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そうめんのつゆと薬味のはなし

お疲れさまです。夏至も過ぎ、いよいよ暑くなってきました。

cakesで「樋口さん、どれがいちばんですか?」という連載をやっているのですが、明日の更新テーマは「そうめん」です。そうめんについての詳細はそちらの記事を参照していただくとして、こちらでは「めんつゆ」と「薬味」の話を。

めんつゆは以前、かんたんな作り方をcakesの連載でも載せてもらったんですが、それは濃口しょう油を使ったものでした。正直、そうめんつゆ(とうどんつゆ)にはうすくちしょう油の方が合います。

うすくちしょう油は開封して時間が経つと酸化が進み、濃口醤油よりも味が落ちやすいので、濃口とうすくちの2本を台所に揃えてくださいと、以前はなかなか言いづらかったのですが、今は酸化防止ボトルに入ったうすくちしょう油が市販されています。使用頻度が少ない家でもこれなら大丈夫。というわけで、めんつゆの作り方です。

めんつゆ
水    250ml
うすくち醤油 50ml
みりん    50ml
昆布     5cm角
かつお削り節 ひとつかみ    

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普段、いちいち計ったりしないでしょうから鰹節と昆布はあえてざっくりとした分量表記にしていますが、めんつゆの基本は出汁5:しょう油1:みりん1です。うすくちしょう油を使うと濃口よりも塩分量は多くなるので、バシッと切れ味のいい仕上がりになります。

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作り方はかんたん。すべての材料を鍋に入れて、中火にかけます。昆布は事前に水に漬けておくとさらによし。沸騰してきたら弱火に落としてことこと2分間煮出します。

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ザルで濾します。

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ボウルの底を氷水にあてて急冷します。出汁の香り成分は揮発性なので、急冷するのがポイントです。市販のめんつゆはパッケージに詰めたり、殺菌する工程で香り成分の多くが揮発してしまうので、やはり味が落ちます。そのため少量を食べるたびにつくる、というのがベストなのです。

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おまけ 昆布を水で戻していない場合はうま味がまだ残っています。出し殻に水を足してことこと3〜4分煮出せば二番だしが引けます。何かに使いましょう。

薬味のはなし

そうめんには薬味が欠かせませんよね。

そうめんの薬味について考えるといつも思い出すのは檀一雄のエッセイ。

ただ、ソーメンをスメ(ツユ)に浮べてすすりこむだけでは、口にはおいしいにちがいないけれども、夏バテするにきまっている。
そこでソーメンをすする時にも、少し奮闘して、さまざまな薬味を、ソーメンのまわりにならべながら、さすがは我家のソーメンだと、亭主をびっくりさせてみることにしよう。
薬味のサラシネギは誰でもつくる。ゴマを煎って、叩きゴマか、半ずりのゴマにしておくならば、薬味は二品ということになるだろう。

こんな風に壇は切り出し、次々と薬味を作っていきます。今日はそれに少し習って薬味を作っていきましょうか。まずはサラシネギ。

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サラシネギはネギを半分に切ってから、できるだけ薄く切るのがポイント。小口切りでもいいのですが、少し小さい方が味として馴染みます。

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冷水にさらして準備完了。

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ザルで水気を切ればOK。これが晒しネギという薬味です。

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ゴマも真似しましょう。すり鉢とすりこぎがあれば当たってもいいのですが、包丁で切るのが簡単です。これを切り胡麻といいます。檀一雄はエッセイのなかでついで干ししいたけをめんつゆで煮るのですが、干し椎茸がなかったので省略。

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代わりにかいわれ大根を切ってみました。これで三品。

もう一品、鶏の挽肉を100グラムきばって、ソーメンのツユを煮上げたついでに、そのつゆを少し手鍋にとり、挽肉を入れ、いりつけるようにしてひと煮立ちして、すくいとるならば、薬味は遂に四品となる。

なるほど、なるほど。そうめんには肉っ気がないので、鶏の挽き肉も良さそうです。炊いていきましょう。

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鳥の挽き肉は1パック130g〜180gで売られています。レシピに100gとあるからそれだけ煮るのも不合理です。今日は127g煮ていきます。

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鍋に挽き肉を入れたらめんつゆを100ml程度+水50mlか、二番だし100ml、しょう油大さじ1/2強、砂糖大さじ1/2強を注いで、箸で崩します。箸で混ぜながら強火にかけます。

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沸いてくると次第に挽き肉に火が通り、煮汁が澄んできます。

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火が通ったら挽き肉を取り出します。これで鶏そぼろの出来上がり。

唯今、鶏の挽肉をすくいあげたが、そのあとに濃厚なダシが残るだろう。そこでナスをせんに切り、水によくさらして、充分にアクを抜いてから、その濃厚なダシで、煮付けるならば、薬味は堂々五品になる。
手順さえよろしくやれば十分か十五分の奮闘ですむことだ。

鶏の煮汁でナスを煮る。いいアイディアです。いただきましょう。小さめのナスを1本用意しました。

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せんに切り、とありますが、薄切りにします。

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水にさっとさらしてアクを抜きます。昔のナスと今のナスは品種が違い、アクが少ないので、短時間さらせばOK。

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煮汁で炊いていきます。ナスが多いな、と思うかもしれませんが、煮るとしんなりして小さくなるので大丈夫。

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ナスはスポンジ構造をしていて、そのほとんどが空気なので、加熱すれば小さくなります。

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くたっとやわらかくなれば出来上がり。これで五品目です。

あと一品、お子様にも喜ばれるように、サラダ油かごま油を使って、炒り卵をつくておこう。すると薬味の皿数は六品になる。

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次は炒り卵。フッ素樹脂加工のフライパンに卵1個、砂糖小さじ1、うすくち醤油小さじ1を入れて溶きます。

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箸でかき混ぜながら中火で炒りつけていきます。

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鍋底から卵をはがすようにします。写真くらい固まってきたら火を弱火に落としてさらに炒りつけます。

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ポロポロのそぼろ状になれば出来上がり。これで六品。

事のついでだ。ダイコンおろしをおろしておくなら薬味がとうとう七品ということになった。

なんと大根おろしまで。せっかくなので、檀一雄に習って大根をおろします。

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大根おろしをつくるときは皮は剥かないで大丈夫。味にはたいして影響しません。

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茶こしなんかで水気を切っておきます。これで大根おろしは出来上がり。

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そうめんを茹でたらずらりと並べましょう。

何だっていいのである。ソーメンをすする時にも、さまざまな副菜を用意して、ソーメンのツユに浮かべたら、たのしくもあり、ゆたかな感じになり、夏バテを防げるということだ

cakesの連載でも引用しましたが、たのしくもあり、ゆたかな感じになる、というのが料理の本質。例えばこのそうめんの場合は鶏の煮汁でナスを煮る、というちょっとした工夫で、仕上がりがぐっと美味しくなっています。毎日の料理、決まりったものばかり作っていると気分も上がってきません。ちょっとした工夫とアイディアで、日々をたのしく、ゆたかにしてきたいものですね。

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樋口直哉(TravelingFoodLab.)

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!