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〈食と生活〉男の料理教室の振り返りと豚ロース肉の低温調理

こんにちは。一昨日は建築家の浅子佳英さんと対談イベントに登壇してきました。テーマは「21世紀の新しい文化としての料理」。たしかにあらゆるものがコモディティ化して、あらゆるものがインターネットで手に入るようになった現在、食は最後に残されたコンテンツ。

浅子さんとRADの榊原さんとはこちらの雑誌でもご一緒しています。冒頭の「これからのキッチンを考える」みたいな企画です。そもそも歴史的にも公団住宅の流しを設計し、のちのダイニングキッチンを生むことになる建築家、浜口ミホ(女性建築家第一号の人です。夫は評論家の浜口隆一)さんはまったく料理をしない人だったそうですが、今のキッチンも料理に適しているとはいいづらいものばかり。これって、どういうことなのかなー、と料理をする側から考えてみます。

以下、余談。浅子さんが今年の三月に北欧を訪れた旅行記をnoteに書いていますが、北欧なんかは食というコンテンツを観光にうまく活用した好例です。

なんてったって北欧は映画バベットの晩餐会を観ればわかる通り、禁欲的なプロテスタントの国。美食などとは縁遠い土地でした。例えば良質な豚肉は輸出品で、国内用としては質の低いものをベーコンにしたりして、それはそれはおいしくないものを食べていたそうです。しかし、今では食周りの状況はかなり改善されました。

デンマークの食生活改善運動を主導し、国会まで動かした経営者がいます。クラウス・マイヤーという人で、nomaの創業者です。

彼らが提唱した『ニューノルディックキュイジーヌマニフェスト』は北欧料理に大きな影響を与えました。その後、nomaの経営からは離れ、ビール会社やレストラン、カフェなど幅広く展開しています。現在は財団を立ち上げて、社会貢献活動に注力しているようです。

2013年と少し前ですが、アメリカの雑誌『Time』に『Nomanomics: How One Restaurant Is Changing Denmark's Economy』(ノマノミクス:1軒のレストランがデンマークの経済をどのように変えたか)という記事が掲載されいました。

この記事の内容をざっくりと要約すると〈Nomaが用意できる年間2万席に対して100万人以上の予約応募がある──のだけれど、Nomaの成功はコペンハーゲンを訪れる目的を変えたことだ。旅行者はNomaが予約できなくても他のレストランを訪れる。涼しさを求めてデンマークを訪れるのではなく『おいしいものを食べたい』という旅行者を増やした。結果、観光客は11%増加した。Nomaはスカンジナビアの食材しか使わないので、農家や牡蠣養殖家なども恩恵を受けている〉というもの。(現在、nomaは移転し、跡地にはRestaurant Barrというレストランがオープンしています)

で、「新しい文化」に話を戻しますが、北欧は日常的に料理をする男性が非常に多い。ISSP(国際社会調査プログラム)の2012年の調査によると家事のシェア率が高いのはスウェーデン、ノルウェー、アイスランドが上位三位で、五位がデンマークです。(ちなみに四位はスイス)上位二カ国は半分の男性がちゃんと家事をしています。ちなみに日本は男が家事をしない国で、一割に満たない感じです。なんでこんなことになっているのかというと答えは簡単、労働時間が長さと日本が貧乏になったから。

しかし、ここ数年、働き方改革だなんだ、とやっていますが、AIやRoboticsなどの技術が進めば労働時間は減少していくはずです。そうして時間が空けば男性も家事をするはず。そして、家事のなかで唯一なにかを作り出すのが料理です。クリエイティブな人であれば料理は楽しい。

もちろん、そうではない(=なにかを作り出すのが苦手)人もいるので、そういう人は無理にやる必要はないと思うのですが、料理をする男性は増えるはず、というのが僕の見立てです。(女性から「料理だけしているだけで家事をしていると思うな」という批判が出るのは想定内。文句を言われるのは男女の問題であって、そこについてとやかく言ってもしかたがないので)

料理のコンテンツには2種類あって、大変な労働を軽減するためのスキームを教えてくれる問題解決型(時短とか簡単とかです)とエンタメに重点をおいたクリエイティブ型の二種類があると思います。僕が発信したいのはどちらかというと後者。料理って人生を豊かにしてくれると思うんですよね。

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