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ワインのお勉強(4種類の液体を使った実験)とハイパーデキャンティング

ソムリエではありませんので詳しい産地がどうこうと書ける立場ではありませんが、今回はワインのお勉強。ノンアルコールの飲み物はいくつか紹介してきましたが、それを考えるためにもまずこの飲み物がなぜ食中酒として最適とされてきたのか、を理解する必要があります。

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ワインには赤ワイン、白ワイン、黄ワインや貴腐ワインなど様々な種類がありますが、最近はそこにBioなどの栽培法の要素や酸化防止剤を使用しているか否か、といった要素が加わり、さらに複雑になっています。

いずれにせよ、ワインが食中酒として最適なのは

酸度
甘み
アルコール
タンニンなどのポリフェノール類

を含むからです。この4つの要素を理解することがはじめの一歩。肉料理には赤ワイン、魚料理には白ワインという分類が意味をなさないのはタンニンの少ない赤ワインもありますし、逆にタンニンの多い白ワインもあるから。

酸味は舌をリフレッシュしますし、甘みも重要な要素です。料理に甘みが含まれる場合、ワインにも甘みがないと負けてしまいます。また、甘みは脂肪分ともあいますから(砂糖が入ったホイップクリームがおいしいように)脂肪分が多い料理にも甘みは欲しいところ。例えばコカ・コーラには大量の糖分とのバランスをとるために様々な酸味が大量に加えられています。その強い酸味と甘味によってピザやポテトフライ、ハンバーガーといった脂肪分の多い料理との相性がいいのです。また炭酸にも口を洗う作用があります。

ただし、炭酸や水分では口を完全に洗うことはできません。香りは大抵脂溶性なので、水で口を流しても残るのです。そこで登場するのがアルコールです。アルコールは水にも油脂にも溶けるので、よりすっきりとさせてくれます。あるいは「にんにく料理を食べた後はりんごを食べるといい」という話を聞いたことはありませんか? りんごを食べると効果的なのはにんにくを食べた後に口のなかに残るチオール類という香り成分をポリフェノールオキシターゼの作用によって、無臭分子に変えるからです。

マウスウォッシュにはどういう効果があるのでしょうか? マウスウォッシュの主成分は強い酸化剤(クロラミンなど)で、やはりチオール類を抑えます。同じように緑茶に含まれる茶カテキン=タンニンも匂いを抑えるので、食中ドリンクあるいは食後のドリンクに向いています。

タンニンにはタンパク質と結合する性質があるからです。ですからこってりとした肉料理などを食べるときにはタンニンやアントシアニンをたっぷりと含んだ赤ワインなのです。ちなみにビールの場合はホップがタンニンの要素に当てはまります。苦味の強いビールが肉料理にあい、軽い口当たりのビールが魚のフライにあうのはそんな理由です。

それでは実習として料理とワインの相性を勉強しましょう。食事の前に4種類の飲み物を準備します。まずはタンニンを知るための紅茶。

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小さじ1の紅茶を100ccで抽出して、かなり濃い紅茶をつくります。

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続いて準備するのはウォッカです。香りのない純粋なアルコールに近いウォッカを水で3倍に希釈します。

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そして、大さじ1のレモン汁と100ccの水をあわせたものと、100ccの水に小さじ1の砂糖を溶かした砂糖水を準備しましょう。

さて、この四種類の飲み物を様々な食物と一緒に味わってみましょう。紅茶のタンニンが肉料理にどのような影響をあたえるか、アルコールによって口のなかがどれだけリフレッシュされるか、といったことが理解できます。

脂っこいものを食べたあとに飲むべきは酸味のレモン汁でしょうか、それともウォッカでしょうか。あるいは砂糖水を含んでから料理を食べると味は変わるのでしょうか? この実験では香りを無視することで、ワインと料理の相性を除外することができます。風味の相性については個人の感覚によるところが大きいですが、foodpairling仮説なども参考にできるでしょう。今回はあくまで味についての実験と理解してください。

大事なのはこの4つの要素がどのように食品に影響を及ぼしているか、ということです。働きを理解したうえではじめてノンアルコールペアリングが提案できるでしょう。

ところで赤ワインについて面白い実験があります。ネイサンミアボルト率いるモダニストキュイジーヌチームは赤ワインの新しいデキャンティング(空気に触れさせる方法)として『ハイパーデキャンティング』を提案しています。

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ワインを開けたら『ちょっと渋いな……』ということはありませんか。そんな場合、ソムリエは仰々しくデカンターに移しかえたりします。急いでいる場合は少し泡立てようにして作業をすることもあるそうですが、ミアボルトのやり方は実にシンプル。

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ワインをミキサーにかけるのです。

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30秒〜1分かけるとこんな感じ。細かな泡を含んでいますがすぐに消えます。

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これが同じワイン? と驚くほどまろやかになります。香りがなくなるのでは、と思う方もいますが、その心配も特にありません。若いワインに特にお勧め、とのことですが「1982年のマルゴーでも例外ではない」とミアボルトさんは言っています。二重盲検を採用したブラインドテイスティングの結果でも90%の人がミキサーにかけたワインのほうがおいしい、と答えたそうです。ソムリエやワイン愛好家の方には眉をしかめられそうな方法ですが、一度お試しください。本当にびっくりするほど味が変わります。

ちなみにワインの香りをさらに楽しみたい、という方は部屋の湿度の方が重要になってきます。湿度を下げ気味にするとワインの香りは強く感じるはずです。逆にいうと高温多湿の日本ではワインの香りを楽しむのはなかなか難しい、ということかもしれませんが、経験的にも海外旅行中のほうがワインが美味しかった、という印象を持った方も多いのではないでしょうか。それはひょっとすると湿度が関係していたのかもしれません。とりあえず今日はこんなところで。

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