見出し画像

ポークリエットを添えた長芋のステーキの作り方

最近、スーパーで使い切りの長芋が売っています。

画像1

長芋は切り口が酸化すると褐変してしまうのですが、小分けパックは脱酸素剤が入っているのでかなり長持ちするんですね。生で食べられる唯一のイモ類なのでおろしてとろろにするのが普通ですが、今日はステーキにします。

画像2

皮を剥いたほうが香ばしい面が増えておいしいのですが、生の長芋をさわると手が痒くなったりしてストレスになるので、皮付きのまま調理にします。ひげ根はガスコンロの直火で炙って、焼き切ってしまいましょう。その後、表面を水で洗ってから、、、

画像3

半分に切ります。時間がない場合は縦に4等分にして、厚さ1cm〜1.5cmくらいのスライスにしたほうが楽です。

画像4

サラダ油大さじ1をしいたフライパンを中弱火にかけ、断面を下にした長芋を焼いていきます。サラダ油と書いたのですが、ラードがあれば使うとコクが出ます。このまま10分焼きます。最初のうちは長芋から水分が出て、フライパンにくっつくことがあるので、途中で長芋を動かしてください。表面が焼けて水分が飛べばあとは大丈夫です。

画像5

焦げ目がついたら皮目を焼いていきます。裏返すと長芋から出てくる水分が減り、フライパンの温度が上がっていくので、火を弱めておきます。こちらの面を10分。

画像6

皮ごと焼いている場合はフライパンのへりを使って皮目も焼いていきます。今回は5分焼きました。

画像7

反対側も5分。

画像8

最後にもう一度5分間皮目から焼きます。最初に言ったように薄めのスライスであればもっと早く火が通りますが、タイマーをセットして、火の近くで文庫本でも読みながらのんびり焼いていきます。厚切りで早く火を通したい、という場合は油で揚げればいいのですが、仕上がりが若干オイリーになります。それだったら蒸し器で蒸してから焼くのがいいかもしれません。

火が完全に通ると長芋はホクホクになります(芋なので)。とはいえ中が生っぽくてもシャリシャリした食感が残り、それはそれでいいものです。

画像9

お皿に盛り付けて、フルール・ド・セル(粒の大きい塩)を適量振りかければ完成です。ビールによく合います。しっかりと火を通すとちゃんとホクホクしてやっぱり芋なんだな、ということに気づきます。デンプンは加熱することでおいしくなるものですし、糖も増えるので甘くなります。ジャガイモなんかも生で食べるレシピがありますが、やっぱり火を通したほうがおいしいですし、長芋も火を通すことで生とは違った持ち味が出てきます。(とろろはとろろで最高においしいですけど)

画像10

焼いた長芋だけでも素朴でおいしいのですが、動物性の味を組み合わせると料理としての完成度は上がります。おすすめはポークリエットを組み合わせること。自家製してもいいですし、市販品も売っています。

画像11

ポークリエットをスプーンですくって載せたら、黒胡椒をたっぷりと挽きます。これでシャンパンや赤ワインにあう料理になりました。リエットとじゃがいものサラダの組み合わせが定番なのですが、長芋のステーキとの相性もなかなか。

ところでこの長芋。生で食べられるめずらしい芋です。その理由としてよく

山芋や長芋は、生で食べられる世界でも珍しい芋。 消化酵素であるジアスターゼを含んでいて、でんぷんの一部が分解されるため、生で食べても胃にもたれないのです。(カゴメ株式会社 VEGE DAYから引用

と説明されます。食品学の本にもたいていこのように書いてありますが、それを否定する意見も数多くあります。たとえジアスターゼを豊富に含んでいても胃酸で失活してしまうので、そんな短期間でデンプンが分解できるのか、というものです。『ヤマノイモを生で食することができる理由は生でんぷんの消化性によるものではない』(団野 大阪青山大学紀要2009-2巻)というそのものずばりの論文ではヤマノイモを37℃の環境に置いても還元糖が増えないということを突き止め(ジアスターゼの影響があればデンプンが糖に分解される)生で食べられる理由を『口当たり』に求めています。ヤマノイモに含まれる消化酵素は大根と同程度という報告もありますが、生のデンプンはミセル構造がカチカチなので分解されないのは当然ですよね。(火を通せば別でしょうけど)

なかなか面白い論文ですが、結論としてははっきりしません。一体、ヤマノイモを生で食せる理由はなんなのか。イモ類の消化性に関する研究では先行する『いも類のデンプンの消化性に及ぼすその細胞壁の影響』という論文で、デンプン粒を取り囲む細胞壁が消化性と関係しているという知見が報告されています。他の芋と比べるとヤマノイモはセルロースの割合が低く、構造の脆いので、これがヤマノイモが生食できる理由と関係しているのでは、というわけです。説得力がある示唆だと感じますが、消化というのは複合的なものなのではっきりとした理由を一つ、という具合に示すことは難しいのでしょう。生で食べられる、というだけでもなかなか奥深いのだな、と気付かされます。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!