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青菜とインゲンのごま和えの作り方

昨日は「オンラインイベント 料理家たちのふだんのごはん」でした。ご視聴くださった方、ありがとうございます。当日、作った『青菜とインゲンのごま和え』のレシピをこちらで紹介します。

料理家さんはよく「簡単ですよ〜」とよく言いますが、インゲンのごま和えは激むずレシピで、要点がわかっていないと攻略できません。成功に至るまでの道筋を細かく書いていきます。

青菜とインゲンの半ずりごま和え

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青菜 1束 (冬……ほうれん草、小松菜、水菜 春……菜の花……etc) 
いんげん 1袋(150g程度)
ナス 1本
すりごま 大さじ3
醤油   大さじ1/2〜
砂糖   大さじ1/2〜

このレシピのポイントは「ナス」が入ること。ナスは主役ではなく、野菜同士や胡麻との間をつなぐ役割です。青菜の分量が種類によって異なるので、すりごま、醤油、砂糖の分量は加減してください。

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ある程度の大きさの鍋で野菜を茹でるための湯を沸かし、お吸い物くらいの濃さになるまで塩を入れます。青菜は軸を落とし、5cm幅に切り、いんげんはヘタをとり、斜め5cm長さに切ります。ナスはヘタを切り落とし、皮を剥いてから、縦半分に切り、薄切り(半月切り)にします。さやいんげんは市場の9割以上が筋なし品種なので、筋をとる必要は基本的になし。

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まずはナスとインゲンを投入。ナスはグズグズに煮てしまって大丈夫です。このインゲンを茹でる時間が難関ポイント。インゲンはしっかり火を通さないとおいしくありませんが、かといって茹ですぎると面白くない。

インゲンの茹でる時間は鮮度に影響を受けるので「レシピ化できない」ものの一つ。古いインゲンは鮮度のいいものに比べて茹で時間が余分にかかることを頭に入れておきましょう。しかし、古いインゲンはただ長く茹でればいい、というものでもありません。長く茹でると筋側の部分は硬いのに、その他の部分はやわらかすぎる、という問題が起きるからです。そこで登場するのが重曹。重曹を小さじ1/3程度投入することで均一にやわらかくなります。野菜の細胞壁を構成しているヘミセルロースは酸性では水に溶けませんが、アルカリ性で溶解が高まる性質があり、重曹を加えることで茹でる湯のPHを調整するのです。

ちなみに塩を加えるのもやわらかくするためで、塩を加えた湯で茹でるとカルシウムイオンがナトリウムイオンに置換され、架橋が切れて、ペクチンが溶け出しやすくなる、とされています。

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インゲンの茹で加減を確かめるには食べてみるしかありません。食べてみて歯ごたえを残しつつも、キシキシしないのが目安です。ある一点を超えると甘みがぐっと出てくるのがわかるので、何度も食べて確かめましょう。

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インゲンがいい具合にやわらかくなったら、ザルにあげて冷まします。心に余裕があればうちわで扇いで温度を下げてください。これは陸上げという調理法で、水っぽくならないのがメリット。水にさらさずにザルで冷ますだけでも色が褪せたりはしません。

そうそう、色といえば重曹を入れることによるもう一つのメリットは「緑色が鮮やかになる」ことです。野菜の緑色が悪くなるのはクロロフィルのマグネシウムイオンが水素に置換されることで起きる現象ですが、水素イオンが少ない=アルカリ性の水で茹でることでそれを防げるのです。

古代ローマのアピキウスの料理集には硝石(天然のアルカリ鉱物)を使って野菜を調理すればエメラルド色になる、という記述があり、19世紀を代表する料理人アントナム・カレームは木灰を使って水の酸度を下げています。化学的な原理がわかっていない時代から人々は経験則的に緑色を鮮やかにする方法を模索していましたが、今では重曹(炭酸水素ナトリウム)を使えば簡単。

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同じ鍋で小松菜を茹でますが、軸を先に入れてやや長めに茹でるのもコツ。ごま和えはサラダではないので、やわらかくすることで一体感が出ます。葉はすぐに火が通るので、先ほどと同様にザルに上げて冷ましましょう。この間に水気が切れます。

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そのあいだに胡麻を準備します。あたり鉢とあたり棒(すり鉢とすり棒)で細かくしていきますが、入念にやれば濃厚になりますし、粗いほどあっさりとした仕上がりになります。今回のレシピでは半ずりくらいが目安。

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すった胡麻と醤油、砂糖をボウルに入れ、小松菜とインゲン、ナスを入れて、ざっくりを和えます。ここで味見をして、塩味が足りなければ醤油と砂糖を足します。醤油と砂糖は1:1が目安。こんな風に保存しておけば2〜3日は楽しめます。豆腐をボウルで潰して、この胡麻和えを混ぜれば白和えになります。

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それぞれの野菜の茹で加減をジャストにするのもなかなか大変ですが、こうして作ったごま和えは日にちを置いても水っぽくなりません。さやいんげんは豆と野菜の両方の性質を持つ野菜ですが、上手く調理するとそれがよくわかるはず。

おまけ ナスの皮はごま油で炒めて塩で味付けすると一品になります。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!