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cakes連載〈「 おいしい」をつくる料理の新常識〉第10回余談『乳化について』

cakes連載の更新。今日のテーマは「トマトの冷製パスタ」

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さて、コロイド懸濁液という言葉を本文で使いましたが、もう少し詳しく分類すると、料理における液体は溶液とそれ以外にわかれます。

溶液は塩や砂糖を溶かした水、あるいはアルコールなどです。例えばアルコール分子やNa+、Cl−は水分子とかっちり繋がって、分散している状態。それ以外はコロイドかコロイド懸濁液、あるいはエマルジョンです。

コロイド溶液と溶液の違いは分子の大きさで、コロイド溶液の分子は「直径が10-5~10-7 cm程度」というのはよく化学の授業で試験問題の穴埋めに使われる部分でよね。コロイド溶液のなかでもエマルジョンは水と油という相反する物質に両親媒性物質(油とも水とも手を繋ぐ物質)を混ぜることで、分散、安定した液体です。

で、乳化の話を補足すると、料理書に時々「ルーを使って乳化させる」というような文章が出てきます。小麦粉には多少のタンパク質が含まれているので完全に間違いではないのですが、乳化とはいえない気がします。

市販のドレッシングには分離を防ぐためにキサンタンガムやグァーガム、デンプン、寒天などの増粘剤が含まれています。このドレッシングが分離しないのは増粘剤が水分側の粘性を高めて、油滴が層となって浮かび上がるのを防いでいるわけで、乳化させているわけではありません。今回のトマトソースに使ったハチミツも水分側の液体に濃度をつけてくれるので、小さくなった油滴が浮かび上がるのを防ぐ効果を果たしています。ま、ここらへん、難しいところで、「油滴を小さく……」みたいに書くよりも「乳化」と書いたほうが楽でわかりやすいので、そう書くケースが多いんだと思います。

乳化は素材の存在感を弱めます。酢を舐めると酸っぱくて食べられませんが、マヨネーズにすると食べられる。同じように油は飲めませんが、マヨネーズにするとおいしい。イタリア人はパスタを作るとき、乳化にたいしてこだわっていない気がします。最後にオリーブオイルを垂らしてあえて分離した状態をつくることで、オイルの香りを活かしたり、ミートソースなども分離した状態にする。そうすることで不均一な味になるので、量を食べても食べ飽きないんですね。どの程度、乳化させ、あるいは分離した状態にするか、など考える必要があると思います。

いやー、今回は本当に余談ですね。ちなみにフェデリーニに使ったトマトソースは熱いパスタにかけるとケッカ風というパスタになって、それはそれでおいしいです。

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