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マスタードアイスクリームの作り方

現代料理の発見の一つは『塩味のアイスクリーム』。エルブジのフェラン・アドリアは『-8℃のアイスクリームがあったとして、2℃に冷やされたのムースのあいだにはたった10℃の温度差しかない』という主旨の指摘をしていますが、フェランはムースというコンセプトを発展させ、「チキンカレーのアイスクリーム」などのレシピを考案、塩味のアイスクリームというコンセプトを創造しました。

今回、ご紹介する『マスタードアイスクリーム』はシンプルなレシピで、蒸し暑い夏の時期に提供すると喜ばれます。オリジナルはパリの三ツ星レストラン、アルページュの料理です。

マスタードアイスクリーム
卵黄   3個
牛乳   250cc
生クリーム 125cc(乳脂肪)
ディジョンマスタード 40g
粒マスタード  大さじ2

アイスクリームづくりの肝は固形分。30%前後が目安でそれ以下になるとジャリジャリした感じになります。このレシピは結構ギリギリ。鍋で生クリームと牛乳を温めて、卵黄に注ぎます。

卵黄が煮えないようにかき混ぜながら加えましょう。

弱火にかけて82℃まで加熱します。水分を飛ばし、卵黄に火を通すためです。

ディジョンマスタードを加えてからアイスクリームマシンにかけます。

アイスクリームが固まったら、最後に粒マスタードを加えます。大さじ2という表記にしてますが、適当な量で大丈夫です。

ガスパッチョに浮かべて提供します。これ、結構、どこで出しても好評のレシピです。塩味のアイスクリームを出す際に注意すべきは先入観です。アイスクリームです、と言って提供する場合とムースです、といって提供する場合では人は前者のほうが『甘く』認識する傾向があります。

イギリスのシェフ、ヘストンブルメンタールは『カニ味のアイスクリーム』を開発したときのエピソードにこんなのがあります。ヘストン自身はその味が気に入っていたのですが、試食させた客たちの反応は「しょっぱすぎる」と散々。どうして、こんなに評判が悪いのか、疑問に思ったヘストンはサセックス大学のマーティンヨーマンズと共同で研究に取り組みました。

研究成果はいろいろあるのですが、例えばその一つは「塩味のアイスクリーム」と言ってから提供されると誰も「しょっぱすぎる」といわないこと。アイスクリームと聞くと頭のなかで「デザート」→「甘い」と認識してしまうので「しょっぱく」感じてしまうわけです。事前に「塩味ですよ」と教えてあげられば落ち着いて味わってもらうことができる、というわけ。

このマスタードのアイスクリームも「甘くないアイスクリームです」と言ってあげてから提供したほうがいいでしょう。でも、こちらはガスパッチョという元々甘味のある料理と組み合わせているので、それほどの拒否反応はないはずですけどね。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!