おさなななじみ。7
『よいしょー!』
ぼふっ...と、遥香は俺のベッドに飛び込む。
「はぁ...勝手に人のベッドに飛び込むなよ。」
『ふん、これくらいいい...で...しょ!』
それから、枕を俺に投げつけ
遥香はエアコンをピピピッとつけた。
ここは俺の部屋なのに
あたかも自分の部屋かのように遥香は扱う。
けど、これが不思議と嫌な感じはしない。
むしろ懐かしい感じがする。
なんやかんや夜飯の時間を経て
多分、2ヶ月前は当たり前だった"幼馴染感"が
元に戻ってきたのだ。......と思う。
「つか、ベッド俺のだし。そこどけ。」
『...やだ。私がベッド使うし。』
「はぁ?」
「じゃあ、布団は?」
『それは...○○が使えばいいじゃん。』
「はぁ...?まぁ...別にいいけど。」
「んじゃ、電気消すぞ。」
『えっ!もう消すの?』
「いやそりゃ、寝んだから消すでしょ。」
『えー、まだ寝ないで話そうよ。』
「嫌だ。俺、今日の部活で疲れてるし。」
『ちぇっ、つまんないの。』
「言ってろ言ってろ。ほら、消すぞ。」
照明の紐を2回ほど引っ張って電気を消す。
そして、布団の上に寝転がる。
目を閉じれば徐々に睡魔がやってきた。のに
『ねぇ、○○。まだ起きてる?』
その声が睡魔を払ってしまった。
「...はぁ。起きてるよ。」
「っていうか、電気消して5分も経ってないんだから起きてるに決まってんじゃん。」
『...ふふっ、そっか。』
「で、なに?」
『このままでいいからさ。ちょっと話そうよ。』
『さっきは○○ママとしか話せなかったし。』
「あぁ...はいはい。」
拒否したってどうせ話しかけてくるはず。
なら、もう普通に受け入れた方がいいと思って
遥香のその提案を受け入れた。
「んで?話すったって何話すの?」
『んー...○○から先に話題決めていいよ?』
「...そっちがふっといて丸投げにすんなし。」
「はぁ......あ、ってかそういや聞いてなかったんだけど、なんで今日うち泊まりにきた?」
『あぁー...今日、お母さんとお父さんの結婚記念日でさ。今年は2人だけで旅行に行ってるから、それで1人で留守番するなら○○の家に泊まらせてもらおうかなって。』
「はーん、そういうこと...。...はっ。
もしかして、1人で留守番できないの?」
『はぁっ?別にそういう訳じゃないし...!』
「ほんとかねー...?」
「...でも、よかったわけ?俺の家に泊まって。」
『...?どういうこと...?』
「いや、ほら...家に彼氏でも呼べばよかったじゃん。こんな機会ってあんまないだろうし。」
『...』
『......それ、本気で言ってる?』
「......?ん?どういう意味?」
『.........ううん。なんでもない。』
「...?」
『...そういえばさ。明後日のことなんだけど』
『いつも通り6時に来ればいい?』
「明後日?俺、何か約束してたっけ?」
『...夏祭り。毎年一緒に行ってるじゃん。』
「あぁ...」
「ごめん。
俺それ、別の人と一緒に行く約束した。」
『えっ......?』
「いやほら、遥香は彼氏と行くもんだと思ってたから、今年も一緒に行くと思ってなくて。」
『...そっか。そう...なんだ...』
『......』
『...ねぇ......もしかして、さくでしょ?
その一緒に行くって約束した人。』
「へっ...?あ、まぁ......うん。」
『...ふふっ。やっぱり。』
『前に2人っきりで買い物行ってたもんね。』
「あぁ...まぁ、そんなこともあったな。」
『......』
「.......?遥香?」
『...あのさ。』
『さくのこと、好きなの?』
「...は?」
「はっ...はぁ...?...なんだよ急に。」
『......どうなの?』
「......................」
「.......................わからん。」
『......ふふふっ。否定はしないんだ。』
『...さく、可愛いからさ。もし好きなら、他の人にとられないように気をつけなよ?』
「...うっせ。......はぁ...ねむ。もう寝るわ。」
「はい、おやすみ。」
『......うん。おやすみ。』
「......はぁ」
エアコンの音だけが鳴る、静かになった部屋。
さっき遥香と話してたことが頭に残り
結局すぐには眠れずに、天井を眺めていた。
"さくのこと、好きなの?"
"わからん"
遥香にはさっきそう答えた
でも正直、ただ好きか嫌いかの2択なら
俺はさくらのことが好きだ。
けど、それが
俺が遥香に思っていた"好き"と同じなのか。
そう聞かれたら、多分それは違くて。
だから、まだ...まだ、自分でもわからない。
俺はさくらのことがどう"好き"なのか
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?