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ステンレス鍋の教科書

仕事柄、色々と調理器具を買い込んではテストをしているのですが、先日無印良品のステンレス鍋を購入しました。

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ステンレスアルミ全面三層鋼という製品です。ステンレスでアルミをサンドイッチしているので三層なんですね。

こちらの鍋、有賀さんが『料理を始めるべき人が買うべき3つの鍋』という記事でオススメしていました。

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ハンドル部分のフォルムが独特です。飛び出しているリベットが古典的な鍋のアイコンを彷彿させます。ジャスパー・モリソンによるデザインで、公式サイトにも掲載されていました。

三層なのでややホットスポット(ガスの火は円形なので、中心の温度が低くなり、周りの温度が高くなる)ができやすいですが、ソースパンの用途は水を入れて使うことなのでほとんど問題なし。ちょっと柄が長すぎる気もしますが、価格と性能のバランスがとれた鍋だと思います。

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蓋がえらくゆるいですね。蓋のデザインは結構難しく、密閉度を上げると鍋がカタカタと鳴ってうるさいので、安価な製品は緩めにつくってある印象。でも、どんな蓋でも(なんなら皿でもいいのですが)あると便利です。蓋付きでこの値段は立派。

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まずステンレスの鍋を買ってきたら内側と外側をよく洗いましょう。「別にきれいやん」と思うかもしれませんが説明書にもそう書いてあります。新品の鍋には汚れや研磨剤の残りが付着している可能性があるからですが、理由はそれだけではありません。

その前にステンレスがなぜ錆びないか、というメカニズムを理解しておく必要があります。ステンレスは正確には錆びないのではなく、錆びにくい金属です。ステンレスにはクロムが配合されていますが、それが空気中の酸素と結合し、表面に酸化皮膜をつくります。あらかじめ「別のさび」(酸化とサビは厳密には違うのですが、ざっくりと説明すると)をつけることでこれ以上、錆びないという理由です。

新品のステンレス鍋を布巾でこすると黒い汚れが付着することがあります。この黒いのは汚れではなく、前述の酸化皮膜です。使いはじめたばかりのステンレス鍋は酸化皮膜が剥がれやすく、洗うたびに黒い汚れが出てくることがあります。

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そのため使う前に一度よく洗い、湯を沸かしておくのが効果的です。この時、酢やクエン酸などを入れて加熱し、表面の古い酸化皮膜を落としてしまうのが一般的。お湯を沸かしたらそれを捨てて、よく拭けば準備完了です。あとは空気中の酸素と反応して、勝手にいい感じになります。

ステンレスはあくまで錆びにくい金属です。錆びるリスクは大きく3つ。1、他の金属。他の金属の付着するとその錆が付着することがあります。金属のたわしなんかを使う場合は特に注意しましょう。2、塩分。いくら耐塩性に優れた金属とは言っても長時間、付着するとやはり錆びます。鍋は保存容器ではないので、料理を入れたまま放置せず、すぐに洗いましょう。3、油脂など。油脂が錆を誘発することがあるので、やはり使用後は洗剤でよく洗って乾かしましょう。

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こちらは小さなリスクですが、使っているうちに内側に白い曇が出ることがあります。これは水に含まれるマグネシウム、カルシウム、鉄等のミネラル成分が固着したもので、そのままにしておくとステンレスの表面を浸食し、やはりさびの原因となります。

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白い曇がついたら10%の酢か3%のクエン酸を加えた湯を沸かしてから、磨くときれいになります。困ったときは酸を加えて磨く、というのがステンレス鍋をメンテナンスする際の基本といえるかもしれません。アルミの鍋に酸は厳禁なので、それも一緒に覚えておくといいでしょう。

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このステンレス鍋。使っているうちに「焦がしてしまった!」というときもあると思います。

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その場合も同様に10%の酢か、3%のクエン酸(焦げの場合は5%くらい入れたほうがいいでしょう)を入れて沸かすと剥がれるので、その後、ボンスターで磨けばきれいになります。

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ボンスターは100円均一でも売っている目の細かい金たわしです(使い捨て)

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新品同様に戻りました。きれいになるのは磨きという最終工程が丁寧にされている証拠なので、この点でもこちらの無印良品の鍋はなかなか優れていることがわかります。

ステンレス鍋は煮る、茹でるが得意

ステンレス製の鍋は煮る、茹でるが得意で「揚げる」がちょっと苦手です。温度が上がりにくく、下がりにくいというステンレス鍋の特徴から、なかなか温度が上がらないなー、と思って、火にかけつづけていると、今度は温度が上がりすぎたりします。

ステンレス多層構造鍋は揚げ物に向いている、という主張もありますが、それは熱伝導が悪い=逆に言うと熱を保つことができるという理由から。たっぷりと油を入れればむしろ揚げ物に向いているという言い方もできます。僕もステンレス鍋で揚げ物をすることがありますが、すべての鍋の特性には一長一短があり、いかようにも説明をつけることができるのであくまで〈原則として〉という話です。

茹でるという調理においては水が加熱を媒介するため、鍋の素材の違いは調理に大きく影響しません。問題は水以外の素材。例えばトマトソースやワインなどの酸が強い食材を調理する際は〈ステンレス〉や〈内側がホーロー加工された鍋〉がオススメです

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アルミニウム(アルマイト加工されていれば別ですが)や鋳鉄は酸と反応し、表面が溶けたり、鍋が傷んだりします。ステンレスも酸によって表面の層が剥がれますが(だから前回掃除に使ったのです)他の金属と比べれば安定しています。

ステンレス鍋とタイトルにつけてますが、これは片手鍋〜両手の小型鍋くらいまでの話。フライパンについてはまた考えるべきことがたくさんあるので、また別途項目を立てて、説明します。

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