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お米の炊き方の復習

2017年の食のトレンドは一汁一菜だったのではないでしょうか。たしかに米が炊ければとりあえず食事としての体裁は整います。今日はお米の炊き方の復習。

ご飯 
 米 二合(300g)
 水 360cc

まずはお米を量ります。

炊きあがりを揃えるためにはまず正確な計量です。普通、米専用の計量カップを使うと思いますが、丁寧にするなら計りを使います。試しに一カップの米を計ってみ たところ、151gでした。誤差1gでも5合炊くと5gの誤差になります。

軽くすくってしまうと、ほらこの通り、143gです。この場合の誤差は7g。五合炊く となると35gもの誤差になってしまいます。

米を研ぎます。昔はよく研ぐ必要がありましたが、精米技術が発達した現在ではそこまでする必要はありません。ですが研ぐ工程はもちろん重要です。コツはボウルに水を溜めて、米を洗うこと。

できたら浄水器を通した水を使います。お米の材料は米と水。言ってみれば調味料は水だけです。水は日本料理の世界ではとても重要で味を大きく左右します。

米を研ぐときには目の細かいザルを使います。ザルは米がザルにぶつかって割れるのを防ぐことができるので、プラスチック製を使うと安全です。米粒が割れるのを防ぐために指先で混ぜるようにして表面を洗います。米粒同士がぶつかれば自然に研げるので、手のひらでごしごしやるのは厳禁です。また、米を研ぐときはこの最初の一研ぎが非常に重要。米は最初の水を一番、吸い込んでしまうので手早く行います。

都合、三回、水を変えて研ぎます。

研ぎ終えた米はこうしてザルにあげて吸水させるのが昔ながらの方法。乾燥させないために、このように濡れ布巾などをかぶせてザルに上げ、30分ほど置き、米粒に浸水させします。しかし、調理科学の世界では推奨されなくなりました。米粒が乾燥すると後の工程で割れやすくなるからです。実際、ザルにあけて洗い米にせずに すぐに浸水させたほうが食味がいい、というデータがあります。
ならばなぜ昔は洗い米にしたのでしょうか? 推測になってしまいますが昔は産地の違う米が混ざった状態で販売されたこともあったそう。(今ではありませんが)しかし、乾燥度合いの異なる米が混ざっていても、洗い米にすれば米の水分量は一定にできるため、洗い米にする必要があったのではないでしょうか。
また、料亭などではかつて炊く前に米粒を黒い皿に広げ、割れた米などを取りのぞく作業も行われていたと聞きます。天皇の料理番である宮内庁の大膳課に長く務められた渡辺誠氏の著書「昭和天皇 日々の食」でも米粒を選別するエピソードが紹介されていますが、現在これらの作業が不必要なのは米の乾燥工程が管理され、さらに低温貯蔵が行き渡ったためでしょう。
洗い米は若干、味が落ちますが、メリットもあります。それは準備しておける、ということ。洗い米をビニール袋に入れ、冷蔵庫などに保存しておけば炊きたいときにすぐに炊飯作業に移ることができるので便利です。

今日はそのまま浸水作業にうつります。水量は米の1.2倍、150gの米に対して180ccが基本です。きちんと低温貯蔵されている米であれば新米と古米で水分含有量に差はありませんが例えば封を開けて日にちが経った米などはもう少し水量が必要になると思います。水分量で炊きあがりは大きく左右するので、好みの炊きあがりを見つけるためには何度も調整する必要があります。

浸水の時間は『夏場なら30分、冬場なら1時間』とよく説明されますが、なぜ夏と冬で異なるのでしょうか?  それは水温の違いによるもの。高い水温のほうが米はよく水を吸い、低い水温のほうが時間がかかります。
この浸水は重要な工程で、米の内部にまで水分を浸透させることで中心まで効率よく火を通すことができ、ふっくら炊けます。つまり、逆に言えばリゾットやパエリアなどアルデンテ状態にしたければ浸水の必要はない、ということです。(もちろん通常の炊飯とは水量も異なりますが)

大阪、堺にある名物定食屋さんは「水が悪いからおいしいご飯が炊けない」と夏場は店を閉めるそうです。夏場でも冬場でも井戸水の水質自体が変化するということは考えにくいですので、米を美味しく炊くもう一つのポイントは『冬場のように低い水温の水を使うこと』だとわかります。低い水温から炊飯をスタートすると加熱途中に糖が多く生成され、ご飯の甘みが増すのです。
低すぎても米は水を吸いませんので、一般的には水温は15度が理想的されています。温度が高い場合は氷などを入れて調整するか、冷蔵庫で浸水させます。

米が充分に浸水した状態になったところで、鍋を強火にかけます。鍋はどんな鍋を使うのがいいのでしょうか。金属性か、土鍋か、それが問題です。

さきほど低い水温からスタートすると加熱途中に多く糖が生成されると書きましたが、だからといって「デンプン分解酵素をより働かせるよう」と弱火で加熱し、沸騰するまで時間をかけると、米粒からデンプンが溶け出し──べちゃっとした炊きあがりになってしまいます。
それを避けるためにはスタートは強火でなるべく早く沸騰させます。表面のデンプンを早く糊化させることで米粒の表面に張りが出た逆アルデンテの状態に持っていくのです。つまり、米粒一つ一つを張りのある状態に持っていくためには熱効率の悪い土鍋よりも金属の鍋が向いている、ということです。きちんと蓋ができる金属の鍋がいいでしょう。写真はル・クルーゼ(鋳鉄)ですが、本当は鉄よりもアルミ、アルミよりも銅鍋が向いているでしょう。
そして、最後のポイントは『沸騰したら蓋をとり、さっと米粒をほぐすこと』です。赤子泣いても蓋とるな、という昔ながらの方法とは異なるアプローチですが、米をほぐすことで、水の対流をよくすることができます。
素早くほぐしたら蓋をしめ、今度は弱火に落とし10分間加熱します。米の澱粉に火が通るには10分から12分かかると言われています。10分経ったら火を止め、同じ時間だけ蒸らします。この蒸らす工程で米に完全に火が入ります。
また、米を炊く上で水分の対流は重要な点です。例えばトマトジュースと水を炊飯器に入れて、炊飯スイッチを押しても上手く炊けません。濃度のある液体は対流しずらいので、加熱にムラが生じ、均等に火が入らないからです。そのためスペイン料理のパエリエでは対流がなくても均一に加熱できるように専用の平たい鍋を使います。

さて、蒸らし終わったら米をほぐします。まず、周りからしゃもじをいれ、鍋から米を離します。

次に十字にしゃもじをいれて、底と上をひっくり返します。

切るように混ぜていきます。ほぐすことで蒸気が溜まらず、米粒が固まりません。十時に切って四つにわけて混ぜることで、最小限の手数で米をほぐすことができます。

鍋に入れておくと鍋の蓋や側面についた蒸気が水滴となって米の表面に付着し、味が落ちるので、蒸らしが終わったらおひつにうつす必要があります。米粒の余分な水分を木が吸い込み、よりおいしい状態になります。少し熱が落ち着いた頃が食べ頃です。


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