ティラノゲームフェス2021 フリーノベルゲームのおすすめ3作

これまで以上に賑わっているティラノゲームフェスから遊んで面白かった3作品をご紹介。

じごくのインターネッツ

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じごくのインターネッツ』はmisosioさんによるネットをテーマにしたお話。「オカルト占い師・インスタント奈落ちゃん」と一緒にインターネットが引き起こすあれこれに巻き込まれていく。

ぐぅたらだけど憎めない主人公と奈落ちゃんによるドタバタコメディ。コミカルなお話がテンポよく展開し、きっちりオチがついて次の一話に続きます。各話は短めにまとまっているのでノベルゲームをあまり遊ばない人にもおすすめ。ネットリテラシーをテーマにしたドタバタ劇がとても楽しく、お約束をふまえた展開になんだかほっとする作品でした。なにより奈落ちゃんがかわいい

また、数あるゲームの中でも一際目を引く画面デザインが良いです。コミカルなトーンで統一されたUIからキャラの絵になじむ写真、細かく使い分けられたフォントなど、丁寧なデザインで見た目にも楽しい。
音楽や効果音はタイトル曲以外フリーで公開されているものですが、このゲームのために誂えたかのようにばっちりはまっています。
とてもハイクオリティなのに気軽に遊べてしまう何とも贅沢なゲーム。前作『お前のスパチャで世界を救え』とあわせてどうぞ。

非実在都市伝説の作法 Imaginary Fakelore

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非実在都市伝説の作法 Imaginary Fakelore』はPlastic Tekkamaki Manufacturingさんによる都市伝説の物語。オカルト雑誌『ノウティカ』で働く二人が始めた「増殖する路地裏」の取材は思わぬ事態に発展していく。

短くループするトラックと解像度を落とした画像やフォント、いずれもローファイな表現が大きな特徴。黒を基調にミニマルにまとめたUIもあいまって非常にクールな印象のゲームです。
キャラクターもなかなかにシニカル。うんざりする仕事を適当にこなしつつ、時に自省しながら気の合う仲間と軽口をたたきあう彼女たちに思わず共感してしまいます。現代的な会話も全く違和感がない。社会の中での身の処し方など同時代的な感性がごく自然に描かれています。
現代的なテーマを素早く捉えた物語も読みごたえ十分。絵、音楽、文章、いずれも独創的な才能がそのまま形になったような作家性が際立つ作品でした。深夜の地方都市をスケッチした前作『深夜徘徊のための音楽 beats to relax/stray to』もおすすめ。

残業深夜

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残業深夜 -ザンギョウシンヤ-』はヨルミチさんによる世にも奇妙な残業物語。夜遅くまで残業して仕事を片付ける「俺」を恐ろしい出来事が襲う。

本作最大の特徴は見ての通り実写であること。薄暗いオフィスで頭を抱える「俺」の苦悩や不気味な社内の雰囲気が見事に伝わってきます。場面に応じた写真そのものも見ごたえあり。
テキストはシンプルで読みやすく、読み進めるうち自分が「俺」になって深夜のオフィスに取り残されているような気がしてきます。うまく使い分けられた静かなBGMも何かが起こりそうな予感を強める。
清く正しく怪談しているのもいいところ。スケアクロウや過度の暴力表現がなく、テキストでしっかり静かな恐怖が演出されています
縦長にデザインされているので、スマホで遊べばより没入感が出ると思います。皆様も深夜の残業だけは決してなされませぬよう……。