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お好み焼きをふっくらと崩れず焼き上げる秘訣

定番の「お好み焼き」を崩さずにふわふわに焼き上げる方法をご紹介します。鍵を握るのは生地の粘り気のもとであるグルテンと空気。定番のメニューを家庭でおいしく作る方法を、料理の理論とともに解説する連載です(85回目)。

冬に美味しくなるキャベツを主役にしたお好み焼きです。お好み焼きの生地は「硬くなるので混ぜすぎてはいけない」とよく言いますが、あまり混ぜないで焼くとひっくり返す際にバラバラに崩れてしまいます。生地の粘り気であるグルテンが生成されず、具材をつなぎとめることができないからです。とはいえ「崩れないように」と生地と具材をよく練ってから焼くと、今度はやっぱり硬い仕上がりに……。解決策は生地作りと具材を混ぜる工程を分けることです。

お好み焼き

材料(2枚分)
薄力粉…90g
出汁…100cc (出汁を準備するか、100ccの水に顆粒だし1gを溶く)
キャベツ…200g〜240g (4〜5枚が目安)
卵…2個
豚バラ肉(スライス)…4枚(半分に切る)
塩…適量
胡椒…適量

中濃ソース…適量
マヨネーズ…適量
辛子…適量
鰹節…適量
青のり…適量
紅生姜…適量

1.キャベツは粗いみじん切り(1cm〜1.2cm角が目安)にし、2つのボウルにわける(2枚分なので)。ボウルで薄力粉と出汁を泡立て器でよく混ぜて生地をつくる。

2.キャベツの入ったボウルに卵1個と半量の生地を入れ、卵をつぶしながらさっくりと混ぜる*。黄身がところどころ残るくらいが目安。混ぜすぎないように注意する。生地は時間を置くと空気が抜けてふんわり感がなくなるので、一枚分ずつ作るようにする。
*料理用語で『さっくりと混ぜる』とは底から具材を返しながら切るように混ぜるという意味

3.フライパンを中火にかけ1分間温める。サラダ油(分量外)大さじ1/2を敷いたところに2の生地を流す。木べらやスプーンなどで縁を寄せて、形を整える。火を弱火に落とし、上に豚バラ肉のスライスを載せ、肉に塩、胡椒を振って蓋をし、4分間加熱する。

4.蓋をとってフライ返しなどで裏返し、蓋をしてさらに3分間加熱する。お皿にとって、中濃ソースを塗り、マヨネーズなどを添える。残りの生地も同様に焼く。

お好み焼きをふわふわにするのは空気

小麦粉はホットケーキや麺、天ぷらの衣など様々な料理に使われますが、それは小麦粉が伸びたり、膨れたり、膜をつくったりという性質があるからです。その性質に関係しているのがグリアジン、グルテニンという2つのタンパク質。小麦粉に水を加えるとこの2つのタンパク質が結びつき、グルテンとなります。このグルテンが伸びたり、膨れたりといった働きをする成分。

このレシピではまず小麦粉を出汁で溶き、グルテンを出した生地をつくります。水をたくさん入れているので、すぐに山芋のような粘りが出てくるはずです。この生地で粗く刻んだキャベツと卵を和えますが、ここでは決して混ぜすぎないようにしてください。

このお好み焼きをふわふわにするのはキャベツとキャベツのあいだに含まれる空気です。キャベツは千切りにするよりも粗く刻んだほうが空気が入りやすいので、ふわふわ感が出ます。

混ぜすぎてしまうとすべての隙間に生地が入ってしまい、重たい生地になってしまうので、卵の黄身が少し残るくらいが目安です。

あとは普通に焼いて食べるだけ。豚バラ肉に味がついてないとソースが余分に必要になるので、ほんの少量塩を振っておくとメリハリがつきます。小麦粉の生地は意外と火が入りづらいので、蓋をして蒸し焼きに。加熱していくとキャベツから水分が出てきますが、生地がそれを吸ってくれるので心配は御無用。お好み焼きは実に合理的な料理なのです。空気がふわふわ感の秘密ですからお好み焼きは冷めるとおいしくなくなります。焼きたてを食べるようにしましょう。

一度、このシンプルな配合でお好み焼きを作って食べてみてください。具材には他に青ネギや揚げ玉などを入れても美味しいのですが、キャベツだけでも「これでええやん」という感じで意外とおいしくできます。

もちろん「もっとふわふわにしたい」という方もいるでしょう。その場合はベースとなる生地にすりおろした山芋を混ぜるという手があります。ふくらし粉(ベーキングパウダー)を調合することもできます。あるいは生地自体に味がないので、醤油を少し入れてもいいでしょう。実はこれらの要素がはじめから配合されているのが、市販のお好み焼き粉。しかし、最初からお好み焼き粉を使うのではなく、まずはシンプルな配合で焼いてみることをおすすめします。アレンジを加えるのは原理原則がわかってからでも遅くありません。


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