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缶詰のデミグラスソースでビーフシチュー

今日のnoteはコメント欄に寄せられた相談&リクエストから。

料理が趣味の夫が「ビーフシチューの酸味が取れない」と悩んでいるのですが、何か良い方法はないでしょうか。トマトとワインの酸味だと思うのですが、重曹を入れると味が落ちるようで本当は使いたくないそうです。

洋食屋さんに出てくるようなこってりと甘いビーフシチューを食べたい、とのこと。今日は市販のデミグラスソース缶詰を使って、ビーフシチューを作ってみます。時間のある週末に挑戦したいレシピです。

仰るとおり、酸味のもとは主にトマトやワインです。酸味は重曹を入れることで緩和されますが、重曹には特有の苦味があり、味が落ちるのもたしかなので避けたいところ。そもそも洋食屋さんのビーフシチューの作り方をざっくりと述べると

1日目 牛すじや鶏ガラなどをオーブンで焼く。ミルポワ(玉ねぎ、にんじん、セロリ、にんにくなど)を炒め、赤ワインを注ぎ、しっかりと煮詰める。寸胴鍋に移し、水を注ぎ、強火にかけ、沸いてきたらアクをとりのぞき、弱火に落とす。ローリエやドライタイム、ドライセージなどを入れ、ナツメグをすりおろす。煮込んでいくうちに脂が浮いていくるので丁寧にとりのぞく。(これはとっておく)充分に煮出してから濾す。

2日目 デミグラスソース用のブイヨンに仕込んだ残りのデミグラスソースがあれば足し、新しく焼いた牛すじや鶏ガラなどを加え、さらに煮込む。これがデミグラスソース用のブイヨン。

3日目 デミグラスソース用のブイヨンに焼いた端肉や牛バラ肉、飴色に炒めた玉ねぎを入れ、煮込む。途中で脂が浮いてくるので、とりのぞく。別の鍋に1のときに取り除いた脂、さきほどとりのぞいた脂、ヘッドと小麦粉を炒めてルーをつくり、トマトペーストを加えて炒める。それを鍋に溶かし込み、さらに煮込む。途中で牛バラ肉は取り出し(これはビーフシチューの具材になる)さらに煮込み、濾す。

4日目 濾したものはさらに煮詰めて水分を蒸発させる(水分が多いほど痛みやすくなり味が落ちる)この時、端肉や仕込み用の牛バラ肉、牛タンなどがあれば一緒に煮込むとよい。浮いてきた脂をとりのぞき、濾す。

お店によって作り方や考え方は違うと思いますが、あくまで一例です。それでもエッセンスは読み取れると思います。

まず、デミグラスソースの色は重なった「焦げ色」だということ。メイラード反応は欠かせない要素です。

次にワインの使いすぎには注意が必要でしょう。例にあげたソースにはワインは最初の段階しか加えてません。ワインの酸味はミルポワの甘みとのバランスをとるために必要なだけで、この段階で酸味をつけてしまうといろんな料理に応用が利かなくなるからです。例えばハヤシライスなどは酸味を利かせたほうがおいしいのですが、その場合は具材となる肉を炒めた段階でワインを少量を加えて酸味を加えます。もう一つ、これはワインを使ったソース全般に言えることですが、ワインは「しっかりと煮詰めてから」次の液体を加えるようにしましょう。ソースに使うワインは飲む場合とは違い、かなり濃縮する必要があります。液体を加えてからワインを煮詰めても、成分が薄まっているので、なかなか煮詰まらないからです。

最後に甘みのベースとなるのは炒め玉ねぎやミルポワです。メイラード反応はカラメル化反応とは違いアミノ酸+糖が関係してきます。肉単体での焼色だけではなく、たっぷりの野菜を加えて煮込むことで、鍋肌でメイラード反応が進みます。焦げないように時々、鍋肌のソースをゴムベラなどで拭い落としながら煮込み続けましょう。そういう意味ではIHよりもガス火のほうがビーフシチューづくりには向いているかもしれません。

たまねぎ 2個
サラダ油 大さじ1
小麦粉 大さじ1
赤玉スイートワイン 300cc
トマトペースト 大さじ1
デミグラスソース 1缶(ハインツ)
牛すねにく 300g
塩    3g
水    500cc
固形ブイヨン 1個

材料を絞り込んで、ビーフシチューを作ってみると、味の仕組みが理解できます。

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牛肉は煮込み用の部位を使います。和牛のスネ肉などがおすすめです。ある程度、筋繊維のあいだに脂肪がある、繊維が細かい(牛タンみたいな)ほうがシチューはおいしいと思います。牛肉は重量の1%の塩を振って、30分以上寝かせておきます。

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まず牛肉をこんがりと焼きます。この焼き色もソースの色になります。

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水500ccと味を補うための固形ブイヨンを圧力鍋に入れ、45分間〜1時間加熱します。

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さて、牛肉を煮込むかたわら、炒め玉ねぎをつくります。少量の塩(分量外)を加え、中火くらいの火加減でじっくりと炒めていきます。

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この玉葱の色がソースの色になるので、とにかくじっくりと。焦げ色が強ければ強いほどおいしくなるので、刷毛などで側面の焦げを落としながら炒めていきます。

玉ねぎの炒め方というか色の目安はこの動画にまとめてあります。30分間カメラを回しっぱなしにしてつくった動画です。参考にしてください。さて、今回の秘密は赤玉スイートワインです。

昔は赤玉ポートワインという名前で売られていましたが、スーパーなんかで安く売られている甘口ワインです。

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ワインはしっかりと煮詰めてから使います。予め別に加熱して煮詰めておくのが安全。煮詰めることでワインの個性が強く出てくるので、酸味の強いワインを使うとやはり酸味の強い仕上がりになりますが、赤玉スイートワインを使うとレトロな仕上がりになります。

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さて、ワインを煮詰めているあいだに小麦粉もしっかりと炒めておきます。油っ気が足りなければ少し足してください。小麦粉を予めフライパンで炒っておいたほうが失敗が少ないと思います。

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煮詰めたワインを投入し、ルーを伸ばします。

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旨味出しにトマトペーストを加えます。

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デミグラスソース缶を加えます。

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牛のブイヨンを加えて、とろみが適正になるまで煮詰めます。デミグラスソースの缶詰にとろみの成分が入っているので、きちんと煮込めば問題はないはずです。

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ソースが煮詰まったら裏ごし器で濾します。面倒ならこの工程は省略できますが、やはりソースは濾せば濾すほど艶もでますし、味もよくなります。

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ここでやわらかく煮えた牛肉を合流させ、なじませるように煮込みます。塩、胡椒で味を整えれば完成です。

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別に塩ゆでしてやわらかく茹でたじゃがいもやニンジン、ブロッコリーを付け合わせにします。ちなみにビーフシチューは作ってから時間が経つと酸っぱくなるのでできたてを食べましょう。酸っぱくなる理由はわからないのですが、デミグラスソースは非常に傷みやすいので(ソースを作るときもしっかりと煮詰めましたね)酸化なども関係しているのかもしれません。この点についてはもうちょっと調べてみます。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!