見出し画像

お米……品種で選ぶか、産地で選ぶか

夏も過ぎ、季節はいよいよ秋。新米のシーズンなので、雑誌などでも色々と特集が組まれています。僕も原宿のお米屋、小池精米店の小池さんからお誘いいただきまして、雑誌「女性セブン」10月21日号でお米の食べ比べ企画に参加しております。

全国から取り寄せた28種類を食べ比べ、四人で採点するもので、ただひとすらお米を食べて、点数をつける……という楽しい仕事でした。

画像1

一位に輝いたお米など詳細については誌面を読んでいただくとして、今日はお米の話。

画像4

あいづの厳選米、AiZ'S-RiCE(アイヅライス)のPRのご相談をいただきました。アルファベットの正式名称を打ち込むのが大変なので以下、アイヅライスで統一しますが、もともと福島県、会津のコシヒカリは高品質で知られています。

ウェブページ記載の特徴は以下の通り。

○会津産コシヒカリは「食味ランキング」で2013年度から8年連続「特A」を獲得。
○その会津産コシヒカリ1等米の中から、食味値80点以上(玄米タンパク質含有率6.4%以下)のみを厳選。
○特別栽培米ガイドラインに基づいて栽培。
○会津清酒の酒粕を肥料として使用。
○安全・安心に配慮し、グリホサート系除草剤
及びネオニコチノイド系農薬を不使用。

さて、今回はPRの前にまずは座学です。というのも「食味ランキング」やら「食味値」やら「特別栽培米ガイドライン」やら並んでいる単語は、聞いたことはあるけれど詳しくは知らない、という人がほとんどではないでしょうか?(少なくとも僕はそうです)それは当然で、食味ランキングや食味値、特別栽培米などは生産者のための基準や数値であって、消費者向けではないからです。

お米は様々な種類が並び、選びにくい食材の代表格。まずは前提となるこれらの単語から復習していきましょう。

食味ランキングについて

「どこどこの産地が食味ランキングで特Aをとりました」「九州ではじめて特Aが……」という具合に聞いたことはあるけれど、よくわからないのが食味ランキング。

食味ランキングは昭和46年から日本穀物検定協会が毎年(時期はおおむね2月末~3月初)、その前年に獲れた国産米について公表するもので、厳密に炊いたお米を専門家を「外観・香り・味・粘り・硬さ・総合評価」の6項目で審査し、特A、A、A´、B、B´の5段階に評価しています。

実際には日本のお米が特AとAが占める割合が常に高いので、消費者にとってはあまり参考にならないのですが、産地の実力を測る指標として注目されています。そのなかで福島県会津は新潟と並んで安定して高い評価を得ている産地です。

会津産コシヒカリ1等米の中から、食味値80点以上(玄米タンパク質含有率6.4%以下)

次の部分もわかりにくいですが、1等米というのは品位等級検査によって評価される「等級」を表します。

お米の等級は公的な資格を持つ農産物検査員の目視によって形や色などで判断されます。ちなみに会津は一等米の比率が非常に高い産地でもあります。一等米の割合が高ければ当然おいしいお米という話になります。この品質向上は平成25年度からはじまった「会津米品質向上対策事業」の取組による影響もあるでしょう。実は一度、会津のお米は前述の食味ランキングで特AからAに一度、落ちたことがあり、この事業を立ち上げ、すぐに復活した、という経緯があるからです。

食味値というのはお米のおいしさを表す指標で、お米に含まれる「水分」「タンパク質」「アミロース」「脂肪酸化度」を測定し、点数化したもの。さきほどまで説明していた食味ランキングや等級は人が決めていましたが、こちらは機械で調べる客観的なものです。

ちなみに「米食味値80点以上」というのは流通量の少ないプレミアムクラスのお米。スポーツをやっている人はたくさんいるけれど、オリンピック代表に選ばれるのは少ない、みたいな話です。評価の高いコシヒカリのなかでとりわけおいしいお米だけを選抜したのがアイヅライス、というわけ。また、タンパク質含有率6.4%以下というのは文字通りタンパク質の量で、タンパク質量は少ないほど粘りが強くなります。あまり少なすぎても味が弱くなるので、このあたりは難しいところなのですが、この数字は肥料によって大きく影響を受けます。

さて、ここまで食味ランキング、等級、食味値などについて説明してきましたが、お米の味には品種ももちろん大きな差が出ます。

最近の新品種ブームもあって産地=品種(例えば山形のつや姫や北海道のゆめぴりか)という傾向も定着してきましたが、現在、全国で一番多く作付けされているお米の品種は「コシヒカリ」のおよそ34%で、減少傾向にはありますが、2位ひとめぼれの9.4%、3位のヒノヒカリの8.4%と大きく差をつけています。これは十年以上変わらない傾向です。ちなみにひとめぼれもヒノヒカリもコシヒカリの系列で、日本人はコシヒカリが好きなのです。

ところがコシヒカリと一言で言っても、もちろん産地や農家によって味が結構違います。

スクリーンショット 2021-10-12 15.36.03

これは農林水産省の資料(第3章 買ってもらえる米づくりに向けたポイント)からの引用ですが、米の味に大きく影響するタンパク質含有量は品種と同じくらい栽培方法が影響していることがわかります。おいしいお米は育て方一つなのです。

栽培方法を明示する公的な基準の一つが「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」です。特別栽培米ガイドラインに基づいて栽培されたお米を「特別栽培米」と呼びます。特別栽培米は生産する県や地域によって定められた慣行栽培と比べて、節減対象農薬の使用と化学肥料の窒素成分量を5割以下に抑えて栽培されたお米を指します。

ようは農薬と肥料を抑えたお米で「味とは関係ないやん」という人もいますが、肥料が変わってくるので、やはり影響はありますし、特別栽培はやはり難しい部分があるので、農家の腕を図る指標にはなります。

ここまでをまとめると

全国で作られているコシヒカリですが、コシヒカリと言っても産地や農家によって大きく味が異なる、ということです。つまり、単純に品種で選ぶことはできない、ということ。あと、僕が興味を持ったのは『会津清酒の酒粕を肥料として使用』という部分なのですが、このあたりについては長くなってきたので、次回に。

画像4

(あいにく情勢から現地視察は叶いませんでしたが写真は提供していただきました)

アイヅライス、例年通りにいけば10月中頃には新米が出てくるらしいので、次週は『歴史と米作り』『お米の炊き方の復習』についてnoteにまとめます。では、また来週。

〈追記〉

記事を公開したところ「島根の米農家」さんからリツイートをいただきました。

この農家直売がいいか、JAのお米がいいか、というのも前提として共有しておきたいところ。僕がお米について色々教えてもらっている小池さんのnoteが参考になると思います。

「美味しい」か「美味しくない」かは、JAであれば「その産地・地域の平均の味はどうなのか」、個人であれば「きちんと腕によりをかけて栽培したかどうか」にかかっているのです。お米の味は「JA」か「個人」かという単純な切り口で決まることではないことを覚えておいてください。

とありますが〈島根の米農家〉さんがおっしゃるとおり「直売しているから必ずしもおいしい」わけではなく、逆に直売が悪いわけでもないのです。お米の話、意外と論点が広いので、何回かに分けて書いていきますね。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!