ピーター・ドイグの油っぽさは、かえって新しい。

画像1 国立近代美術館は、いつもゆったり見ることが出来て、好き。全く知らないイギリス人のピーター・ドイグの初の大規模個展のチラシで、この作品を見て何故かいきなり好きになっちゃった。この時代に油絵で新しい世界を切り開くことはとても困難だと思うけど、彼はいとも簡単にやっているような感じがする。夢の中のような、遠い記憶のようなタッチ。彼の頭の中の風景をキャンバスにコラージュしていくような感じで、見ているとふわふわした気分になってくる。細かい部分を見るのも、お楽しみ。カラフルな煉瓦(?)も一つ一つ微妙な色が皆かわいい。
画像2 そして会場で一番好きになっちゃったのが、この作品。もう…私の大好きな「赤」じゃないか。しばらくこの絵の前で動けなくなってしまったくらい。キャンバスを横に三分割したような手法で描く作品が多いとのことだけど、そのバランスが見ているこちらを落ち着かせる効果もあるのかな? 下の方の赤に激しく心を動かされ、上の方の輝く空の不思議な色使いに目を奪われ、その後も何回もこの作品の前に戻って来てしまいましたとさ。
画像3 こんな感じのイラストっぽいのもある。心がざわつきそうになるけどやはり塀のようなものが分割の役目を果たしていて、どこか落ち着いた感じも醸し出してるから、本当に狐につままれたような気分になる。最終的には包み込んでくれるような人懐こさがあるからかも。同じモチーフを時を経て描いてみたりもしていて(海辺の男とか)二枚並べられたその違いを比べてみるのも面白かった。
画像4 そうして、展示の最終コーナーを飾る映画のポスターが、良いんだよー。現在カリブ海にあるドリニダード・ドバコ共和国にいる彼は友達とスタジオで映画の上映会を始めたって。その告知のポスターがいちいちステキ。告知が目的だから、素早く描いたとのことだけど、作品ごとどこをピックアップしてるか興味深い。
画像5 「ストレンジャー ザン パラダイス」は、あの可愛い女の子。「ブルー ベルベット」は、そうだよね、やっぱり耳だよね、とちょっと笑った。大胆な構図でもある。「羅生門」「東京物語」「花火」など日本の作品もあった。ちょっと見ただけだと何の作品がわからないのもあるので、ゆっくりじっくり見る。自分が好きな作品だと「へぇ、こんな感じになるのかー」と新しい視点もいただける。面白かったです。
画像6 ターナー賞などを受賞したとは言え、現存していて日本における評価もまだ定まっていないのに、こんなに大きな個展を開いてくれちゃうなんて、本当国立近代美術館大好き。私は、ここで開かれる展覧会に関してはたとえ知らないアーティストでも足を向けることにしています。それは、美術館の審美眼をとても信じているから。今回も、本当にピーター・ドイグに出会えて良かったよ。感謝です。
画像7 そのスタジオでは、映画が終了した後に、来ていた人達と感想を言い合ったり、音楽ライヴが始まったりと「サロン」みたいな状況になっているらしいけど、そこに行ってみたい。作品のセレクトもピーターが、ロンドン時代に観て好きだった映画を集めているとのことで、なんだかとっても楽しそうじゃない? いいなー近くに住む人たち・・・。でも、とりあえず私には会場で購入したピーターの絵(もちろん印刷物だけどね)があるもんね。毎日眺めて、楽しんでますよ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?