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『おいしいものには理由がある』未発表原稿〈雪の味〉

 パソコンのファイルを整理していたところ、未発表の原稿が出てきました。『おいしいものには理由がある』(角川書店)という本に掲載しきれなかった原稿用紙20枚ほどの原稿です。

 なんで書いたのか、という経緯を説明します。

 『おいしいものには理由がある』という本は僕が取材した日本各地の食材生産者についてのノンフィクションです。それまで小説は何冊か書いていたのですが、ノンフィクションを書いたのははじめてだったので、非常に手こずりました。というのも文章の組み立て方がまるで逆だから。

(たいした作家ではないので)小説についてはあまり語りたくないのですが、小説の場合はテーマがあり、そのテーマを語るためのモチーフがあります。つまり

 テーマ→モチーフ→ストーリー→文体

 という風にテーマ(=作家が伝えたいなにか)があって、ストーリーとモチーフはなかば自動的に決定していきます。(ちなみに伝えたいなにか、というのは言いたいことではありません。言いたいことと伝えたいことって微妙に違いますよね?)

 しかし、ノンフィクションの場合はインタビューが元になるので、先にモチーフが決まってしまうのです。ストーリーも取材先の話から反れるわけにはいかない。で、テーマは最後に決まるんですね。小説とはまったく構成の仕方が逆なんです。それがノンフィクションを書いてみた発見でした。

 人の話というのは茫洋としたものです。プロのインタビュアーは夜空に広がる星から、一つの線を引いて星座を描きます。まったくの素人インタビュアーである僕にはそんなことできるはずもないので、僕はとりあえず元原稿を一つ一つ、物語化することにしました。

 この未発表原稿は完成稿になる前段階にそのテーマ検討用の草稿として書いたものです。こうして書いていった原稿を並べて読んでみて、なにがテーマとなりうるのか検討したわけです。この原稿を本に収録するための完成稿にしなかったのは、ページ数とテーマの都合です。(風土をテーマにすれば入ったかもしれません)

また、内容はすべて2015年の取材時のものとなっています。元記事はこちら→『アメリカ人も絶賛した日本の辛味調味料「かんずり」はタバスコを超えるか』(ダイヤモンドオンライン 2015.2.4)

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