しっとりやわらかな豚の角煮は“のんび〜り”つくる
豚の角煮。とろとろの脂身とほどけるようなやわらかい赤身が人気のメニューですが、硬かったりパサついたりと失敗も多い料理でもあります。失敗しないためのコツはたった一つ、のんびりと煮ることです。
豚の角煮
作り方
1. 豚バラ肉は鍋に入る大きさに切り、砂糖と塩をまぶして30分置く。(Tips1 豚肉は砂糖の力でしっとりさせる)
2.大きめの鍋に1の肉と水、昆布を入れて、中火にかける。沸騰したらアクを軽くとり、弱火に落として90分煮る。(途中で豚バラ肉が水面から出るようであればキッチンペーパーをかぶせる)昆布をとりだして、そのまま冷ます。(Tips2 煮込み料理のコツは蓋をしないこと)
3.豚肉を3〜4cm角に切り、煮汁の表面に浮いたラードをとりのぞく。(残った煮汁はスープとして、ラードは炒めものなどに使えます)
4.鍋に豚肉、煮汁500cc、酒100cc、砂糖大さじ5、醤油大さじ3、塩小さじ1/4を入れ、中火にかける。沸騰したら弱火に落とし、時々、裏返しながら1時間煮る(裏返すのが面倒なら肉にキッチンペーパーをかぶせてください)。
好みで煮汁に青菜を加えて、さっと火を通したものを添える。
★レシピの解説
【Tips1】豚肉は砂糖の力でしっとりさせる
豚バラ肉は三枚肉とも呼ばれ、赤い肉と白い脂身が層になっています。角煮でよくある失敗は白い肉の部分にしっかりと火を通そうとするあまりに、赤肉がパサパサになること。それを防ぐために塩と砂糖でマリネして、肉をしっとりさせます。
塩をまぶして時間を置くと、タンパク質の一部が溶け出すことで組成が変わり、例えればハムのような状態になるので、加熱後もしっとりするのです。
また、この時は塩だけではなく砂糖を使います。砂糖は塩よりも早く浸透し、肉の水分と結びついて保水性に貢献する上に、塩味が入りすぎるのを防いでくれます。
【Tips2】煮込み料理のコツは蓋をしないこと
角煮は二段階の茹でる工程を踏みます。はじめに豚バラ肉の多すぎる脂肪を抜き、次の段階で調味液で味をつけていくのです。面倒に感じられますが、一度目の茹で工程のあと、豚バラ肉を薄切りにして、カラシ醤油で食べても乙なものです。
どちらの煮込みにおいても、理想的な煮込み温度は90℃くらい。沸点以下での加熱の鍵をにぎるのは『気化熱』です。蓋をしないで煮込むと水分が蒸発する際にまわりの熱を奪っていく(夏の道に巻く打ち水と同じ原理です)ので、沸点以下での加熱が可能です。コンロから加わる熱と気化熱によって失われる熱のバランスによって煮込み温度が決定するので、可能な限り弱火で気長に煮込むのが、肉をしっとりさせる秘訣。
グツグツと沸くようなら火が強すぎるか、鍋の口径が小さすぎることが考えられます。どちらかを解決し、ゆっくりとした加熱で豚バラ肉に含まれるコラーゲンを分解させつつ、赤身肉を必要以上に収縮させないようにしましょう(肉がやわらかくなる理由は『ビーフシチュー』の回を参照)。
こういった煮込み料理は多めに作って、様々な料理に使いまわしていきましょう。レシピは2人前ですが、調味液の量はそのままで肉の分量を倍にすれば4人前になり、そのほうが簡単です。出来上がった角煮は冷凍もできるので、一度につくっておいたほうが楽でしょう。
出来上がった角煮をそのまま食べてもいいのですが、可能であれば一度冷ますと外側に出た肉の水分が戻るので、よりしっとりと仕上がります。再加熱する際には一度、肉をとりだし、調味液を沸かしたところに肉を戻し火を止め、温めるようにすると丁寧です。
時間はかかりますが、調理自体は簡単。角煮のおいしさは時間がつくる味なのです。
撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!