてしまう存在はないと思う。
『はいこれ。〇〇に。』
そして、俺達の場合
俺は前者で、遥香は後者だった。
部活で忙しかった土曜に比べて
することもなければ、
したいこともなかった、そんな虚無の日曜日。
夕方6時過ぎに
急に、インターホンが鳴って出てみたら
そこに立っていたのは"幼馴染"で
水色のイルカのキーホルダーを
昔から見慣れた、ニコニコ顔で手渡された。
「ん、なにこれ?」
『今日のおみやげ。』
「...?今日のって?なんの?」
『なんのって、この前服買いに行った時に言ったじゃん。✕✕君と水族館行くって。それの。』
「あぁ...」
そう言われてから、朧気ながらに思い出した。
そういや、あの日は確か...先週の木曜日
いきなり買い物に誘われたから
わざわざ部活をサボって一緒に行ったっけ。
んで、その服屋に向かう途中で
「何買うの?」って聞いたら
『新しい服』って答えが返ってきて
「帰宅部の出不精のくせに?」ってイジったら
『昨日、✕✕君に告白されて付き合ったから』
『...それで日曜日、✕✕君と水族館に行くための新しい服が欲しいんだよね。』
って、彼氏が出来たことと日曜にその彼氏とデートに行くことを同時に告白されたんだった。
その後は、もう正直あんま覚えてない。ただ...
『これ、どう...?変じゃない...よね?』
って言いながら
新しい服を身に纏い、試着室から出てきた遥香を見て、息が苦しくなったのは覚えてる。
今思えば、彼氏と買いに行きゃよかったのに。
ま、遥香のことだから
そこら辺は考えずに俺を誘ったんだろうけど。
なんたって、
遥香にとっての俺は"幼馴染"なんだから。
所詮、ただの"幼馴染"止まりなのだから。
「確かにそんなこと言ってたな。」
「まあ...ありがたくもらっとく。」
デートにお土産も何も無いだろ。
ていうか、いらねーよ。
そう思いつつも、キーホルダーを受け取る。
すると、遥香はいっそう笑顔になって
『じゃ、また明日〇〇!学校でね!』
そう言って、すぐに自分の家へ帰っていった。
でも、その後、俺は
貰ったキーホルダーを部屋のゴミ箱に捨てた。
そのキーホルダーを見ると
自分が惨めに思えて仕方なかったから。
小学4年生から高2の5月までの初恋は失恋。
遥香への気持ちと共に投げ捨てた。
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