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夏、余り、嘘、ほんと.6






「...先生。
俺って実際あとどれくらいなんですかね。」




『......。ん?どうかした?』


『せっかく外出許可も出したのに、随分早く帰ってきたと思ったらそんなこと聞くなんて。』




「あっ...あー、いや。
ちょっとだけ...今ふと気になっただけです。」


「...何となく
俺っていつまで生きてられるんだろ...って。」




『...そう。』


『......そうね。』


『医者として、そういうことを患者の君に何度も伝えるのは本来ならNGなんだけど...』


『それでも君は知りたい?』




「......っ...まぁ、はい。」




『......じゃあ
君の要望に応えて、濁さずに伝えるけど。』




『私の見立てだと、〇〇君、君は...』




『もって、あと3ヶ月。』




......


......


......





『はぁぁぁ〜...かっこいいなぁ、先輩。』




「え〜どれ?どの先輩?」




『ほら、あそこ!
今ちょうどリバウンドしてボール持ってる!』




「あ〜......そう?どこら辺が?」




『いやもう全体的に?具体的に言えば顔。』




「顔...?顔ねぇ...。ふ〜ん......」




『......はぁ、はいはいはいはい。どぉーせ?
あんたはあの幼馴染しか眼中にないもんね。』


『それにしても
よくまぁそんなずっと好きでいられるわな?』




「え〜?そう?」




『おん。だってさぁ...
10年以上の片想いがぽっと出の女子に負け。』


『その子と急に別れて自分にチャンスが回って来たと思ったら、愛しの彼はまさかの海外へ。』


『唯一繋がりであるLiNEも
今は一日に1回、返ってくるかどうかの頻度。』


『なーんて、こんな清々しいほど幼馴染負け戦ムーブかましてるのにまだ好きなんでしょ?』




「ん...まぁ......うん。」




『はっ!はぁ〜変なの!てか普通
片想いなんて5年も続かないかんね?』


『しっかし...なんで10年以上も片想いし続けてるくせにあんたから告白しなかったわけ?』




「えぇ?それはだって...フラれるの怖いし......」


「もしフラれたら次からどんな顔で話しかければいいかわかんなくなっちゃうじゃん。」




『はぁ...でも、告んなきゃ 片想いから次に進まないってのは美月もわかってんだよね?』




「......うん。」




『じゃあ、どうすればいいと思う?』




「...どうすればいいの?」




『はぁぁ...今すぐ!電話で!告白!でしょ!』




「......えぇ〜...それは流石に無理だよ。」


「それが出来るなら今日まで拗らせてないし。」




『はぁ...ま、それもそっか。
てか、拗らせてる自覚は一応あったのね。』




「うん......」




『......』




「......」


「......」


「.........てゆーかさぁ!
よく考えてみたら〇〇の方が悪くない!?」




『ふへっ?なに?いきなり急に。』




「いや...それはだってさ?
告白はしてないよ。告白はね?でもさぁ!」


「小、中、高、わざわざ登校時間合わせて?
それで一緒に学校まで行ったりしててさ?」


「一緒に家でご飯食べた事だって何回もあるし?
一緒の部屋でお泊まりもしたこともあるし?」


「最近の話だと、夏祭りとか?今年は一緒に行って、何なら手まで繋いだのに...。」


「どーしてこれで何も起こらないわけ!?」


「〇〇以外の何をしたわけでもない人には
これでもかってくらい告白されるのにさぁ...!」




『んえーっ...?......あぁー...まぁ......うん!』


『...正直、言葉を選ばずに言うとそれって
そもそも恋愛対象として見られてないんじゃ...』




「あ?なんか言った?」




『えっ?や、あ、ううん!
あんたの幼馴染、意外とシャイなんだなーって!』




「シャイ?あー、確かに。そういうとこあ




[うぉぁ!あぶない!!よけろ!!!!]




『へっ?』




...


...


...




[で、急にバスケットボールが飛んできて
ちょうど後頭部に激突したと。]




「はい...」




『フフッ...』




「いや、全然笑い事じゃないし。」




『うん、そうだね...プフフッ......!』




[はぁ...どれ、氷嚢やるからまず冷やしな。]


[それと、あなた何年何組の誰?]




「へ?あぁ、2年3組の山下美月です.....」




[それじゃ山下さん
あなた今日はもう下校して病院行きなさい?]


[頭の怪我は万が一、何があるかわからない以上、学校でそういう決まりになってるから。]


[お家の人で今連絡とれる人いる?]




「あー、今はちょっと......」




『あ、じゃあ!
うちが美月と一緒に病院まで行きますよ!』


『ちょうど帰り道に病院の前通るんで!』




[そ。なら、そうしてもらって。]


[担任の先生には私から連絡しておくから。]




『はーい。』


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