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アイオリソースを使った〈イカのセート風〉

アイオリは南仏プロヴァンスからスペインにかけて人気のソース。ニンニク入りのマヨネーズといった趣ですが、もともとのレシピには卵黄は入らず、すりつぶしたニンニクをベースにオリーブオイルを乳化させたややどっしりとしたソースです。

自家製マヨネーズににんにくのすりおろしを加えたり、潰したジャガイモをベースにしたりと色々な作り方がありますが、市販のマヨネーズににんにくを加えたパターンも悪くないもの。利点はいくつかあります。1つ目は市販品を使ったほうが劣化が少なく、日持ちするということ。マヨネーズは卵を使ったソースにも関わらず、長持ちします。その理由は卵の粒子をお酢や油の粒子がしっかり包み込んでいるから。手作りの場合は、市販のマヨネーズのように小さな粒子にすることはできないので、あまり日持ちしません。

市販品は手作りに比べて脂肪球が細かく、口当たりが軽いのが特徴。その脂肪球の大きさは1mmの1000分の1程度。泡立て器や家庭用のミキサーではどんなに頑張っても、1mmの1000分の3程度の細かさにしかなりません。問題は市販品にアミノ酸系の味付けがされていること、しかし、その点はアメリカのベストフーズマヨネーズや

マツダのマヨネーズといった製品を使うことで解決します。

どちらもスーパーなどで手に入るはず。

アイオリソース
マヨネーズ  70g
牛乳     20g
ガーリックオイル 10g

まずガーリックオイルの作り方から。ガーリックオイルはよくニンニクを油で揚げてつくりますが、その方法だと香りが揮発していくだけで意外とオイルにうつりません。そこでこんな調理法をとります。

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まず180度のオーブンで半割にしたニンニクをローストし、それをオリーブオイル100ccと一緒に鍋に入れ、60度まで温めた後、一晩放置するのです。これで香りが移ります。生のニンニクを使っているわけではないので、火を通したニンニクのいい香りのするオイルができる、というわけ。

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あとは材料を混ぜ合わせるだけです。マヨネーズにニンニクのすり下ろしを入れるだけでもいいのですが、ニンニクの辛味が出てしまうという弱点が。こちらのレシピですとニンニクの香りはありますが、味はマイルドです。ただ、アイオリソースと呼べるのかは微妙ですが、そこは、ま、ご勘弁ください。

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100円均一の店などで売られているディスペンサーに移して、冷蔵庫で保管します。牛乳が入っているのでマヨネーズほど日持ちはしませんが、一週間は大丈夫。サラダにかけてもいいですし、茹でた魚介類などにもあいます。

今日は『いかのセート風』という料理とあわせます。

いかのセート風
やりいか   4杯
小麦粉    適量
白ワインまたは日本酒 50cc
トマト缶   1缶
タマネギ   半分
にんにく   1片
オリーブオイル 大さじ1
塩、胡椒

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セートとは南仏の港町の名前。セート風というのは漁師の簡単料理といった雰囲気でしょうか。まずはトマトソース作りから。

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タマネギとにんにくのみじん切りを中弱火にかけた鍋に入れ、オリーブオイルも加えてよく炒めます。少し色づくくらいまで炒めるのがコツ。

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トマト缶を投入

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沸いてきたら蓋をして十分、弱火で加熱します。

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10分経ってトマトがやわらかくなったら、木べらで潰します。ここでソースに塩で味付け。塩味はそれなりにつけておきます。目安は小さじ1/4程度。酸っぱいなと思ったら砂糖をほんの少し加えてもいいでしょう。これでトマトソースの準備はOK。

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いかは適当な大きさに切っておきます。今回はヤリイカを使いましたが、するめいかなら二杯でたっぷり四人前くらい。内臓を入れてもコクのある仕上がりになりますが、入れすぎるとくどくなるので加える場合は一杯分くらいでいいか、と思います。このあたりはお好みで。

塩で下味をつけます。

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ここでポイントになるのが小麦粉を振っておくこと。本来のセート風のレシピではあまりやりませんが、粉を振っておくとトマトソースがよく絡みます。イカって表面がつるつるしているので、ソースが逃げるんですよね。

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オイルを敷いたフライパンを強火に熱し、香ばしく焼きます。できるだけ短時間の加熱にとどめるようにします。

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トマトソースに合流。

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フライパンに白ワイン、または日本酒を入れて、沸かしながら木べらでこそぎとります。

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イカの旨味がとけた液体を鍋に加えました。

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ここで二つのアプローチが考えられます。ここでソースと絡めて、一二分煮て出来上がり、とするか、水分を足して1時間煮込むか、です。セート風は本来、長時間煮込む料理ですが、今回は数分煮るだけにしました。

いかやたこのタンパク質はさっと火を入れるか、充分に加熱をして加水分解するか、のどちらかしか美味しくありません。中間はないのです。ちなみに加水分解には時間がかかりますが、トマトソースというphの低い液体で煮込むと分解が促進されるため効果的です。セート風が伝統料理になったのはこうした見地からイカの加熱にトマトソースが合理的だったからだと推測できます。

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数分煮込んだら、黒胡椒を加えてラフに盛り付けます。付け合わせにはサフランライスやバターライス、茹でたジャガイモでもいいでしょう。仕上げにアイオリソースをたらしたら出来上がり。ただマヨネーズを添えるのではなくソースに仕立てると、味の印象も随分変わりますね。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!