冬野菜のうまみが凝縮した、シンプル蒸し料理
今日はブロッコリーをまるごと使った料理をつくります。おいしさの理由は3つの異なる部位を混ぜること。部位ごとに違う持ち味が合わさることで、力強い味に仕上がります。
この調理法は野菜自身の持つ水分を利用したものです。蒸し焼きにすることで風味成分が凝縮するので、味が濃厚になります。肉や魚の付け合せにもなりますし、そのままでも十分成立する一皿です。ブロッコリー以外にも菜の花やほうれん草、カブなどの野菜に応用できます。
ブロッコリーのオイル蒸し
1.ブロッコリーは細かく切る。花蕾の部分は1cmを目安に刻んでいき、葉も同様に切る。茎は繊維を断ち切るようにできるだけ薄く切る。
2.蓋ができる鍋にニンニクとオリーブオイルを入れ、弱火にかける。ニンニクの周りに泡が出て、香りがしてきたら1のブロッコリーを入れる。軽く混ぜてから、松の実、刻んだ唐辛子、塩を入れ、蓋をしめる。
3.4分経ったら一度かき混ぜ、再び蓋をして3分間以上加熱する。仕上げにレモン汁を加えて味を調え、皿に盛り付ける。
野菜の水分を利用した蒸し焼き
ブロッコリーはキャベツの仲間で、可食部が大きく3つにわかれています。まずは濃い緑色をしたおなじみの「小房」。これは発達した花の組織が塊となったもので、緑のつぶつぶは花のつばみです。このつぼみの数は一個のブロッコリーに約4万個。それぞれに栄養や風味が詰まっています。
栄養を伝達するための茎の部分にもキャベツのような甘みがあります。ここはやや硬いので、薄く切るのがコツです。必要とあれば皮を剥くのも方法ですが、薄く切れば気になりません。最後に側面に少しだけついている濃い緑色をした葉っぱも捨てずに料理に使いましょう。葉は同じくキャベツの仲間であるケールのような濃い味がします。
ブロッコリーを野菜室に入れておくとすぐに黄色くなってしまうので「日持ちしない」と思われがちですが、それは誤解です。スーパーマーケットに行くとアメリカ産のブロッコリーが売られていますが、それは船便で15日間以上かけて運ばれてきていますが、店頭では鮮やかな緑色を保っています。おかしなことをしているわけではなく、氷に詰めて運んでいるので、鮮度が落ちないのです。最近ではようやく日本の生産地でも氷を詰めた発泡スチロールでブロッコリーを運ぶところが増えてきました。
ブロッコリーの理想的な保存温度は0℃。つまり、野菜室ではなく冷蔵庫の一番下、チルド室に保存するのが正解です。
写真のブロッコリーは実験のために24日間、冷蔵庫のチルド室に放り込んでおいたものですが、鮮やかな緑色を保ったままおいしく食べることができました。スーパーマーケットや産直に行くと常温で販売されていることもあるので、その場合はなるべく早めに乾燥を防ぐためのビニール袋に入れ、チルド室で保存してください。
今回はニンニクとオリーブオイル+アクセントとしての唐辛子でイタリア風に仕上げましたが、ごま油に変え、仕上げに醤油を加えるとまた違った風味が味わえます。特殊な食材として『松の実』を加えました。松の実は中国食材コーナーで販売されていますが、もしも入手できないという場合は他のナッツ(例えばごまやくるみ)に替えてもおもしろいでしょう。野菜だけの料理の場合はナッツ類を混ぜることで、味に厚みを加えることができます。
レシピの最後の加熱時間を3分としましたが、加熱時間をさらに伸ばすとブロッコリーが崩れていき、ソース状になります。それを茹でたパスタで絡めると絶品のブロッコリーパスタになりますし、水を400ccほど足せばブロッコリーのスープになります。
はじめから水を加えて煮るのとはなにが違うのでしょうか? はじめから水を加えて煮たほうがブロッコリーは早くやわらかくなり、フレッシュ感が残ります。一方、はじめに蒸し煮にして、風味を凝縮してから水分で希釈すると、加熱された風味が強調されます。この違いはフルーツのストレートジュースと濃縮還元ジュースを飲み比べることでも体験できるでしょう。
料理によっては成分を濃縮してから希釈することが正解とは限りません。刻み野菜のスープなどは炒めずに水で煮ることですっきりとした味に仕上がるので、それぞれの野菜の特性に応じて、使い分ける必要があるわけです。
撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!