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メンブリージョ(カリンの固形ジャム)の作り方

メンブリージョってなんじゃ、って感じだと思うのですが、マリメロを使ったジャムです。今度はマリメロってなんだって話なのですが、こちらは日本でいうところのカリンの親戚。ジャムといっても固形状で、チーズに添えて食べたりします。

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市販品にも様々なやわらかさのものがあり、色々と好みがあるみたいです。買うと高いのですが、カリンは今の時期、直売所で安く売られているので、自作するのが安上がり。実験感覚で挑戦してみてください。

まずこのカリンという果物。生では食べられません(硬くて渋いので)。カリンは用途によっては追熟させます。数週間ほどおくと細胞内の酵素によって自己分解が進み、果実はやわらかく茶色になります。つまり、日持ちするので買っておいて時間のあるときにジャムにすればOKということです。この連載ではおなじみのマギーキッチンサイエンスによると、長い期間熟成させたカリンからはスパイス、焼きリンゴ、ワイン、穏やかな腐敗臭が混じった匂いになり、D・H・ロレンスはこれを「得も言われぬ別れの香り」と賞したそうです。

別れの香り、とは痺れる表現ですが、ここまで熟成させてしまうとカリンはリンゴ酸を使い切ってしまい、酸味が弱くなるので、表面がペタペタして、いい香りがしてきたらもうジャムにしてしまいしょう。

カリンは加熱することで食べられるようになります。再びマギーキッチンサイエンスを引いてみましょう。

リンゴやナシの原種はこんな感じだったのではという味である。(中略)加熱調理することでおいしく食べられる。ペクチンの多い細胞壁が熱でやわらかくなり、渋みを持つタンニンが残渣に結合して味もまろやかになる
16世紀の錬金術師であり菓子職人でもあるノストラダムスは、マルメロ・プリザーブの作り方をいくつか紹介しており、「最初に皮をむいてしまう人はなにもわからずにやっているのであり、皮が匂いをよくするのである」と書いている。

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下処理の基本はまずまるごと茹でることです。鍋にたっぷりの水と一緒に入れ、強火にかけ、沸騰したら弱火に落として、蓋をした状態で煮込みます。日本では〈ノストラダムスの大予言〉で有名になった錬金術師、ノストラダムスの言う通り、カリンはリンゴと同様に皮に風味があります。そこでまず、まるごと茹でて皮の風味を身に溶かしながら加熱します。茹でることで切りやすくなるのも大きなメリット。

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1時間〜1時間半でやわらかくなるので水にとって冷やします。

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それから皮を除去します。茹でてあるので簡単ですが、生の状態だと硬くて大変です。

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半分にわると種が入っています。この種はスプーンで除去しましょう。

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小さく切ります。薄切りにした方がこの後の工程の時間を短縮できます。

ここで重量をはかります。550〜580gのカリンは種をとり、皮を剥くと450g〜480gくらいになります。そこに0.8をかけた量が砂糖の分量です。この場合は460gだったので、368g加えました。

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そこに水が100ccとレモン果汁(ポッカレモン)20ccが入ります。

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中火にかけて加熱。カリンから水がでてくるのでこの段階では焦げる心配はありません。沸騰したら弱火に落として1時間。

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淡い黄色だったカリンが濃いルビー色に変わりました。実験感覚で、と冒頭に書いたのはこの現象を見るためです。マギーキッチンサイエンスによるとこれは果実中に蓄えれていた無色のフェノール化合物の一部が加熱されることで、アントシアニン色素に変化するから。ナシにも同じ化合物が含まれているのですが、少量なのでここまで濃い色にはなりません。

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カリンがすっかりやわらかくなったらハンドミキサーで粉砕します。丁寧にするなら粗熱をとり、ミキサーにかけてからザルで濾してください。とはいえちゃんと種をとっておけばその作業の必要性はないのですが、種が混ざるとちょっと嫌ですね。

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これぐらいの濃度になればOK。もっと煮詰めずにやわらかい状態に仕上げるパターンもあるので、このあたりは適宜調整できます。

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バットに流して、表面をならします。粗熱をとってから、冷蔵庫で冷やしましょう。

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するとこんな風に固まります。

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四角くカット。

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この状態でチーズに添えたり、そのまま食べたりします。

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マリメロのジャムはマーマレードの原形になりました。今ではマーマレードはオレンジの皮を使ったジャムを指しますが、昔はカリンだったわけですね。

あの黄色い果肉の果物がここまで鮮やかな色になる不思議。半年間は冷蔵庫で軽く持つので、一個買えば相当長く楽しめます。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!