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魯山人風納豆茶漬けの作り方

納豆の茶漬けは意想外に美味いものである。しかも、ほとんど人の知らないところである。食通間といえども、これを知る人は意外に少ない。と言って、私の発明したものではないが、世上これを知らないのはふしぎである。

納豆は好きな人は好き、嫌いな人は嫌いという食品ですが、消費量は右肩上がり。背景には単身世帯の増加や健康志向の高まりがあると思いますが、なにより独特のおいしさがあります。今日は魯山人風の納豆茶漬けをつくります。

写真の納豆は下仁田納豆製。大豆の違いもあるのですが、経木で発酵させた納豆はプラスチックや紙容器で製造するのとは味が断然、違います。以前、下仁田納豆さんについてはかなり詳しく取材していまして、下記の本にまとめました。

おいしい食べ物にご興味がある方は是非。経木で発酵させた納豆は匂いが少なく、深い旨味が特徴。ほのかな木の香りもご馳走です。

納豆は器に出して混ぜます。魯山人はこんな風に書いています。

納豆を器に出して、それになにも加えないで、そのまま、二本の箸でよくねりまぜる。そうすると、納豆の糸が多くなる。蓮から出る糸のようなものがふえて来て、かたくて練りにくくなって来る。この糸を出せば出すほど納豆は美味くなる

ところで魯山人は納豆を混ぜる回数まで指定した、という話は後世の人がつくった創作で、御大はよく混ぜろとしか書いていません。そもそも納豆を混ぜれば混ぜるほど旨味成分が増えるという話も眉唾物。ある説では『納豆のネバネバの主成分はグルタミン酸が鎖状に繋がったポリグルタミン酸だが、混ぜることで連鎖が断ち切れて旨味が増える』と言われていますが、物理的に混ぜるだけでアミノ酸のペプチド結合が切れるというのは個人的には納得できていません。(塩酸でも使えば別でしょうが……仕組みがわかる方がいればご教授ください)

実際はよく混ぜることで大豆の表面が崩れ、結果として糸の部分の遊離グルタミン酸が増えているだけではないでしょうか。ただ、混ぜたほうが口当たりがよくなり美味しくなるのは確かです。

魯山人の時代の納豆は大豆を煮るのに鉄の釜を使っていました。つまり、もっとぼそぼそとしていたはずで、その点をカバーするためによく混ぜる必要があったのでしょう。いずれにせよ、どこまで混ぜるかは好みです。

醤油を加えます。魯山人は塩も薦めています。

茶碗に飯を少量盛った上へ、適当にのせる。納豆の場合は、とりわけ熱飯がよい。煎茶をかけ、納豆に混和した醤油で塩加減が足りなければ、飯の上に醤油を数滴たらすのもいい。最初から納豆の茶漬けのためにねる時は、はじめから醤油を余計まぜた方がいい。元来、いい味わいを持つ納豆に対して、化学調味料を加えたりするのは好ましいやり方ではない。そうして飯の中に入れる納豆の量は、飯の四分の一程度がもっとも美味しい。納豆は少なきに過ぎては味がわるく、多きに過ぎては口の中でうるさくて食べにくい。

ちなみに魯山人は納豆茶漬けの場合に限って、調味料を先に入れろと指示しています。あまり粘りを出したくないのでしょうね。(5/25日追記 この部分、解釈間違ってますね。ご飯に載せて食べる場合には後から醤油を足してもいいが、茶漬けの場合には多めの醤油で味付けしておけ、という意味だと思います。多分)

ネギを加えました。

熱々のご飯に載せて煎茶をかければ完成です。

いつもの納豆ご飯もおいしいですが、たまには茶漬けにするのも目先が変わっていいかもしれません。

参考文献と引用元 納豆の茶漬け 北大路魯山人 青空文庫 

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