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お肉の存在感が際立つ、お手軽ミートソース

定番パスタのミートソースをひき肉だけを使って簡単につくります。肉を練らず、肉を触らずに焼くことで、肉の香ばしさと存在感が引き立つミートソースが仕上がります。

洋食スタイルのミートソースです。ミートソースの構造はひき肉のイノシン酸と野菜のグルタミン酸で旨味の土台をつくり、そこに糖分で厚みを加えていくイメージ。今回はシンプルに玉ねぎの代わりに砂糖を使い(玉ねぎと砂糖は同じショ糖の甘みを持っています)、短時間で仕上げます。コツは『ひき肉を練らない』ことです。

10分ミートソース

材料(2人前)
フェデリーニ(またはスパゲッティーニ)…160g
合挽き肉…250g〜300g
塩…小さじ1/2(3g)
砂糖…小さじ1+1/2(5g)
水…大さじ1
にんにく…1片(みじん切り)
オリーブオイル…小さじ2
トマトジュース(無塩)…200cc
小麦粉…大さじ1
ウスターソース…小さじ1
粉チーズ…適量

1.合挽き肉はパックの底に水気(ドリップ)が出ていればペーパーなどでふき取っておく。塩、砂糖を溶かした水を振りかけ、10分以上置く。

2.フライパンにオリーブオイルとにんにくのみじん切りを入れ、中火にかける。ニンニクが泡立ってきたら、1のひき肉を入れ、そっと広げる。

3.中火のまま焼き続け、きっちりと焼き目がついたら、木べらで適当な大きさにわけ、裏返す。弱火に落としてさらに焼く。外側に脂が出てきたら、全体に小麦粉を振り入れる。

4.軽く混ぜて小麦粉にも火が通り、裏面にも焦げ目がついたらトマトジュースを一気に注ぎ入れて軽く混ぜる。混ぜることでひき肉はほぐれるが、好みでさらにほぐしてもよい。隠し味のウスターソースを入れたら、弱火で7分〜10分煮る。ソースが煮詰まり、赤い油が浮いてくればOK。

5.そのあいだにフェデリーニ(またはスパゲッティーニ)を1%塩分濃度の湯で袋の表示時間どおりに茹でる。茹で上がったら4の鍋に入れ、絡める。器に盛り、好みで粉チーズを振る。

お肉の存在感が際立つミートソース

通常のミートソースはじっくりと炒めた玉ねぎに挽き肉、トマトなどを加え、長時間煮込んでつくります(参考note『スタンダード・ミートソースの作り方』 )。
それに対して、この10分ミートソースは短時間で仕上げるのが特徴です。

まず、最初のポイントは挽き肉に塩と砂糖を溶かした水で味付けすること。こうすることで塩と砂糖が水分を抱え込むので、次の工程で失われる水分を補うことができます。ポイントはこの時『肉を練らない』こと。練ると肉の粒子が小さくなり、肉らしい食感が失われてしまいます。ソーセージをつくるわけではないので、肉には触らないようにしましょう。

肉をフライパンに広げるように入れ、じっくりと焼きます。もしも、ひき肉を入れておいたバットや皿に味付けに使った塩水が残っていたら、そのままフライパンに入れてしまいます。触らないでいれば水分は蒸発するので問題ありません。

焦げ目がおいしさの素なので、焼いているあいだ肉を触らないように。肉は水分を含んだスポンジのようなもの。木べらで抑えると水を絞り出すことになり、焦げ目がきれいつかないからです。

小麦粉を炒めることで、香ばしさもでます。写真のような状態になったらトマトジュースを一気に加えましょう。少しずつ加えると小麦粉が玉になる場合があります。ホワイトソースをつくるときも同じなのですが、小麦粉を使ったソースの場合、冷たい液体を一気に加えると失敗の可能性が減ります。

今回はトマトジュースを使いましたが、ホールトマト缶でもつくることができます。その場合は酸味が強いので、砂糖の量を増やすか玉ねぎなどを加えて味のバランスをとる必要が出てくるので、やはり、甘みと酸味のバランスがとれたトマトジュースを使うのが簡単。このレシピには例えばKAGOMEの『あまいトマト』のような甘みのある製品が向いていますが、酸味の強いトマトジュースを使う場合はやはり最後に砂糖を加えて、調整してください。

トマトジュースの味が凝縮されるので甘い製品がおすすめ

煮込み時間は10分程度。表面に赤い油が浮いてきたらOKです。

ところで、パスタをつくる時はよく乳化という言葉を使います。油が浮いた仕上がりは嫌なものですが、上手に乳化させるとなめらかなソースになり、コクがアップします。科学の世界で乳化といえば油脂と水分が完全に混ざった状態を指すので、乳化という言葉を使うのは正確ではないかもしれません。なぜならドレッシングやパスタの乳化状態は一時的なもので、やがて分離してしまうからです。しかし、料理の世界で乳化といえば、このような一時的な状態も含みます。科学的には間違っているかもしれませんが、ここでは慣例に習い、乳化という言葉を使うことにしましょう。

さて、乳化に必要な条件を確認しておきます。乳化に必要な要素は『油脂』『水分』そして『乳化剤』です。この料理では肉とパスタから溶け出る少量のタンパク質が乳化剤の役割と果たします。

忘れがちな要素は『水分』です。さきほどソースを煮詰めることで赤い油が表面に浮かびました。これは水分が失われたことで、乳化状態を保てなくなった証拠です。

茹で上がったパスタをトングなどでつかみ、そのままフライパンに入れると茹で汁も一緒に鍋に入ります。そうすることで先程、失われた水分が補われ、ソースは再び乳化してくれるでしょう。もしも、ザルなどでパスタの水気を完全に切ってしまった場合は、お玉などで茹で汁を補います。

水分量が適正であればパスタを皿に盛った時、油が浮くようなことはないはずです。ソースの塩加減を控えめにしてあるので、仕上げに粉チーズを振らない場合は茹で汁の塩分濃度を1%ではなく1.2%にするとはっきりとした味になります。このあたりは好みで調整してみてください。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!