卵とご飯の一体感がすごいオムライスのつくりかた
ふわふわの半熟の卵と、コクのあるケチャップライス。オムライスは幸せの形、そのものです。オムライスの発祥には諸説ありますが、間違いないのは日本生まれ、日本育ちと言うこと。今回はシンプルなレシピで、昔懐かしの素朴な味を目指しました。
懐かしのオムライス
材料(2人前)
玉ねぎ 1/2個
ハム 50g
バター 20g(ケチャップライス用)
冷やご飯 350g (1合分)
ケチャップ 40g
中濃ソース 10g(またはウスターソース)
卵 6個
バター 10g×2(卵用)
1.冷やご飯は電子レンジ(600w)に3分間かけて温めておく。玉ねぎとハムはみじん切りにする。ケチャップと中濃ソースも計量し、混ぜ合わせておく。
*玉ねぎのみじん切り
玉ねぎのみじん切りのやり方はnote『たまねぎのみじん切り、基本と応用』を参考にしてください。ポイントは米粒よりも小さく切ること。玉ねぎが大きすぎるとオムライスのおいしさである卵とご飯の一体感が損なわれてしまいます。
通常、オムライスにはチキンライスが定番ですが、今回はハムを入れています。鶏肉よりも扱いやすく、さきほど述べた一体感を損ないにくいからです。チキンライスにする場合もハムと同じように鶏肉は小さく切るのがコツ。
具材には好みで香りのピーマン、うま味のマッシュルームを加えてもいいでしょう。ワンランク上の味を目指すなら両方加えるのがベストです。
2.フライパンにバター20gを入れ、中火にかける。バターが溶けてきたら、玉ねぎのみじん切りを入れて混ぜながら炒める。
*低温での加熱に向いているバター
玉ねぎを焦がしてしまうとご飯に黒い粒が浮いてしまい美しくないので、混ぜながら炒めます。
バターで炒めることのメリットは温度が上がりづらいこと。バターの15%は水分で、その水分が蒸発する際にまわりの熱を奪っていく(=気化熱)からです。だから、焦がさないようにじっくりと炒めたい時はバターが最適なのです。
3.玉ねぎが半透明になったらハムとケチャップと中濃ソースをあわせたものを加え、さらに1分間炒めてケチャップの水分を飛ばす。
*お店と家の違い
ケチャップライスはお米の粘りが出て、ベタベタの仕上がりになってしまったら失敗です。
チャーハンを作ったときのことを思い出してください。チャーハンでは『水分を加えると米は粘り、水分を失うと米はパラパラになる』と憶えましたが、ケチャップライスもそれと同じです。
お店ではご飯を炒めてからケチャップを加えることもありますが、家庭の火力では水分が飛ばずパラッとしづらいので、あらかじめ加熱してケチャップの水分を飛ばしておくことで、べた付きにくくなります。
4.温めたご飯を加え、火を弱火に落とす。木べらで切るように混ぜながら炒める。木べらで米が潰れると粘りが出るので、技術があれば中火のまま鍋をあおって手早く混ぜ合わせるとよい。全体がケチャップの色に染まったら、ボウルに移しておく。
*鍋をあおる意味
鍋をあおる動作には二つの目的があります。一つは鍋をあおることで、鍋肌の温度を下げること。
最近の家庭では熱源としてIHが増えていますが、その場合も鍋を外せば温度が下がります。IHは鍋と熱源が設置している状態でないと、鍋が発熱しないからです。ケチャップライスは焦げやすいので、適当に鍋をあおって鍋肌の温度を下げるのです。
もう一つは米粒に余計な力を加えずに具材と混ぜ合わせるためです。木べらでやさしく混ぜてもいいのですが、乱暴に炒めると米粒の表面が削れ、粘りが出るおそれがあります。鍋であおればその心配は無用です。
今回は鍋振りの練習のつもりで挑戦してみましょう。鍋を手元に引くようにすると具材が上手に返ります。
5.卵3個を泡立て器でよく溶く。
*オムライスを上手につくるコツ
さきほどまで作っていたのはケチャップライスだったので、いよいよオムライス作りに入ります。
よくある失敗はご飯を包む卵が破れてしまうというケース。それを防ぐために泡立て器で充分に攪拌します。泡立て器で混ぜると卵の白身と黄身という異なるタンパク質組成の物質を均質化することができます。混ぜ方が足りずに黄身と白身がバラバラだと卵はそこから破れてしまいます。ちなみにお店のやり方ではここで一度ザルで漉し、さらに滑らかな卵液を作ります。家庭ではそこまでする必要はありませんが、よく攪拌することで卵が破けにくくなります。
もう一つ特徴的なのが塩を加えないこと。オムレツには塩を入れますが、オムライスの場合は塩を加えるとタンパク質の網目が緩み、破れやすくなるので、味付けしないのです。また、強度を保つために牛乳や生クリームも加えません。
6.フライパンを中火に熱し、バター10gを溶かす。
*またしてもバターの登場
バターの風味と卵は相性がよく、味もよくなります。また、オムレツを焼く時のフライパンの適温は120℃前後。ちょうどバターが溶けきった時の温度です。
7.卵液を加えて、菜箸で外側から内側に素早く混ぜて半熟状にする。まだ固まっていないところが残っているうちに、卵の上にケチャップライスの半量をのせる。
*オムライス作りのクライマックス
卵液の表面にまだ液体部分が残っている状態でケチャップライスを載せることが、オムライス作りで一番大事なポイントです。このタイミングで卵とご飯の一体感が決まります。具材を減らしたシンプルな仕立てなので、是非ともジャストタイミングに挑戦してみてください。
8.そのままフライパンを傾け、揺すりながら卵とケチャップライスを移動させる。卵の端が皿にのったらフライパンを皿にかぶせるように返して器に盛り付ける。最後にキッチンペーパーで形を整える。この分量は2人前なので残り半量のケチャップライスを使って、工程5からの作業を繰り返し、二皿目をつくる。
この状態まできたら……
えいっとかぶせます。フライパンの上で巻き込む手法はテクニックが必要ですが、この方法だと簡単です。ただし、完全に内側に巻き込まれていない部分が出てきます。
そこで秘密兵器のキッチンペーパーで形を整えます。キッチンペーパーを上にかぶせて、両手の小指を使って内側に卵を入れ込んで、木の葉型に成形すればいいのです。
ケチャップ(分量外)をかければできあがり。シンプルな材料でつくった清く、正しいオムライスです。
もちろん、お店のオムライスには様々な工夫がこらされています。例えば大阪の洋食の老舗『明治軒』のオムライスにはライスに二日間かけて煮込んだすじ肉や玉ねぎのペーストを混ぜ込み、味に深みを出しています。
そこまで手間をかけなくとも、ケチャップやデミグラスソース、バターを溶かし込んで専用のソースをこしえらえたり、ただの冷やご飯ではなくブイヨンで炊いたバターライスを使ったりというパターンが多いでしょうか。
オムライスはおいしくつくろうと思えば、工夫できる部分がたくさんあります。そのためにもまずはこのレシピのような基本をマスターして、味のポイントを掴みましょう。
(おまけ)半熟卵載せバージョン
卵を巻き込む形ができなければ半熟卵を載せるバージョンもあります。
卵を溶くところまでは同じ。
中火のフライパンにバターを溶かし、溶けたタイミングで卵液を入れます。
固まってきた部分を折り込むようにして火を通します。7割程度火が通ったら、、、
フライパンの底に濡れ布巾を当てて、熱をとります。こうすれば半熟卵が簡単につくれます。
撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!