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ヴィーガン&ベジタリアン系の料理対応のTips

雑誌『クウネル』の特集で、都内のヴィーガン料理店を訪ねる企画に参加しました。

そもそもveganとは菜食主義者=vegetarianの前後5文字をとった言葉(Veg+an)で『完全菜食主義』と訳されます。もともとはイギリスではじまった考え方で、動物由来の食品(ほうほう、と思うのは、ハチを使って集めるはちみつや製造工程で牛骨を使う砂糖も使用不可)を摂取しない生活を指します。厳格なヴィーガンは持ち物も動物由来を排除するなど徹底しています。動物愛護のためのイデオロギー的な側面が強く、論争を巻き起こしがちだったのはそのため。

このところヴィーガンが注目されているのはそういったイデオロギーではなく、健康志向や環境への負荷を減らすためにもっとライトな感覚でヴィーガンを選択する人が増えたから。週末だけヴィーガンを選択する「フレキシヴィーガン」という考え方がその典型ですが、食生活のバランスをとるために菜食を選択するのはたしかに悪くありません。

もう一つ、注目されている理由はビーガン料理が多様性を受容するからです。例えば二つ星レストランの『Inua』のスタッフミール(まかない)はヴィーガン料理だそうですが、スタッフは十カ国以上の国籍が混ざる混成部隊。

そうした多様性を受容するのに適しているのがヴィーガン料理というわけ。これはこれから様々な人がテーブルを囲むことになる(……のかな? そう考えていたのですがCovid-19の流行によりちょっと先行きが見えなくなりました感がありますが)日本でも重要なポイント。

ともあれ、僕がヴィーガン料理に注目しているのは環境や健康といった理由ではなく(そもそもヴィーガン料理って環境にはいいですが、健康な食生活とは言いづらいです)「制約によって料理の創造性が発揮される」から。いわゆるヴィーガンレストランではないお店がつくるヴィーガン料理が面白いのです。今回、いくつかのレストランのシェフからヒントを貰ったので、それも含めてこれまでのnoteからヴィーガン料理をつくるときのポイントをまとめました。

インパクトをどう出すか?

肉や魚、乳製品と比べると野菜はうまみなどのインパクトに欠けます。また、どうでしても糖類の味にまとまりがちなので、食べ飽きるという問題も起きてきます。それを避けるには加熱方法で変化をつけること。

1 焦がす

『The Brun』の米澤シェフのカリフラワーのローストが有名ですが、焦がすことで味にインパクトを出します。

ぼくがnoteに載せているレシピにズッキーニの60分焼きがありますが、これも同じ考え方によるもの。こちらのレシピではバターを使っていますが、オリーブオイルや菜種油に変えれば、ビーガン対応になります。焦がすことで食感に変化もつきますが風味が似てくるというデメリットもあるので、使うなら一品、それもメイン料理向けでしょう。

飴色にした玉ねぎを茄子のローストの上にのせてシャリアピンステーキ風にするといけるかもしれません。ポイントは硫黄化合物が含まれる野菜を使うこと。具体的にはカリフラワーやブロッコリー、キャベツといったアブラナ科の野菜や玉ねぎです。これらの野菜は比較的、糖分が多く、メイラード反応が進みやすいからです。

2 乾燥させる

野菜を乾燥させることで、味を凝縮させインパクトを出します。

菊芋とマッシュルームのコンソメでは菊芋の皮を乾燥させてから使っています。乾燥させることで風味も出ます。前述の雑誌で訪れたレストランRKの井口シェフは乾燥させたマッシュルームからストックを作っていました。この菊芋とマッシュルームのコンソメもマッシュルームを乾燥させればさらに味わい(と色が)濃くなるでしょう。

トマトと紅茶のコンソメにはドライトマトを使い、旨味を出しています。それだけだと薄っぺらい味になりますが、紅茶のタンニンを加えることで味に厚みが出ます。このように野菜だけでは出せない味の成分をどのようにほかから持ってくるか、というのもポイントになります。

3 スパイスを使う

世界で最も洗練されたベジタリアン料理の一つはインド料理でしょう。インド料理の美点は多様なスパイス使い。単調になりがちな野菜料理に変化をつけることができます。

フムスにスマックや赤唐辛子をかけるだけでも単調な味にアクセントがつけられます。

4 クリーミーさを出す

クリーミーさは料理の特徴の一つ。1の焦がすとは対極にある味なので、選択肢として入ってきます。乳製品は使えないので、ではどうやってクリーミーさを出していくか。

一般的なのは豆乳ヨーグルトや豆乳マヨネーズです。

レシピに上げたのは牛乳マヨネーズですが、分量はそのままで牛乳を豆乳に置き換えれば豆乳マヨネーズになります。カゼインではなく大豆レシチンで乳化させているわけで、原理は同じ。

大豆アレルギーの方もいるので、豆乳の使用に頼るわけにはいきません。その場合は白い野菜のピュレでクリーミーさを足す方向性があります。

玉ねぎを使っていますが、カリフラワーを使う場合もあります。ホワイトアスパラガスのピュレというのもいいでしょう。

もう一つのアプローチはナッツ類を使うこと。ビーガンチーズなどはカシューナッツを使うのが一般的ですが、ナッツのペーストでクリーミーさを加えるのはインド料理で一般的なテクニックです。日本にも練ゴマというナッツのペーストがありますし、ピーナッツバターを使うのもいいでしょう。

5 発酵食品を使う

野菜にはアミノ酸が少ないわけなので、手っ取り早くアミノ酸を足すにはタンパク質を微生物によって分解させた発酵食品を使うのが簡単。

野菜寿司に使った赤ピーマンの漬けはその典型的なパターン。和食店でビーガン対応となると『こんにゃくのお造り』がたまに出てきますが、あれは避けたいところ。こんにゃくには味がないからです。それだったら発酵食品で旨味をブーストした野菜のお造りを出して欲しいところ。

そもそも日本料理のビーガン対応は困難を極めますが、その理由は鰹節の出汁が使えないことに起因します。昆布+シイタケの精進出汁で対応することになりますが、燻製香がないので物足りなさも。大豆を炒ってから軽く燻製にかけた燻製大豆を加えると味にだいぶ厚みが出ます。(このレシピは今後noteに載せます)

今のところはこんな感じです。このnoteは今後、追記していく可能性がありますが、とりあえずのメモとして。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!