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調理テクニック紹介〈黒フルーツと黒ベジタブル〉

世界中で流行った食材といえば一昔前は柚子、そして黒にんにくでしょう。

(おすすめ黒にんにくのリンクを貼っておきます。株式会社元気は日本で最初に黒にんにくを製造した企業です)

日本生まれの黒にんにくは今や世界中のレストランで使われています。洞爺にあったミシェルブラスのシェフ、シモーネ・カンタフィオさんは講習会で「自分は流行っているからといって黒にんにくは使わない」と言っていましたが、それだけ流行ったということ。

黒にんにくを使うと驚くほどかんたんにうま味と甘み、酸味などが混じった複雑な味を料理に加えられます。

この黒にんにくって一体なんだ? という話ですが、にんにくを低温かつ長時間加熱したもの。黒い色はメイラード反応の産物です。僕のnoteと読んでいただいている方にはいまさらこんがり焼けたステーキや、飴色に炒めた玉ネギ、トースト、コーヒー、みそなどあらゆる料理のおいしさがメイラード反応に由来することを説明する必要はないかもしれませんが、黒にんにくもその一つ、というわけ。

黒にんにくはペーストにして肉のソースにしたり、あるいはアイスクリームにしてもおいしいですし、チョコレートともよくあいます。メイラード反応の産物なのでチョコレートの相性は抜群なのは言わずもがなですね。

ただ、黒にんにくと言っても品質は様々で、製品も色々あるので気に入った味を見つけるには色々と食べてみるしかありません。ちなみに商品名に発酵と名前がついている黒にんにくもありますが、前述の通り黒い色はメイラード反応なので、酵素反応は関係していますが、発酵とはあんま関係ありません。

黒にんにくの作り方はめちゃくちゃシンプル。実際、にんにくの産地である青森の家庭では炊飯器の保温機能を使って黒にんにくを自家製しているそうですが、60℃〜65℃で数週間加熱するだけです。

ジッパー付きの袋に入れると匂いが漏れにくいのでおすすめですが、98%の真空包装はしないでください。というのもにんにくは土で育つ作物なのでボツリヌス菌のリスクがあるから。嫌気性の状態にしなければ大丈夫なので、必要以上に怖がる必要はありません。

にんにくは適度な水分がある種類がベター。中国産のにんにくは安価ですが黒にんにくには向きません。もちろん、加熱の前に汚れがないか確認し、カビなどにも注意しましょう。もしも、カビが生えていたら、その部分まで皮を剥いて、アルコールで拭き取ります。

6〜8週間でこの状態。常温で一日休ませて、湿気を飛ばしてから冷蔵庫で保存します。味見をしてみるとなかなかおいしい黒にんにくを作るのが難しいことがわかるはず。というのもにんにくの品質や温度、湿度などメーカー品は様々な工夫して、おいしい黒にんにくを作っているそう。正直、手間と時間を考えると買った方が安いのですし、おとなしく買ったほうが無難みたいです。

黒にんにくは長時間の加熱によって糖分とアミノ酸がメイラード反応を起こしたものですが、糖分とアミノ酸がある食材であればなんでも黒くできます。北欧を代表するレストラン、nomaが開発した黒りんごもその一つ。

りんごは身が締まったものを使います。

りんごの皮を剥き、真空パックにかけるか、ジッパー付きの袋を水に沈めて空気を抜きます。

60℃で8週間加熱します。僕は低温長時間加熱にはインスタントポットを使っています。ただ、三日間(72時間)のあいだに忘れずにタイマーを延長する手間がちょっと面倒。

黒にんにくメーカーみたいな道具もあるにはあるんですけどね。

8週間経った状態がこちら。りんごの果汁が染み出していますが、こちらは煮詰めるとバルサミコ酢っぽい味になり、かなりおいしいです。

黒にんにくと違ってりんごは水分が多く、ペクチンやセルロースが加熱によって分解されてしまっているので、乾燥工程を踏む必要があります。40℃で30時間程度、時々、裏返しながら乾燥させましょう。

出来上がりがこちら。色の濃いドライフルーツじゃないか、と言われればそのとおりなのですが、デーツっぽい凝縮した風味が出てきます。

加熱によって味を複雑にするテクニックなので他に栗やくるみ(いずれも水分の多い新鮮なものを使うこと)も黒くできます。(そういえば京都のルーラで黒栗を使ったみそを食べたことがあります)エシャロットや小粒の玉ねぎなどもできますが、炒め玉ねぎと味の差別化が出せないのでちょっと考えもの。りんごと同様の手順を踏んで洋なしも黒くできます。

ちなみに僕が監修している焼きそばソースでは地元でとれる柿を黒にんにく化させたものを甘みとして使っています。黒くするのは大変ですが、黒にんにくなら手軽に料理に使えるので、ペーストにしたものをたれ(例えば焼き肉や照り焼き)に混ぜたり、スープに加えたりしてみてください。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!