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歪み愛 6






桜 : んーっ...!んわぁ...ぁぁ...っ...




ぐっと背伸びをして、あくびをする彼女は
眠たそうに目をこする。

テーブルの上にあったデジタル時計を見たら
時刻は既に午前2時過ぎ。

彼女が...というより
普通の人が眠くなるのは当然の時間帯。




桜 : 桜、もう眠たいから寝るね?


桜 : あ!〇〇くんはどうする...?




〇〇 : え、あ...っと、俺は......




薬で強制的に眠らされていたからか
感覚が昼夜逆転してて、あまり眠たくはない。

でも、今は身体的にも精神的にも疲れていて
少しだけ横になりたいとは思った。


だから...




〇〇 : 俺も寝ようかな。んと、どこで寝たら...




すると、そう答えたら桜は笑顔になって




桜 : じゃあ、桜のベッドで一緒に寝よ?




なんて、急にそんなことを言い出してきた。




〇〇 : な、へっ...?い、一緒に!?




桜 : うん!だって、桜の家のベッドおっきいから桜と〇〇くんの2人でも寝れるし!




〇〇 : い、いや...でも、さすがにそれは......




桜 : ...?


桜 : もしかして〇〇くん、桜と寝るの嫌?




〇〇 : や、えっ...と......別にそういう訳じゃ...!


〇〇 : ただ...その...ほら、まだそこまでお互い距離が近くないっていうか...なんというか...




桜 : ......




〇〇 : あ...あと、それに血!もし包帯ズレてベッドに俺の血がついたら申し訳ないから...!




桜 : ......


桜 : ...そっか!じゃあ、今日は桜1人で寝るね。


桜 : リビングで寝るなら、ソファとクッション使っていいよ?




〇〇 : う、うん...!ありがと...。




桜 : じゃあ、おやすみ!...の〇〇くん。




〇〇 : お、おやすみ...!




そうして、
彼女は寝室と思われる部屋に入って行った。




〇〇 : はぁ...




彼女がいなくなって、リビングに1人になって
ようやく緊張感が解けて、力が抜ける。


家主が寝たのに
電気をつけとくのはさすがに申し訳なくて

だから、
俺は数分後に電気を消して横になった。




〇〇 : ......




にしても彼女、やたらと距離が近いような...


彼女が入ってった部屋の方を見ながら思う。


彼女が俺と出会ったのは去年...って聞いた。

けど、今日まで多分それ以降1度も
会ったことも、話したこともなかったはず。


なのに、どうして彼女はあそこまで...




〇〇 : ......はぁ。




...余計なこと、考えるだけ無駄か。


そう思って、
窓側を向くよう寝返りをうって目を閉じた



その時だった。


どこからか変な視線を感じて、目を開けて。


カーテンの隙間から見える窓の外を見ると
そこには...




〈みーつけたっ!〉




ベランダに立っている美空の姿が見えた。


そして、ガシャンッ!という音と共に
窓ガラスを叩き割って美空は中に入ってくる。




〈もー!ダメだよ?美空から離れちゃ!〉


〈ほら、美空の家に帰ろ?〉




〇〇 : な、なっ...!




どうして美空がここに?

さっき帰ってったって、桜が...!


あまりの恐怖で腰が抜けて立てない。

でも、どうにか逃げようと
這いつくばりながらも距離を取ろうとしたら




〇〇 : ぅあ""っ...!!




まだ足首についてた錠から電気が流れた。


痛みか痺れかなにかで全く動けなくなる。

その隙に美空は俺の上に跨って...




〈ねぇ、なんで?なんで逃げようとするの?〉




なんて、笑いながらそう聞いてきた。




〈〇〇が言ったんだよ?〉


〈美空のものになるって!〉


〈なのに...なんで?〉




〇〇 : っ...それは......




思ってなかったから。

あの時、あの場で
美空を落ち着かせるために言った一言。

その、たった一言でまさかこうなるなんて。




〇〇 : ......ごめん。




〈......〉


〈...なにが?〉


〈まさか...美空に嘘ついてたの?〉




〇〇 : ......




〈...嘘だ〜!
だって〇〇が美空に嘘つくはずないもん!〉


〈ね?そうだよね??ね???〉




〇〇 : .........っ




〈......じゃあ、もう嘘でもいいよ!〉


〈嘘でもいいから、一生美空のそばにいて?〉




〇〇 : ......




〈それが嫌なら...〉




〇〇 : っぁ......!




美空の手が伸びてきて俺の首をグッと絞める。




〈嫌でもそばにいてもらうから!〉




〇〇 : っ...は......!




息ができなくなって苦しくなる。

どうにかしなきゃ。


首から美空の手を離そうと美空の手を掴んだ。

けど、力が強すぎてビクともしない。


美空のバランスを崩すために暴れようとした。

けど、体が固められたように動かない。




〇〇 : た......すけ...て...


〇〇 : さ...く.........ら......




相当大きな物音がしてるはずなのに
桜は眠ったままのか、起きてくる気配はない。


もはや万事休す。打つ手なし。


次第に何も考えられなくなってって

聞こえてくる美空の声は遠くなっていって




〈安心して〇〇。美空もすぐにいくからね。〉




その言葉だけはっきりと聞こえたあと

視界がプツンと切れた。






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