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人生の大切なことをゲームから学ぶ展 + 東京散歩

「人生の大切なことをゲームから学ぶ展」に行ってきました。これはゲームを遊んで感じるもの、その「『体験のデザイン』(UXデザイン)をできるだけわかりやすく解説した、おそらく世界で初めての展示会です。」(公式リリースより)。開催場所は丸の内のイベントスペース「GOOD DESIGN Marunouchi」。この展示会のために作られた8つのゲームを実際に遊ぶことができ、撮影も可能だったので写真とともにその様子をお届けします(見出しの画像もフォトスポットで撮ったもの)。

イベントは全体的に、ドット絵レトロ調に楽しくデザインされています。ゲーム開発にそのまま役立つUXの「裏ワザ」が平易に解説されていて、遊ぶ側でもゲームを違った目で見られること間違いなし。インタビューやアンケートの結果は「そうだよね」と共感せずにいられないものばかりでした。

会場には男女のカップルや家族連れの姿もあり、
お子さんが楽しそうに遊んでいるのが印象的でした。

イベントの目玉はなんといってもオリジナルのゲーム。アーケード筐体を模したつくりで、王道アクションからシューティング、ひねくれRPGや連打ゲーまで様々。どれも遊びたくなるグラフィックで作り込まれていて、ランダムで難易度が激変するゲームはイベントならでは、なるほどと思いました。

筐体側面に配されたキービジュアルもお見事。
あるゲームにはおなじみのクレジットが。

そしてもうお気づきかと思いますが、このイベントで特徴的なのがゲームから学べる「人生の大切なこと」。ゲームが好きな方ならきっとピンとくることと思います。このイベントのゲームはそれぞれにその大切なことをコンセプトに作られており、普通に遊ぶのとはまた違った深みと面白さがあります。

この記事ではあえて具体的な部分には立ち入りませんでした。なぜなら会場に足を運んで直接体験するようにデザインされているから。ゲームとUX、そこから実際になにを得て生きてきたのか、その裏にあるいろいろな人生に共感が尽きないとても面白い展示でした。
とは言うものの、会場が遠くて行けない方もいると思います。公式サイトやリリース文(4Gamerの記事参照)には情報がたっぷりあるので、そちらもぜひ見てみてください。


以下、ごく個人的な東京散歩の記録。

開催場所の「GOOD DESIGN Marunouchi」は、「公益財団法人日本デザイン振興会が主催・運営する、デザインと人、デザインと社会をつなぐコミュニケーションプラットフォーム」(公式サイトより)。間仕切りのないコンパクトなイベントスペースで、有楽町駅や東京駅のほど近くにあります。グッドデザインと言えばあのロゴでおなじみ。noteでは毎週すてきなデザインを紹介されています

GOOD DESIGN Marunouchiがあるのは丸の内仲通り。高級感あるファッションブランドが軒を連ねるおしゃれな通りで、テラスで食事をとる人やキッチンカーも絵になります。有楽町の皇居側、丸の内・日比谷エリアは静かで上品な雰囲気。

ウィンドウショッピングで別世界を楽しむ。
一保堂さんの焙じ茶にはいつもお世話になっております。これが美味しいのです。

丸の内とは江戸城のお堀の内側にあったためについた地名。通りのむこう側には広大な皇居外苑が見えています(写真左下)。日本経済の中心地にして最大のビジネス街でもあり、明治生命館などの歴史的建築物もあります(写真左上・右上)。そのほか出光美術館帝国劇場(帝劇)なども(写真右下)。晴れた日に散歩するととても気持ちいい。

有楽町へ戻って東の銀座側に出ると一挙ににぎやかになります。と、そこでまぐろ寿司の形をした (?!) 建物を発見。「SusHi Tech Square」という場所で、コンテンツの発信やイノベーションの創出・交流を行うイベントスペースにして基地なのだそうです。幸いにも今は「都市にひそむミエナイモノ展 Invisibles in the Neo City」が好評につき延長開催されているというので入ってみました。

有楽町に突如現れたsushiはアイコンとして見事に機能していました。
右は対照的な昔ながらの高架下。ほとんど飲み屋ですが、カレー専門店ふくていは満員でした。

なんでもない場所も人によっては物語に紐づいた「聖地」になる。そのとき人は、現実の上に見えないものを重ねて見ているのでは?「都市にひそむミエナイモノ展」は、8組のアーティストが技術を駆使して都市の違った一面を見せてくれる展覧会。ここではその中から一部をピックアップしてみましょう。

1. Metabolism Quantized:gluon + 3D Digital Archive Project
名作と謳われる建築を3Dモデルとして丸ごと保存し、ロボットやアバターと共存する"Common Ground" の実現につなげていくプロジェクト。今回の展示では黒川紀章の*中銀カプセルタワービルが周辺の土地も含めて再現されていて、手元のパッドでアバターやカメラを操作して歩き回ると大きなスクリーンに映し出されます。
海風を感じながら実際に見た体験にはさすがに及ばないものの、あの建築が失われたいま、疑似体験の価値はあるのかも。色んな用途での3Dモデルの活用に可能性を感じます。かわいいアバターの女の子が気になったのは悲しき性というべきか。
*四角いカプセルを組み合わせた集合住宅で、カプセルを交換することで建築を維持・成長させようとした。メタボリズム建築の代表作。

4. かぞくっち:菅野創+加藤明洋+綿貫岳海
東京を描いた台の上で動いている小さなロボット。これこそはかぞくっちの家なのです。家にはパネルがついていて、小さな玉のようなかぞくっちが活発に動いています。それぞれがNFTに登録され、子を生んだり寿命を終えたりするのだとか。さらにインタフェースを通じてオリジナルの遺伝子を作ることが可能で、周辺環境からの影響もシミュレートされているとのこと。ピコピコいいながら動き回るかわいい作品ですが、技術的には相当複雑そう。

6. あの山の裏 / Tyre Tracker:藤倉朝子
かつて山の裏には楽園や死後の世界があると考えられていました。藤倉さんは「現代の都市がつくりだす風土」「巨大なインフラ構造のすきまからのぞく遠浅のビーチ」にも信仰が生まれているといいます。展示会場には一枚の壁があり、四角い入口が切りとられています。中に入って裏に回るとそこにあるのは一本の木。車の音と静かな音楽が流れるそこは壁一枚隔てた別の空間でした。インディーで流行りのバックルームにも通じる何か。詩的なインスタレーションです。

駅前に戻って道路の中州にあるのは東京交通会館。Wikiによれば、東京オリンピックにむけて再開発が進むなか有楽町東口駅前だけは東京都交通局の建物が残り、周辺は立ち飲み屋や寿司屋などの木造店舗がひしめき合う通称「すしや横丁」、記者の溜まり場となっていた。そこに大規模ビルの建設を押し進めたのがここだとか。
1階と2階に大きく三省堂が入っていますが、現在2階は改装中。1階入り口では会館マルシェが開かれていました。ジャムにドライフルーツ、コーヒー、パン、ウォッカ、手編みのかごにお椀、生花、化粧品となんでもござれ。

地下1階は物産展のようなお店や飲食店などがあります。梅干し専門店「うめ八」の梅干しは塩味ばっちり。お弁当に入れよう。「韓国食品館」にはキムチやカクテキ、トッペギ用の鍋などが。「純喫茶ローヤル」では明太子パスタやナポリタン、ピラフ、パフェなどがいただけます。なるほどこれは純喫茶。「Kagaya」はガラスケースにパイプや葉巻などがずらりと並びます。ヴィンテージ灰皿なんてものも。

次にすこし歩いて銀座に向かいます。高層ビルの谷間を歩く銀座はとかく道に迷いやすいのですが、銀座西5丁目からみゆき通りを通って器ギャラリー「門」へ。温かな照明と鮮やかな飾りの親しみやすいお店でした。1階は箸専門店の「夏野」。塗りの箸はお値段が高くなるから……というので買った塗りのない江戸木箸は愛用しています。備前焼の夢幻庵にも立ち寄りました。土の手触りと表情がいい。

そんなに使わないのだけど、つい買い求めてしまう豆皿。
花札はサクラ大戦でおぼえました。あかよろし。

つづいてGINZA SIXへ。ここはラグジュアリーブランドを扱う複合商業施設で、銀座の新しいアイコンとなるべく設計されました。発表当時、椎名林檎さんとトータス松本さんによるテーマ曲「目抜き通り」が好きだった。まず縁のない場所だと思っていましたが、入ってみると随所のデザインに特徴があってシックだけど決して下品ではなく、人を寄せつけない感じでもありません。そして驚くほど使いやすい。動いていて気持ちよく、エスカレーターのために無駄に遠回りするようなことがありませんでした。そこに込められた思いは公式ホームページの施設案内、インタビューに記されています。おもしろいのでぜひ。

それで、なぜここに来たかというと「CIBONE CASE」などのライフスタイルの一画があるから。CIBONE CASEは柔らかく洗練された陳列棚に日本の作家ものが並び、ジャンルは実に様々です。鹿の剥製をキルトで作った作品や振り子の照明があるかと思えば手に取りやすいお皿やマグ、使いやすいハサミもある。そして全てに共通しているのは、見た目や性能にちょっといい個性があること。気軽に立ち寄れて、見ていて楽しいお店です。

銀座の象徴たる和光の時計塔。あんぱんの元祖木村屋の看板も見える。
正時にはウェストミンスター式の鐘の音が鳴り渡ります。

有楽町・銀座エリアで不満があるとすれば(古)書店がないこと。三省堂は先述の通り1階のみの営業で、あとはキリスト教関係の書籍で有名な教文堂とGINZA SIXの蔦屋書店くらい(あと、和菓子もあんまりないかも。空也もなかはとても美味しいのですが、予約必須です)。蔦屋書店は文脈棚やアート・建築はいいけれど、海外文学を見るのには向かない……と思っていたら、ギャラリー展示を見かけました。金田涼子さんの個展がすごく良かった。

画集を衝動買い。それにしても、直接絵を見られたのは幸せでした。

とはいえやはり本を見たいので東京へと移動。丸善本店を訪ねました。とにかくそこにある本の多さに圧倒されます。池袋ジュンク堂のディープな選書には及ばないものの、これだけの本屋が存在しているのはなんとも有難い話です。

人を殺せるこの厚さ。

……と思っていたら、銀座六丁目すずらん通りのDOVER STREET MARKET GINZAにBIBLIOTHECAなる本屋があるそうです。やはりアート寄りなようですが、立ち寄っておきたかった。銀座にはある種秋葉原のようなところがあって、表向きにはわかりやすい顔を持つ一方で、その裏に入り込んでいくと面白いお店がたくさんあります。また銀ブラしよう。