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酸味がなくなる!? ミラクルフルーツの不思議

御徒町にある吉池は昔から好きなスーパーなのですが、そこの果物売り場の片隅でフレッシュのミラクルフルーツが売っていたので購入しました。

なんと税抜100円でした。

群馬県産と表示があります。ちょっと調べたところ、他に静岡県などでも栽培されているようです。

ミラクルフルーツはタブレットタイプの製品が普及していますが、味覚について学ぶいい教材です。

観察してみましょう。小さな赤い粒で、果肉は白く、中心に種があります。口に入れて皮をはぐように種とわけ、1分くらい舌の上で転がしてから、種を出すよう指示がありました。食べてみると甘酸っぱく、普通においしいフルーツです。ちょっとクランベリーに似ているかな?

さて、種を出して、他の食べ物を食べてみます。まずはいちご。明らかに甘く、超高級品のような甘さに変化しました。すだちも丸かじりすると、オレンジのような甘みを感じます。でも、香りはすだちなので、すだち風味の清涼飲料水のような印象。

白ワインも飲んでみました。すっきりとした辛口の白ワインが貴腐ワインのような甘口に変化。

ヨーグルトは甘みが増して、チーズケーキのようです。酸味が甘みに置換されるだけで、食べ物の性質はかなり変わります。ちなみに酢は甘いのですが、飲み込んだ後の喉の刺激は酢のそれです。

ミラクルフルーツは英語ではミラクルベリーと呼ばれています

ミラクルフルーツには「ミラクリン」というタンパク質が含まれており、舌の上の甘味受容体と結合し、酸性の化合物に触れるとその受容体を刺激します。結果として脳には甘味受容体から伝達が届くので、甘く感じます。この効果はPH6.5から起こりはじめ、pH4.8まで強くなり続けるそう。つまり、舌を麻痺させたり、酸味を中和したりするわけではないので、他の味覚には影響ありませんし、酸味もわずかですが感じます。人間が持つ甘みの受容体は一種類なので、こういう現象が起きるんでしょうね。

この現象が観察されたのは1725年、西アフリカの住民が「ヤシから作った酸っぱいビールを甘くする」のに利用していたそう。ワールドミラクルフルーツ協会のwebページによると、横浜国立大学栗原良枝という先生がミラクリンを単離するのに成功し、日本での普及にも尽力された、とのこと。

ミラクリンは甘いものを食べられない人にも有効な物質ですが、単純に味覚のトリップ体験としても面白いです。今回はいちごを試しましたが、ミニトマトも興味深い甘さになりますし、意外なところではウスターソースで「ウスターソースって酸味がないと、こんなに旨みがあるんだ」という発見があります。まだ試していませんが、タバスコや酸味があるタイプの日本酒なんかも面白いかもしれません。

ただ、注意点を2つ。ミラクリンは「甘く感じさせている」だけで、実際の食べ物のphは変えていません。そのためレモン汁を一気飲みしたりすると、健康を害します。味覚を変える効果は人によって違いますが、1時間ほど。そのあいだは酸味の少ない世界を生きることになるので、試す時間も選んだ方が良さそうです。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!